第13章 第6話 乱闘
読者の皆様、ご愛読ありがとうございます。作者の力不足と迷走のせいで、もやもやされたなら、遠慮なさらず、ご指摘ください。出来うる限り、真摯にお応えしていきたいと思います。そして作者は、この13章で、物語を終えるつもりです。最後まで、ごひいきのほど、よろしくお願いします。
俺は冒険者として、自分の魔力を使えば短期間でこなせそうな依頼ばかりを、選んで受けていた。
しかも、ギルド事務員のエースであるララノアが最大の応援団。
いくらフミとぶつかることが多いとはいえ、俺には最大限に配慮してくれている。
そんな俺たちは、今日も日課のギルドへ。A級の依頼を探すが、あいにく今日はないようだ。ララノアも出張中で不在。残念そうな俺を慰めてくれるフミ。若干嬉しそうなのは気のせいか? 仕方がない。今日は一杯飲んで帰ろう。
俺がエールと串焼きの盛り合わせを注文すると、フミは少し恥ずかしそうに、カクテルとフルーツパフェを注文。
なんだその組み合わせ。
……ん?
何か、隣のフロアが騒がしい。
「……だから、おかしいだろ! 私たちをなめているのか」
「いいえ、あらかじめ決められていた契約通りです。……というか、あなたこそ、こんないちゃもんを付けるだなんて、騎士団を呼びますよ!」
「はあ? お前、私のこと、ばかにしているな!」
受付のあたりから、やけにうるさい声が聞こえてくる。俺とフミが見に行ったところ、そこには懐かしい面々がいた。
「まあまあ、何かの間違いかもしれないし、ここは抑えましょう」
「です、です」
激高して職員に詰め寄るサラをセレンとセリアが必死になだめていた。
するとすぐに奥から、男性職員が駆けつけてきた。細い眼鏡をかけた人間である。
あ、あいつは……。見覚えがあるぞ。屋敷を売るときに俺の担当だった嫌な奴だ。
彼は、カウンターにつき、チラリとサラを一瞥すると、こう言い放った。
「そうか、そうかつまり君はそういうやつだったんだな」
『少○の日の思い出』か!
“プチン”と、サラの血管が切れた音が聞こえた様な気がした。
サラはゆらりと前に出て顔を上げる。
「うらあああ! お前ら、覚悟せいや!」
背中の大業物に手をかけるサラ。サラの大剣、銘は『フェンリル』が引き抜かれそうだ。この名刀は、全身の魔力を刃に乗せ、一閃すると斬撃が飛ぶ。
冗談抜きで死人が出るぞ。あわてて、力持ちのセリアが飛びついたが、一瞬で振り飛ばされてしまった。ドワーフ族の腕力をもってしても、今の激高したサラは制御不能のようだ。
「ちょーっと待ったー!」
セリアが吹っ飛ばされるのを見て、焦ったセレンは左右の手から、風魔法と治癒魔法のダブルコンボを放つ。
……。
見事、ギルドの室内がふっ飛ばされた。天井がぶち抜かれ、青空がのぞいている。
ギルド内は、濛々と塵や埃が舞い散っている。建物は壊れたものの、全員無事のようだ。治癒魔法のおかげだろう。もっとも、あちこちからうめき声も聞こえるから、軽いけが人はいそうだ。俺はフミをかばって、とっさに身を伏せて助かった。
「お前ら、何してくれてんだー!」
両手で頭を抱えてブチ切れるギルド長。『サラマンダー』の3人は、そのまま、奥の別室に連れていかれた。
「おい、フミ、あいつら、やばくないか?」
「そうですね。あんな人たちとは、関わらないに限ります」
……。
「ちょっと、ロディオ様! 待ってください」
俺は嫌がるフミの手をひいて、『サラマンダー』の後を追う。とにかく助けよう。心細いこの3周目の世界で、できれば彼女たちを仲間にしたい。
「お、お前ら、よくも、やってくれたな!」
部屋からは、ギルド長らしき怒声が聞こえる。執務室に急ぐが、俺たちより、先に部屋に入る人物がいた。
あ、あの頭は!
「ハープンさん!」
もちろん、この3周目の世界では、俺とハープンさんはまだ、出会っていない。
俺がノックもせず部屋に入ると、すでにハープンさんと、その弟がやり合っていた。
「ちょっと待て、こいつらに悪気なんてないぞ」
「何言ってんだ兄貴! こちとらギルドを吹っ飛ばされてんだぞ!」
『サラマンダー』の3人は、そんな2人のやり取りを前に、部屋の隅で小さくなって正座している。
そんな、険悪な雰囲気の中、俺とフミは、部屋に入っていった。
「失礼します」
「何だお前ら」
「部外者が入ってくんな」
「すいません。今回の不祥事について、建物の弁償から、けが人の治療費や慰謝料を含め、全て私が引き受けたいのですが」
「ロディオ様、いくら何でもそこまでは!」
びっくりして目を見開き、俺の腕を取ろフミ。
この世界には、レインがおらず、従ってマリアという金庫番も不在。前の世界では、もし、マリアがい合わせていなかったら、3人は奴隷落ち確実だったはずだ。
「ごめんフミ。彼女たちはこのままでは、奴隷落ちするかもしれない。俺は、自分の出来る範囲くらいは、そんな人を救いたいんだ」
「何かややこしい兄ちゃんだな。あんた本当に、こいつらに代わって弁償してくれるんだな」
「誰かは知らんが、あんたらは『サラマンダー』の味方をしてくれるのか、ありがとう」
胡散臭そうなギルド長と、嬉しそうに涙をにじませるハープンさん。俺は、『サラマンダー』の3人とは、もちろん初対面なので、彼女たちからも、怪訝な目で見られている。
なおもしつこく頼む俺の姿に、あきれたようにギルド長が口を開く。
「分かった。ギルドの修理と、けが人の治療費、それと慰謝料は、遠慮なくあんたの口座から引き下ろさせてもらうが、いいんだな」
「もちろん、構いません」
俺が身元引受人になり、『サラマンダー』の3人は解放。そしてお咎めなし。
俺はその後、数億アールに及ぶ金をギルドから引き落とされることになるのだが、ストックしていた金の延べ棒を、換金してギルドの口座に振り込んでいるので問題ない。
それより問題は、サラを筆頭に胡散臭そうに俺たちを見る『サラマンダー』の皆さん。どう説明すべきだろう。
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