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第1章  第6話 ギルド その2

 俺は翌朝、寝不足のまま朝食も摂らずにフミとギルドに出かけた。すると、ギルドの壁一面に貼られた張り紙の中に『ポーション買い取り実施中!』というものを見つけた。


 魔力を聖水にとどめ、それを飲むことでヒール効果を得る飲み物がポーション。そのランクによって、疲労回復から、けがや病気の回復までも治せる万能薬。ひょっとすると、俺でも聖水さえあればポーションが作れないだろうか。

 受付でララノアに尋ねると、聖水は会員価格で1瓶千アール。早速2本買って家で造ってみることにした。


 フミに魔力の込め方を教えてもらい、試行錯誤しながら試してみる。





 いつしか辺りが暗くなってきた頃……できた! ような気がする。どのくらいの品質なんだろう。フミに見てもらうと一番下のランクくらいだそうだ。売り物になるかどうかもわからないが、すぐにギルドへ向かう。


 ギルドでは、もう登録済みしていたおかげでスムーズに買い取りに進めた。


「ちょっと待ってくださいね」


 買い取りカウンターの向こうで、胸の布地が小さめの人間のお姉さんはそう微笑むと、俺のポーションを持って奥に引っ込んだ。


「……お待たせしました。買い取り価格は2千アールです。どうされますか?」


 俺とフミは2千アールを大事に受け取ると、もう1本の瓶を持ってララノアを探す。


「俺、1日かかって初めてこれを造ったんだ。買い取りとかしてもらえるかな?」

「ロディオさんの造られたポーションですか! 是非ぜひ買い取らせてください!」


 ララノアはそう言って一旦奥に引っ込む。奥では何やら言い合うような声も聞こえたが、しばらくしてララノアが笑顔で出てきた。


「お待たせしました。5千アールで私が買い取らせていただきます」


 ……え?


「ギルドの買い取りじゃないの?」


「はい。ギルドは頭が固くて、2千アールでしか買い取りしない様ですので。ですから私が、個人的に買い取ることで話がつきました。5千アールでは少ないですか?」


 瞳をウルウルさせるララノア。


「そんなに出してくれて、本当にいいの?」

「もちろんです。記念すべきロディオ様の初めてのポーションが5千だなんて、私からすれば安すぎます」


 ララノアが無理してくれていることはわかる。彼女は、俺たちの事情を知っているのだ。


「ありがとうララノア。この恩はいつか返すからな」


「期待してもいいのでしょうか?」


 ララノアは、笑顔全開でこちらに駆け寄って来た。そして俺がララノアに近づこうとした瞬間、上着をフミに引っ張られ、後ろに大きくのけぞる俺。


「ロディオ様、いい加減にしてください! お金なら私が畜奴隷になってでも工面いたしますので!」


 俺は、フミに引きずられるようにギルドを出る。ララノアに『ごめん』と手を合わすが、彼女は何事も無かったかのように、笑顔で小さく手を振って見送ってくれた。


「全く……ロディオ様はエルフに甘すぎます」


「え……?」


 俺には全く意味が分からない。


「あれはエルフの常套手段。ロディオ様の気を引くために、身銭を切って振り向かせようとしているだけです。以後、お気を付けください」


 気を付けるも何も、かわいく優しいララノアに、俺はどうすればいいのだろう。



 その日の夜は、昨日の反省を踏まえ、俺は2人の布団の間隔を10センチ程度空けて敷いた。


「あっ」


 しばらくして気付いたフミは、2人の布団の距離を詰めようとして手を止める。これが俺がわざと広げたことに思い至った様だ。


 そして、すぐにフミは何事もなかったかのように横になった。


「お休みなさい」


「お休み」


 しかしその晩、またもやフミは寝返りを打ち、俺の上着の袖をつかんですいよすいよと熟睡。この程度の距離では全く効果がなかったようだ。おかげで俺はこの日も寝不足である。



「なあ、フミ」


「はい」


 翌朝、俺はフミに寝室を別にしようと提案するつもりだった。もちろんフミは俺を台所で寝かせようとはしないだろうが、そこは交代制でもいだろう。


 ……。


 しかし、俺を見上げるフミの瞳があまりにも眩しくきらきらしていて、俺は結局何も言えなかった。


「な、何でもない」


「……ありがとうございます。ロディオ様」


 ……?


 フミは何か読心術か、特別なスキルでも持っているのだろうか。


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― 新着の感想 ―
[一言] なぜロロノア……じゃなくてララノアさんの方に!?(ォィ か、確信犯!?(ォィ
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