第12章 第9話 活況
ご愛読ありがとうございます。読者様の温かいご指摘、涙が出るほどうれしいです。まだまだ、あらすじみたいですが、少しずつ、頑張りますので、ご容赦ください。とは言いつつも、読者の皆様からの忌憚ないご意見も聞きたいです。よろしくお願いします。
火急の知らせが届いた。
来月の1日をもって、バランタイン領は、国として独立するらしい。我がスタイン領も独立の準備を進める。前回より数年早い。急いで領内を開発しておいて良かった。
急報を受けて、ウチの国名は、俺の一存で『ユファイン公国』にした。
そして、予定通り、『アール公国』『ユファイン公国』の独立と、『ハウスホールド王国』を加えた3国同盟が高らかに宣言され、今回も、共和国からバランタイン領へ兵が向けられることとなった。
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今回の『トーチの戦い』も、サラマンダーが、ディラノを連れて共和国軍に突撃。
共和国軍になだれ込まれ、混乱した王国軍に、ラプトルの大群が襲い掛かる。大混乱になった連合軍は、多数の兵が捕虜となり、我ら同盟軍の大勝利に終わった。
前回との違いは、辺境伯のハイランド家をはじめ、アルカの有力貴族すべてが、バランタイン家に臣従を誓って、アール公国の傘下に入ったことくらい。それ以外は、この前とほとんど変わらないようである。
そして『サラマンダー』は、今回も救国の英雄として、人々から称えられるようになった。
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「ロディオ様!」
ユファインで行われた、『サラマンダー』をオープン馬車に乗せた、ど派手な戦勝の祝賀会の後、俺はグランから、領内の現状について報告を受けていた。
「我が領は、どこも活況を呈しております。特に『ユファイン☆アドベンチャーツアー』の観光客が多く、人口も増加しています」
何でも予約待ちだそうだ。いち早く、ユファインの観光事業に取り組んだ成果だろう。
祝祭日も、俺やフミたちの誕生日や、建国記念日、戦勝記念日をはじめ、森の日、山の日、海の日と、街が出来る度に増やした。
この世界には、日本のように、盆や正月は無いが、俺は、それに代わるものとして8月半ばと、12月末から1月初めにかけて、それぞれ1週間を、国民の休暇日とした。
他にも、毎月20日は風呂の日、29日は肉の日と、休日を増やした。これによって、領内の売り上げが伸びたせいで、店舗で働くスタッフを、逆に忙しくさせてしまっているようだ。申し訳ない。特別休暇とボーナスを新設するから許してくれ。
おかげで、我が領の財政は十分に潤っている。この有り余る資金を、さらなる開発に投資することで、さらに利益が産まれる。そして、学校や病院を整備するとともに、労働環境を整え、さらに減税政策を取ることで、領内の人口が増えている。
人口の増加は、流入だけではない。この世界では、一般的に、乳幼児をはじめとする死亡率がかなり多いが、ウチの領地では、他の地域と比べて5分の1くらいである。
ユファインでは、領民は毎日温泉に浸かって清潔にしているだけでなく、下水道の整備がかなりすすんでいる。そして、温泉旅館だけでなく、一般家庭でも玄関で靴を脱いで、家の中ではスリッパで過ごす習慣が定着してきた。
また、ユファイン公国は、酒造りが盛んなため、消毒用のアルコールも手に入りやすい。当然官公庁をはじめ、街の主な施設やすべての店舗には、無料で配布している。それに加えて、学校や教会でも、手洗い・うがいを励行するよう、啓もう活動に励んでもらっているのだ。
これらの新しい生活様式は、運河と碁盤の目を持つ街の建築様式と同じく『ユファイン様式』と呼ばれるようになった。
そして、この新しい生活様式は、死亡率の減少だけなく、出生率と平均寿命の上昇までも招くようになった。今や、ユファイン公国は、住みたい国ナンバーワンに選ばれているのだ。
俺もうれしい。みんなの笑顔がこれほど、自分のやりがいとモチベーションを高めるなんて、今まで想像もつかなかったのだ。
◆
領内の開発が一段落したのを見計らい、遅ればせながら、バランタイン候へ、独立祝いのお礼を贈ることにした。ユファインの名産品、およそ150億アール相当分を、大船団で輸送する。
貰った以上の金額の金品をお礼として送るのは、まるで、冊封体制の中国王朝のようで、どうかとも思ったのだが、バランタイン侯は、そこの所はあまり深く考えていないようで、嬉しそうに受け取ってくれた。
「せっかくの機会ですので、私からいくつか相談事があるのですが……」
その日のパーティーで、俺は、バランタイン侯に話しかけてみた。
「まさか、またウチの人材が欲しいというのではないでしょうね」
相変わらず、温和な笑みの中に、目だけ笑っていないバランタイン侯爵。
「いえいえ、めっそうもございません。ユファイン公国は、将来、ブルームーン王国と国交を結び、将来は同盟したいと考えています」
「ほう。いいですね。是非、我が国も参加したい。私も顔を出していいですか」
「はい。大歓迎です」
ステアの件に関しては、打ち合わせ通り、ダグがセレンをバランタイン侯爵の前までエスコートしてくれたことで、バランタイン侯も納得。
改めて見ると、ステアもセレンもがちがちに緊張している。うまくいって良かった。お前ら、俺とダグに感謝しろよな。パーティーは、和気あいあいとした雰囲気で進んでいき、お開き間近になって、俺は、クラークさんから、王都までの工事を依頼された。
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