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第8章  第11話 ダブルウッド






 丘陵地帯手前の拠点を開発しつつ、移住者を募集した。すると、街中より山奥の開拓村で鍛冶仕事をしたいというドワーフや、林業に携わりたいという山エルフ、更には力自慢の獣人の大工や職人といった多くの希望者が集まった。


 どこの世界でも田舎暮らしにあこがれる人はいるものだ。ただし、ここが田舎のままかどうかは保証できないが。


 農業の希望者もいるということで、街の周囲に広大な耕作地を造ることにした。

 移住者を一人一人面接していくと、酒造りが得意なドワーフが多数。彼らに純国産のシングルモルトウイスキーがこの地で出来ないか相談してみると、二つ返事で最高のものを造る自信があると答えてくれた。何でも水がいいらしい。

 俺は、新たに作った源泉の近くに、大規模なウイスキーの蒸留所を造る計画を立て、早速、基礎工事に入ることにした。


 そしてこの地の名は、蒸留所の建設予定地近くに種類の違う2本の大木があったことから、『ダブルウッド』と名付けることにした。


 また、人々の体と心の健康を守るため、教会を造り、更には、俺が酔っぱらって掘った源泉を基に、『山の湯』の建設にも取り掛かる。


 実はこの街のコンセプトは、究極のコンパクトシティー。巨大な温泉施設に宿屋やレストランなどの飲食店を入れる。専門店街には、一般的な商店だけでなく、サーラ商会の支店、教会や学校、ギルドなどをテナントとして入れようと思う。もちろん、エリが常駐することとなる騎士団の詰め所も当然入る。今後は、トンネル工事をきっかけに、多くの人やモノがどんどんこの地に集まることになるだろう。


 今や、ユファインの人口は5万人を超えている。グランからは、相変わらず、人手不足との連絡が入っていた。来週には、第2回目の騎士団採用試験が行われる予定である。


 俺は、基礎工事の終了をもって、ダブルウッドの開発をソフィたちに任せ、ユファインへ戻ることにした。サーラ商会からは、騎士団採用試験の面接官として、エルが来るそうである。


 サーラ商会は、トライベッカの旧本店に、エルが残ってバランタイン侯爵の下で取引規模を保ちつつ、トーチにはロイが支店長として赴任するという。はっきり言って大商いだそうだ。そして、それ以上の商業規模になりそうなのが、ソフィが本店を構えるユファイン。大森林の開発で、世界の材木の供給が、一変しそうなのだとか。俺はいくら何でもハウスホールドに悪いので、南の方には輸出を控えるよう頼んでおいた。



「ロディオ様~!」


 頬を赤らめて、小さく手を振りながら、俺の元に駆け寄ってくるソフィ。俺の気のせいだろうか、いつも俺と外で会う時は、ソフィは、鞄やポーチなりを斜めにかけているのは気のせいか。


 ソフィは少し恥ずかしそうに、相変わらず、体の一部をプルプル揺らしながら俺の元へと駆け寄ってくる。


「ソフィ、すまないな。商会には迷惑をかける」


 目のやり場に困って、横を向きながらしゃべる俺にも、ソフィは笑顔で優しく答えてくれた。


「いいえ、ロディオ様。私は、そして商会は、全てロディオ様のものですの」


 そう言って、恥ずかしそうに身を寄せてくるソフィ。俺がソフィを抱いている格好になると思うのだが、何か逆に俺が柔らかい物体に包まれているような気がする。


 あ、あかん。惚れてまうやろ!



「こほん」



 ソフィの余りのかわいらしさに、フミの咳払いで正気に戻るまで、俺は意識が飛んでいたようだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「ロディオ殿はウイスキーがお好きなのですな?」 ロディオは親指と人差し指を少し離して目の前に出し 「スコッチだけね」 そう一言だけ口にした。 ◇ 鞄やポーチを斜めに掛けて それ…
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