表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
131/159

第12章  第10話 会談

いつもご愛読ありがとうございます。読者様のお声かけが、作者の原動力になっています。



 街道の敷設やアリマの工事、そして、ステアの帰国とそれに伴う騎士団の再編など、慌ただしい日が続き、ようやくブルームーンの国王との会談の日を迎えた。


 当初の予定よりずいぶん伸びたのは、バランタイン侯爵が加わることで、日程調整が難航した上、ダグも加わり、4か国の首脳会談の様な形になったからだ。


 結局、この会談の議長は、ダグにしてもらうことで落ち着いた。それに伴い、場所もハウスホールドの王城に変更。


 俺たちは最近改装したばかりだという贅を凝らした大広間に案内され、晩餐会を心ゆくまで楽しむ。会議は明日からの予定だ。



 俺とレインは、どちらからというわけでもなく、自然と、久しぶりの飲み比べの勝負をすることとなった。



「ロディオ様、いや、ロディオ! 今回こそは負けないからな!」


「私はいつ何時、誰の挑戦でも受ける。かかってきなさい」


 ……。


 俺たちは、今回、赤ワインで名勝負を繰り広げ、激闘の末、俺が二度目の防衛を果たした。後で知ったのだが、俺たちが飲み散らかしたのは、ビンテージ物の高級ワインだったそうだ……。

どおりで、しばらくクラークさんの機嫌が悪かったはずだ。





「はじめまして、リシャールです」


 ブルームーン王国の国王、リシャール=ヘネシー。獣人の血も少し入っているせいか、がっしりとした分厚い胸板が特徴である。


 骨太で背も高く、180センチ以上はありそう。見た目は20代だが、実年齢は30代だそうだ。何でも先祖は、王国から亡命してきたらしい。


 俺とバランタイン侯爵は、ダグの紹介で、すぐに国王と打ち解けることが出来た。


 翌日からの会議では、お互いユバーラに総領事館を置く者同士。貿易では互いに関税をかけず、当分はサーラ商会を通して行う事になった。同盟に関しては、もう少し時間をかけてから改めて協議することにした。



「失礼します」


 会談が無事終わり、リシャール王を見送った俺たちの前に、カインが現れた。


「実は、ブルームーン王国は、内乱の一歩手前です」


 王家であるヘネシー家は、莫大な負債を抱えているという。リシャール王の目論見は、国土を割譲し、その見返りとして、資金を援助してもらうことだとか。


 王はユバーラに帰らず、ハウスホールドの王城にしばらく滞在するらしい。


「で、負債の総額は、どれくらいなんだ?」


「私が把握している範囲では、およそ1千億です」


 なるほど……。


 理由は、先代の国王とその奥さんたちによる贅沢三昧。借金がかさみ、人心が離れ、ユバーラの総領事館に至っては、国庫にお金がないため、他の有力貴族に建設費や人件費を肩代わりしてもらっているのだとか。


 しかし、現国王が即位してからは、財政状況もだいぶ改善されているらしい。王妃は一人だけで、側室も置かず、王宮で爪に火を点す様なつつましい生活だという。


「幸い、男の子が3人いらっしゃいますので、これ以上、女性を置くのは、ぜいたくだと考えておられるのでしょう」


 王子たちも今回の外遊には、同行している。3人とも、お父さんによく似て、体格がいい。頼もしいかぎりだ。


「今回の外遊で、警備やお供のものが少ないのも経費の関係です。それに加えて、王は逆に国内より、ハウスホールドにいる方が安全だと思われている節もあります」


「私たちが、王を助ければ、その後は、どうなるでしょう」


「一先ず目の前の窮地を脱することができるでしょうが……」


 そこまで言って、カインは言いよどむ。


「王は誠実な人柄で、民衆から人気があります。ただし、負債の1千億の半分近くは、有利子負債。しかも、まさにクーデターを企てているとされている貴族から借りたものです」


 カインの話では、王を助けた分だけ、敵対勢力が潤うことになるだけだという。



「とにかく、もう少し、王の事を知りたい。ユファインにも招きたいのだがどうだろうか」


「敵対している貴族は、商人上がり。軍事力はそれほど持っていません。王家には、長年仕えている忠臣も多く、しばらく王が不在でも大丈夫でしょう」


 俺は、リシャール王をユファイン公国へ招待することにした。



 俺は、王の手を取って、ユファイン公国の御座船に乗り込んだ。運河を上り、ユファインへ。まずは『一の湯』へ案内する。


 足湯につかった後は、自慢の露天風呂に入ってもらう。リシャール王は、大喜びで、「こんなにいいなら、妃や王子たちも連れてくればよかった」と大満足。


 今回は安全のため、1時間ほど『清掃中』の札をかけてもらって大浴場を貸し切ったのだが、俺たちは普段、温泉では一般のお客さんと一緒に入っていると話すと、大いに驚いていた。

