第9章 第4話 シーバス開発
「フミ、工事が終わって落ち着いたら、シーバスで遊ぼうな」
「はい、きっとですよ。2人っきりでというのが条件ですよ」
どうも最近、俺よりフミの方が偉いような気がする。
第3回の採用試験で合格した者を含め、騎士団内部でファイアーボールが使えるものを改めて調べたところ、全体で30数名いた。
俺はサラたちの了解を取り彼らを招集。魔法の特訓と称して、シーバスの塩づくりに就かせることにした。
浜辺の旧猫耳獣人の村では、商会や山エルフ、ドワーフが常駐して塩釜小屋や宿泊施設の整備など大忙し。騎士団員たちは、彼らと協力しながら塩づくりに励んでもらう。
シーバスには連日移住希望の獣人たちが、詰めかけている。移住者を乗せるスタイン家の船や材木を輸送する商会の船で運河は混雑。街道も馬車であふれている。
確か、獣人族の長老たちの話によれば、この近くには数千人の獣人がいるという事だった。現時点で3千人以上が、ダブルウッドに移住したにもかかわらず、なお人が絶えない。彼らは、借金を抱えて逃げてきた者たちだけでなく、シーバスの噂を聞いてきた者や、海を越えた島々から、一旗揚げようとやって来た者など様々である。
俺は早くシーバスの海辺の整備がしたいのだが、こうなっては、ダブルウッドの開発を優先せざるを得ない。とにかくダブルウッドの拡張工事に取り掛かることにした。
元々、ダブルウッドは1キロ四方の土地を造成したものだったが、すぐにでも、飽和状態になるのは目に見えている。
俺は元の街を4キロメートル四方へと拡充することにした。エリに伐採を頼み、フミとボアを連れて運河造り。仕上げをセリアの工兵部隊にしてもらう。これで、住宅地や商業地、農業地の不足は解決するはずである。
俺たちはその後は3週間、道路の舗装や石壁、建物の基礎工事など、ダブルウッドで働きまくった後、侯爵からせっつかれている騎士団採用試験のため、ボアとセリアを残してユファインに戻った。
ユファインは、入国制限が撤廃され、人口は一気に10万人を突破した。最初に10キロ四方の街を造成していたため、土地は十分にある。農地に関しては、『アイアンハンマー』さんたちの故郷の村が、ユファインの噂を聞いて、村ごと移住を決めてくれたが、それでも7割くらいしか使えていない。住宅地や商業地もまだまだ余裕がある。
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第4回採用試験は、前回から1か月しか空いていないものの、次の採用試験は、日程を含め、すべて未定としたことで、受験者は過去最高の5千人。1次試験の合格者も3千人という大規模なものとなった。
2次試験ではこのうち千人が合格し、3次で500人が合格。彼らは早速初任者研修に入ってもらい、不合格者は、バランタイン候の騎士団へ。ユファイン領全体での採用は約2千人。これで何とかなりそうである。
人手が増えたことで、スタイン領はすべて、入国税を無料にすることが出来た。
そして、その1か月後、ユファインの人口は15万に、ダブルウッドの人口は5万を超えた。
ユファインの騎士団は、採用試験以外でも、スカウトや縁故採用も合わせ、総勢2千人。
主力の第1騎士団は、サラが団長を務める千人余りの精鋭。我がスタイン領の花形の騎士団であり、小隊ごとに別れて、ユファインとダブルウッド、シーバスなどの街や街道、運河の治安維持と、過酷な訓練に明け暮れてもらっている。
この第1師団のサポート的な役割なのが、魔法や弓などの間接攻撃が得意なセレン率いる第2師団、総勢600人。彼らは第一師団と連携を取るため、大半の行動を第一師団と共に行ってもらう。それ以外は、弓や魔法の遠距離訓練を特訓中だ。
第3師団は、セリアが率い総勢400人。彼らは200名の2隊に別れ、一隊は騎士団本部の任務。もう一隊は、俺付で様々な土木作業に従事している。
ちなみに今日も『シーバス』を一辺10キロ四方で造成してその周囲を深い運河で囲う工事の仕上げや点検をしてもらっている。
実はこのシーバスは、海流の流れが穏やかなため、海から多くの人が訪れやすい場所のようだ。シーバスのうわさを聞きつけ、よりよい生活を求めて、周辺の獣人やエルフなどの亜人たちが、ここに続々と集まってきている。なら、この地に新たな街を造るのもいいのではないだろうかと思ったのだ。
シーバスからは、ダブルウッドやユファインまで街道や運河が繋がり、交通の便も問題ないはずだ。将来は、ビーチリゾートにしたいのだが、今は、漁業と製塩、砂糖を主要産業とした浜辺の温泉町でいいだろう。
造成を終えた後は、道路の舗装や宅地や商業地の整備。何せこの地は、将来的にはダブルウッドを凌いで、ユファインに次ぐ、スタイン領第2の都市になりうる。
俺は、将来の独立を頭の片隅に入れつつも、昼間は土木工事。夜はグランやソフィから来た手紙に対しての対応策を書きつつ寝落ちする日々。
今の自分の仕事量は、ブラックだったサラリーマン時代以上だが、同じ仕事でも、上から押し付けられるものは重荷でしかない。しかし、自分が自らしたい事業であるなら、それがどんなに休みが少なかろうが平気だ。
◇
1か月後、仕事がようやく一段落し、俺は約束通りフミとシーバスの海と温泉を満喫することができた。
「ロディオ様!」
いや、フミ。何でお前まで白ビキニなんだ!
「ロディオ様の好みを、ララノアから聞いたのですが…………私、……変ですか?」
顔を耳まで赤らめ、恥ずかしそうに身をよじるフミ。可愛すぎる。惚れてまうやろ!
俺は日頃の感謝も込めて二人っきりで思い切り羽を伸ばしたのだった。




