本当はお米は体に悪い。本当はお水は体に悪い。本当は空気は体に悪い。
穏やかな土曜日の午後。
仕事中、年末調整の件で、妻に確認しておきたいことがあったので電話した。
ぷるるる ぷるるる
ぷるるる ぷるるる
ぷるるる ぷるるる
遅せえなあ、もう。
ぷるるる ぷるるる
ぷるるる ぷるるる
ったく、早く出ろっつーの。
ぷるるる ぷるるる
妻 着信
「もひもひ」
く、喰ってやがる。
完全に何か喰ってる時の「もしもし」だ。
あの、君、今、なんか食べてる?
「……おにぎり……おやつ」
喰ってやがる。
こともあろうに、おやつにおにぎり喰ってやがる。
仕事中につき、自宅でのんびりおにぎりを喰ってる妻に、若干イラっとしつつ、
要件のみ伝えて、電話を切る。
小一時間後。
確認し忘れたことがあったので、再度妻に電話。
ぷるるる ぷるるる
ぷるるる ぷるるる
妻 着信
「もふもふ」
く、喰ってやがる。
間違いなく、お口いっぱいに頬張っている時の「もしもし」だ。
あの、君、まだ、何か食べてる?
「……冷や飯……小腹……食塩」
どうやら、小腹が空いたので、冷や飯に食塩をかけて食べているようだ。
てか、なぜにカタコト?
その夜、残業が終わり、妻に帰るコール。
ぷるるる ぷるるる
ぷるるる ぷるるる
妻 着信
「もほもほ」
よ、よーしゃなく、喰ってやがる。
よーしゃなく、ドンぶりメシかっこんでる時の「もしもし」だ。
あの僕、今から、帰……
「……新米……炊き立て」
き、聞いてもねえのに、答えてやがる。
今日まで天文学的数の米粒を、本当に美味しくいただいてきました。
今更これまでの本当は、実は嘘でやんした?
本当は、お米は、体に悪いでやんす?
炭水化物は毒でやんす?
やっばい、僕も妻も、お米ジャンキー、早死に太体鼓判どどーん。
いやはや、この本当ってば、
本当は、お水は、体に悪い。
本当は、空気は、体に悪い。
僕らにとっては、そんぐらいナンセンスな本当なんだけれども。
僕も、妻も、お米のおかげで、すこぶる健康なんだけれども。
まあ、百歩譲って、それが本当の本当だとしても、
その本当も、次なる本当への通過点かもしれないわけであって。
いわゆるひとつの、僕が何を言いたいのかって言うと、
兎に角メシなんてもんは、難しい顔して講釈垂れながら食べるもんじゃねっす。
そっちのが、よっぽどカラダに悪いっす。
炭水化物だって、健全に食せば、絶対に体に良い。
そして、どんな健康食品も、不健全に食せば、絶対に体に悪い。
これ本当。
まじ本当。
他の作品も、けっこーすちゃらかですので、アッパラパーに読んでいただけたらこれ幸い。