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2回目の投稿です
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外出禁止令を出されてから2日が経過し、明日は花冠の日。
ラヴィニアはこの2日をなんともいえない気持ちで暮らしていた。
知り得た情報が大きすぎて1人で抱えきれない。
かといって、使用人達にまだ発表されてもいない情報を伝えて混乱させる訳にもいかないだろうと葛藤する中で伝えるのを辞めた。
幸い、まだ日にちは十分あると。
そして、その抱えきれない気持ちをアンジェリーナも抱えていて頻繁にラヴィニアの部屋に来ては2人で手を握りしめ過ごした。
「お嬢様、アンジェリーナはいますか?」
ノックの音がしたので入室の許可を出すと、クララがアンジェリーナの所在を聞いてきた。
アンジェリーナはキョトンと目を瞬かせてクララを見つめる。
「あぁ、アンジェリーナの自宅から荷物が届いたよ。これなんだけど」
すぐ後ろに荷物を持つ若い執事の姿。
大小様々な白い箱を積み上げ持っていて、ラヴィニアはそのまま室内に入ってもらった。
「……あぁ、これドレスですね。花冠のパーティの」
棒読みで言うアンジェリーナ。
ドレスはラティスから送られてきているとわかっているからため息を着きたいところをグッと堪える。
「……見ますか」
アンジェリーナはいやいや言う。
実際見て、1度フィッティングしなくてはいけない。
むしろ前日は遅いのだが、実家がなかなか送らなかったのはカインドが送る日を遅らせたようだ。
ラヴィニアは、自室をそのまま使ってとアンジェリーナのフィッティングの為に着替えをするように伝え、アンジェリーナはそれに頷く。
「……気持ち悪いくらいにフィットする」
「これ、ヴァレンティノのドレスじゃないかしら?良くフィッティングの付き添い無しでお仕事受けましたね」
ラヴィニアはドレスに触れて言うと、ピタリと動きを止めた。
「お嬢様?」
「どうしました?」
「……この差し色、禁色です」
ドレスの内側に使われている生地の1部に光沢のある紫色の生地が使われていた。
これは王家の色として王族、その婚約者が禁色を送られた時のみに使用許可される生地と色であった。
それを少しだとはいえアンジェリーナのドレスに使われているのだ。
ラヴィニアでさえ送られたことが無い為使用したことが無い生地がだった。
「……いやいやいや、着ていけないじゃない」
「たぶん、バレない場所だから大丈夫……かしら?」
アンジェリーナは横に首を振り、ラヴィニアはウーん……と迷いながら言う。
大丈夫な訳が無い。
しかし、花冠用のパーティドレスは特殊で基本的にホワイトライティアをモチーフとした真っ白なドレスでなくてはいけない。
そんな1年に一度着るドレスを一度に何枚も作る人は滅多に居ないだろう。
実際ラヴィニアもドレスは1着しか用意していない。
基本的に花冠のパーティドレスは毎年作り替え同じドレスは着ないことになっている。
昨年のラヴィニアのドレスを出そうかと考えたが、毎年使い終わったドレスはハンカチに変えて寄付に使っている為ないのだ。
「あまり、足を開かなければ見えない……いえ、見えますね……」
スカートの裏地に使かわれ、しかもスカートにはスリットが入っている。
ふわふわとゆれるスカートの裾から見える禁色の色をした生地があるのがよくわかった。
隠しようもない、いや、見えるように作られていたのだろう。
ヴァレンティノはラヴィニアから直接ドレスの発注をうけている、どんな気持ちで王子からの発注を聞いていたのだろうか。
「……だめですね」
着てみたドレスは足を動かす事にヒラヒラと揺れて中の禁色がチラチラと見える。
差し色として使われているので主張はしないがそれでも真っ白なドレスからは目立って見えた。
「いかがしますか?」
「……ヴァレンティノを呼びましょう。このままではアンジェリーナはパーティに出れませんから」
強制ではないが、ホワイトライティアが咲く花冠の日は何よりも特別な日となっている。
その為貴族のほとんどは城で開かれるパーティに参加する。
誰かに仕えている貴族出身者もその日は主人の準備が終わり次第準備に取り掛かりパーティに参加するのだ。
これは未婚の男女には出会いの場でもある為若い貴族はこぞって参加をする。
アンジェリーナだとて例外ではないのだ。
それなのに、だ。
この禁色で男性が近づくどころか、禁色を使うだなんてと後ろ指を刺されるだろう。
それは婚約者であり主人であるラヴィニアにとっても許されるものではない。
もう昼を回った時間、明日のパーティには夜通し直しをしないと間に合わないだろう。
「……ラヴィニア様、禁色が使われたドレスが有ると連絡が来たのですがー?」
連絡から程なくしてラヴィニアの元にヴァレンティノが到着した。
話し方は相変わらずゆったりとしているが急いで来たのか走って着崩れた服に汗を滲ませている。
「こちらです、ヴァレンティノ」
アンジェリーナが着たままのドレスをヴァレンティノが近付きみると、眉にどんどんと皺がより険しい顔付きになる。
「たしかに、カサンドラのドレスですねぇ……これ、どういう事ですかね?」
カサンドラのロゴが入っているのを確認したヴァレンティノは、後ろに着いてきた2人をチラッと見ると青ざめた顔をした女性が佇んでいた。
もう1人いる男性は不安感が強くラヴィニアを見つめながらも隣の女性をチラッと見る。
どうやら店にいる職員のようだ。
「も……申し訳ございません!王子殿下から直接ご注意を承りました!ラヴィニア様のだと仰っていましたので……まさか……」
「ラヴィニア様のドレスは僕が受けていたのを知ってるでしょ、なによりサイズが違うのわかってましたよね?」
「そ……それは……」
言い淀む女性にラヴィニアは息を吐き出した。
「私には気付かれないから、とでも言われたのでしょうか」
ビクッと身体を震わせた女性、それは肯定ととれてラヴィニアはまたため息を出した。
小さくヴァレンティノ様には言わずに作れと申し付けられました、と言った女性にヴァレンティノは目を片手で隠すように当て天井を仰ぐ。
「ラヴィニア様、王命とはいえしてはいけない事をした私達に非があります。誠に申し訳ございませんでした。こちらのドレスは責任を持ち明日までに直しますのでドレスをお預かりしてよろしいでしょうか」
今までにない真摯な対応にラヴィニアはまっすぐヴァレンティノを見てから頷いた。
「ええ、直してもらわなくては困ります。我が家の部屋を貸しますので直ちに直しに取り掛かって下さい。アンジェリーナ、フィッティングを最優先に今日は動いてくださいね」
青ざめる女性は深々と頭を下げ震える手で直しに使う道具を持ちクララに案内されアンジェリーナと共に部屋を出ていった。
男性もそれに慌てて着いていく。
「……ラヴィニア様、すいません……」
気落ちしたヴァレンティノにラヴィニアは視線を向ける。
地面を黙って見ているヴァレンティノは両手を握りしめていた。
「もういいですよ、何とかドレスを着れるようにしてくださいね」
「はい、必ず」
強い眼差しで頷くヴァレンティノは一礼してから部屋を出てく。
その時小さく何かを呟いていたのをラヴィニアは聞き取れなかった。
「……なんて言ったのかしら」




