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「落ち着け、大丈夫だ」


「も、申し訳ございません……」


「謝らなくていい」


 少し深呼吸したラヴィニアはサーシャの目を見つめ返し今度はしっかりとした口調で話し出した。


「2000年前の噴火は文献に残っております。その文献には、地震と気温の上昇、ガスについては微かな情報としてしか書かれていませんでした。ですので、私以外地震と気温を同時に調べておりませんので噴火にたどり着いている人は居ないかと思います」


「そうか、調べたらわかりそうな内容だがそもそも文献にはそれと断定するような書かれ方はされてないってことか」


「はい、文献には火山の噴火から街は全壊、住民のおよそ八割は亡くなったと書かれておりました。復興と共にまた噴火が起きた時の為に生き残った者のうち国を統治する者を決めて精霊様の加護を受けたと」


「……加護か」


「そのうちのひとつがアーティファクトです」


「あぁ、あれか」


 アーティファクト、それは精霊の遺産と呼ばれる強い能力を持った機械。

 大小様々でその形も千差万別である。

 精霊や妖精が人と共存している時に精霊によってもたらされた物と伝わっている。


 この国にある1番大きなアーティファクトが先程の文献に乗っている物で結界を生成するアーティファクトだ。

 これを街の四隅に用意されていて、別の結界石と呼ばれるアーティファクトと同じ効果を発揮する巨大な石が城に置かれている。


「……この噴火のことがわかりましたから、アーティファクトの点検をもう一度して欲しかったのですがそれも伝えられませんでしたわ」


「……ラヴィニア嬢、アーティファクトの前回の点検は3年前の定期点検か?」


「……そうです!」


「……王は、もしかしたらこの噴火のことを知っていたのではないか?3年前の研究の中断、情報を知る人への対処の仕方、3年前からの気温の上昇、そしてアーティファクトの点検。全てが3年前に起こっている」


「!まさか……自国の事ですのよ?」


「……あるいは」


 サーシャはそこで話を区切り口を閉ざした。どちらにしても今すぐ結論は出せないだろう。

 サーシャはラヴィニアの手を離し立ち上がった。

 それに合わせてラヴィニアも立ち上がる。

 だいぶ高い場所にあるサーシャの顔を見上げると、それに気付きふっと笑った。


「とりあえず、理由はわかった。その他で何か情報はあるか?」


「今のところはありませんわ」


「そうか、わかった。……遅くに悪かったな」


「いえ」


「…………今後こんな時間に男が来ても部屋に入れるなよ?まぁ、俺が言えた事ではないんだが」


「サーシャ殿下が、無理やり入ってきたのではありませんか!」


「はいはい、ほらラヴィニア嬢、しー、だ。」


「……もう」


 サーシャはクスリと笑いフワフワのラヴィニアの髪を撫で付けてから部屋の入口へと向かう。


「では、また明日」


「……はい、サーシャ殿下お気を付けて」


「ああ」


 暗がりの中で見たサーシャの笑みにラヴィニアは体を熱くさせ頬に手を当てる。


「……いけないわ、私にはラティス様がいらっしゃるしサーシャ殿下は大国の方よラヴィニア。変な感情を持ってはダメですわ」


 ふぅ……と息を吐き出して居なくなったサーシャの後ろ姿を思い出すラヴィニア。

 早く寝なくては……とベッドにポフンと倒れ込んでからも興奮しているのかラヴィニアはなかなか寝付けなかったのだった。








 




「……お父さん、嫌な予感がするんだ。だから、お父さんが最後まで大切にしてたっていうこれは私が肌身離さずもってるから」


 アッティリア家を抜け出したアンジェリーナは、生前ホーマードが使っていた小さな医療院へと訪れていた。

 誰も使うことのないこの医療院は義父が買取り管理をしている為綺麗に整頓されているのだが、ホーマード亡き後はかなり荒れ果て資料などが部屋中に散らばっていたと聞く。

 それはまるで荒らされたかのような様子であったが、晩年ホーマードは操られているように何かをしていたらしい。その内容は誰も知らないのだが。


 ただ、一人娘のアンジェリーナ宛に用意されていたプレゼントのブレスレットだけはパメラに手渡しされ今も腕についている。

 そのブレスレットにはホワイトライティアの模様が刻まれていて、鉱山で採れたガーネットが輝いている。


 ホーマードが大切にしていたのは家族とホワイトライティアだった。

 だから、アンジェリーナは父が残したホワイトライティアが描かれたブレスレットを大切にすると誓う為にこの医療院に訪れたのだ。



「ねぇ、お父さん聞いてよ。私本当に男運ないんだよ。義理のお兄ちゃんになった人は優しかったのに気付いたら変態になってるし、王子殿下からはなんか執着されるし、そのせいで誰も男の人が来てくれないんだから!初めて一目惚れした人は大国の皇太子だし……私こんなんで幸せな結婚なんて出来るのかな……」


 膝を抱えて誰も聞いてくれないアンジェリーナの心の内が零れていく。


「……ラヴィニアはいいなぁ、家柄もいいし王太子の婚約者……は、羨ましくないけど……サーシャ殿下と、お話出来て、羨ましい……なぁ」


 思わず零れる涙を膝に顔を埋める事で隠す。

 ズズ……と鼻をすする音が静かな医療院の中で響くのを無感情でアンジェリーナは聞いていた。


「……帰らなきゃ、バレたら大変だ」


 どうしても1人になりたかったアンジェリーナはこっそり抜け出したのだが、今少し冷静になってからはマズイ、バレないようにしないと、という感情が渦巻いている。

 息を吐き出し、アンジェリーナは立ち上がる。


「よし、帰ろう!」


 頬を叩いて気合いを入れ医療院から飛び出したアンジェリーナ。

 帰宅したのは丁度ロサーシャがラヴィニアの部屋から出た10分後の事だった。


「……明日ラヴィニアに謝らなきゃなぁ」

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