第13章 第8話 占い
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俺の話が終わると、しばらく間をおいて、サラが口を開いた。
「……いや、びっくりすることばかりだが……それは、本当に実現できることなのだろうか?」
もっともな疑問だろう。
彼女たちに話した内容とは、俺が、ハウスホールドの王と盟約を結び、『竜の庭』に、独立国を造るというもの。
しかも、『サラマンダー』には、今後あるだろうバランタイン伯からのお抱え冒険者や、騎士団の誘いを断って、俺が造った国の初代騎士団長として参加して欲しいということだけでなく、バランタイン伯の真の狙いは、『アール』を流通させ、貿易による利権でなく、『アール』を世界の基軸通貨にすることだということまで話した。
確かにこんな、とんでもないことをいきなり話されても、普通は信じないと思うのだが……。
怪訝な顔をする3人と、不安そうな顔のフミ。フミは混乱しているに違いない。ずっと俺と一緒にいたのに、何も知らされていないことだらけなのだから。
不信感を募らせる彼女たちに、俺もうまく説明することが出来ず、つい、こんな出まかせを言ってしまった。
「実は……今まで誰にも言わずに内緒にしてきたんだが、俺は、未来予知が出来るんだ」
「……! そ、それは、占いか」
一斉に立ち上がる4人。すごい食いつきぶりである。
「じ、じゃあ、私の未来も占えるのか? 私は一体、誰と結婚するんだ?」
「あつかましいですよ、サラ。私は相手よりもまず、結婚できるのかどうかが、知りたいです」
「ですです」
「ロディオ様は、そんな力までお持ちだったのですね。ですから、今まで……。それなら、私の将来も占ってください」
フミまですっかり信じて食いついてきた。
何か話がおかしな方向に進んでいっているが、仕方ない。苦し紛れの言い訳のつもりだったんだが……。俺は凄腕の占い師でもあるという設定にでもしておこう。
「分かった。今から占うが、恨みっこなしだぞ。それから、俺のこの能力については、秘密にしてくれないとだめだ。約束してくれ」
コクコクと頷く4人。
「わ、私から占っていただこう」
「内容は?」
「私は、本当に結婚できるのかどうか。そして結婚できるとしたら、誰と結婚するのかだ」
「……本当に言ってしまっていいのか?」
「ああ。しかし……ま、ま、待ってくれ!」
さすがのサラも、周囲のギャラリーが気になったようだ。俺とサラは応接室から出て俺の書斎へ移動した。
ごくりと生唾を飲み込むサラ。
「じゃあ、言うけど……」
「ま、待ってくれ!」
「もっとこう、カードなり水晶なりは、ないのか?」
「ああ、俺のは特殊なんだ。もう俺の目には、未来のサラが見えてるぞ」
「ほ、本当なのか……」
すーはー、すーはー……。胸に手をやり、両目を閉じて、大きく深呼吸を繰り返す。ゆっくりと息を整えるサラ。
「よ、よし。それでは、教えてもらおう」
……俺は、サラに未来を告げた。
「え! 本当! あ、ありがとう! そうなんだー!」
浮かれてはしゃぐサラ。万歳しながら俺の周りをぐるぐる回る。
「やったー!」
「え、ど、どうしたの?」
はしゃぐサラの歓声を聞いて、セレン、セリア、フミの3人が部屋にやって来た。どうやら、占いの結果が気になって、部屋の外で、聞き耳を立てていたようである。
興奮するサラを目にした3人は、我先に俺の所に殺到してきた。
「次は私です」
「セレンちゃんずるいです」
「ちょっと、私はロディオ様の第一婚約者なのですよ!」
しばらく言い争いをしていた3人だったが、やがてこのままでは埒があかないことに気付き、話し合いの結果、この部屋に入って来た者から順番に占ってもらうことになった。
俺は、順番通り、セレンとセリア。そして最後にフミを占う。
……。
結果、全員が、大満足してくれた。
そしてこの後、俺とフミを加えた新生『サラマンダー』のメンバーは、誰一人俺の話を疑う者はいなくなった。
いいのか、こんなに簡単に信じてくれて……。
どおりで『サラマンダー』は、マリアが加入するまで、随分苦労していたはずである。
◆
そして俺たちは、手筈通り、二手に分かれて、仕事に向かった。
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