第12章 第2話 いつかきた場所
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この借金は、ダグが話していた、エルフの嫌がらせ工作に違いない。全く迷惑な話だが、前の世界では、レインのおかげで完済できた。いざとなれば、レインからお金を借りることもできるだろう。
「フミは絶対に奴隷になんかさせないからな、絶対にだ!」
「……あ、ありがとうございますロディオ様。ですが……」
これだけじゃ信じられないだろう。不安そうな視線で俺を見つめるフミ……なんて可愛いんだ。そして、10年後の君は、なぜああなった。
◆
……多分、俺のせいだと思う。俺を正座させて、怒るフミの心の中はどうだったんだろう。フミを泣かせていたのは、俺の方だ。
あの頃は、正直、自分が目の前の危機をどう乗り切るかくらいしか考えていなかったと思う。
今回はやり直す。愛する人たちを傷付け、悲しませることなんて絶対にしない。
「フミ、大丈夫だ。俺を信じろ。理由は言えないけど……」
今はこれくらいしか言えないが、何とか納得して欲しい。うっすら涙を浮かべながらも俺を見上げて、うなづくフミ。もう、反則の様な可愛さです。
◆
「ロディオ様、私の傍を離れないで下さいね!」
ギルドに向かう俺たちを、チラチラ見たり、ひそひそ話している耳の女の子たち。
「ロディオ様は十分お気を付けになってください。もし、万が一、間違いでもあれば、私は亡くなった奥様や旦那様に顔向けできません」
そういや、ここで俺はこんなことを言ったっけ。
「……エルフの女子って確かに綺麗かも知れないけど、俺は何かタイプじゃないよな」
「きゃいいーっ♡」
しばらく歩いて、ギルドに到着。重厚な扉をゆっくりと開けて、中に入ると、カウンターには、やはりララノア。
何か新鮮。10年たっても容姿に大した変化はないのだが、何というのか、雰囲気が、すごく清楚で、はつらつとしている。前はこんなんだったんだ……。
セーラー服を着せたら、とても似合いそう。ちっぱいB級のお胸も、良く似合っている。
……おい、ララノア。わざわざカウンターから出て来て俺の手を取らんでいい! 隣に殺気を放つフミがいるだろうが!
◆
次の日、ギルドで屋敷からの退去手続きを済ませた後、すぐに引っ越しの準備。やはり、屋敷は1億で売れ、借金は残り5千万。
この後は、確か、ポーション造りや、ベビーシッターだったよな。そしてレインか……。果たして同じようにうまく行くんだろうか。
ララノアにレインのことを聞くと、もうすぐ来るかもしれないという。何でも、一人暮らしのため、夕食はここ最近、ギルドの酒場で済ませているのだとか。
俺とフミは、酒場の隅で待たせてもらう事にした。ララノアにわびしい懐事情を説明し、2人とも水だけでねばって、レインを待つことにした。ララノアは気を利かして、俺たちに紅茶を淹れてくれたが、フミはそっぽを向いて、口を付けない。
その間、俺はフミに、この世界や、自分たちのことを根掘り葉掘り聞き、やはりここが前の世界と寸分たがわない世界だと確信するに至った。
◆
「よう、ロディオにフミちゃん、珍しいな」
夜も更け、そろそろラストオーダーの時間が近づいてきた頃、ようやくレインが現れた。
「レ、レ、レイン!」
俺は半泣きでレインに駆け寄る。
「フミ、ちょっと席を外すけど、ごめんな。2人で話したいことがあるんだ」
俺は、フミを一人で残し、レインと一番奥の席に移動。申し訳ないので、フミにはパフェを注文し、レインを引っ張って酒場の隅に座る。
そして、俺は思い切って、レインに全てを話した。
…………。
「……そうか、やはりな。……ということは、お前はこれで“2周目”なんだな」
……ん?
「俺は、今、“3周目”なんだ」
……え?
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