 

 お風呂上りに飲んだ、ビン入りのフルーツ牛乳や源泉で茹でた温泉卵もカルチャーショックだった様子。その後は『四の湯』の最高級スイートに泊まってもらった。


 夕食は、ラプトル肉のフルコース。ブルームーンには、ラプトルがいないようで、喜んでもらえた。輸入するにしてもまだまだ値段が高いそうだ。


 各種お酒も取りそろえた。リシャール王は、特にダブルウッド産の『近衛騎士団』が気に入ったよう。このお酒の開発には、アドバイザーとして、バランタイン公国の皇太子が関わったのですと話すと、何やら感動した様子だった。


 それから一週間、温泉巡りをしながら、グルメ三昧。すっかりユファインを気に入ってもらった。



 そして、最終日の夜、2人で『四の湯』の中に造った個室ラウンジでウイスキーを傾けつつ、リシャール王は、俺に本音を打ち明けてくれた。


「恥ずかしい話だが……」


 …………。


 顔をゆがめながら、自国の内情を打ち明けてくれるリシャール王。その内容は、俺がカインから聞かされていたものと、ほぼ同じだった。


「借金なら私たちが何とかしますよ。もちろん無償で」

「いや、それは、いくら何でも……」

「私たちの目的は、大陸の安定化です。ブルームーンが、王の元で一つにまとまってくれれば、心強い限りです」


 そこで、俺はグランを呼び、一枚の地図を持ってこさせる。そこには、大陸南部と、ブルームーン全土が描かれていた。


「ブルームーンの中心であるこの島は、大陸と非常に近いですね。俺たちなら、丈夫な石の橋を架けることが出来ます。戦力が欲しいなら、我らの騎士団がいつでも力を貸します」


「ロディオ殿、ご厚意はありがたいが、我らには返せるものが何もない」


「見返りには……そうですね。領内でのアールの流通と、ギルドの設置。それからブルームーン領内へのサーラ商会とウチの直営店の出店ではどうでしょう」


「……いいのか、それだけで」


「もちろんです。橋を架けたり領内を整備する費用もウチで負担します」


「我々からすれば、ブルームーンと地続きになり、商圏が広がることに利があります。先行投資ですよ」



 俺とリシャール王は、大いに打ち解けて、ハウスホールドに戻った。すぐに帰国するリシャール王を見送った俺は、バランタイン候やダグと相談。2人とも概ね賛成してくれたのだが、渋い顔をしているのがダグ。


「義兄上、約1千億を3国で負担するとなると、1国あたり300億以上。ウチではポンと出せるような額ではありませんが……」

 

「いやいや、何言ってんの。1千億じゃ、借金返すだけで終わるだろ。王家の手持ち資金もいるから、最低2千億だな」


「ごほっ……」


「ごめんごめん。1千億というのは、ブルームーン王国の通貨『ムーン』だよ。今のアールに換算すると、300億アールくらいかな。ダグの所も、100億なら何とかなるだろ」


「はい。それなら何とか……」


 ダグは冷や汗をぬぐっている。


「それから、王家に対する直接支援に関しては、侯爵と俺で……いけますよね?」

「全く、油断も隙も無い。ユファインでも、何か見つかったんですか?」

「……まあ、そんな所です」


「しかし、これが実現しますと、大陸南部が安定しますね。わかりました。国の負債は3国が平等に払い、ロディオ殿には、橋と大陸南部、それから島の街道の整備。場合によっては、王国のインフラ整備もしてもらいましょう。ダグリューク王には、開発に伴う人材や資材の提供。王家を支援するための資金は、全て私が持ちましょう」


 こうして、俺たちによる、リシャール王家の支援と、ブルームーン領内への『アール』の進出計画が、立案されたのである。



「面白い!」「続き読みたい!」などと思った方は、ぜひブックマーク、下の評価をお願いします! していただいたら作者のモチベーションも上がりますので、更新が早くなるかも知れません! ぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ついにブルー・ムーン篇か。 どうなっていくのか……1周目では描かれなかったから二重の意味で未知の領域ですね。
[一言] ついにブランデーまで!! わたしが若い頃に買った三万円の「レミーマルタン」はまだかのぅ(・∀・)
[一言]  なんか1周前より、何年も先に進んでますねぇ。  このまま上手くいくといいですが、まぁ失敗してもまたリスタートが待っているだけなので、その分いろいろためせていいかもしれませんね。  ああ、…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