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第11章  第11話 皇太子



 ステアが皇太子としてアール公国に行く日が近づいてきた。どうやら、あちらの政情もずいぶんと落ち着いてきたということらしい。

皇太子の帰還に先立ち、アール公国は正式にステアとセレンの婚約を発表。バランタイン候も、我が子がようやく身を固めてくれたとうれしそう。領主からの大盤振る舞いが続き、国中が沸き立っているようだ。


 ステアの婚活長かったものなあ。彼の所に持ち込まれた婚約の話は実に1000件以上。それも、厳選して絞りに絞った数だという。


 トライベッカ界隈では、実はステアは最初から結婚する気がないんじゃないか? あるいはそもそも女性に興味がないタイプなんじゃないか? など、一般市民にまで気をもませていたらしい。

 


「ステア、いつでも遊びに来いよ! レインにもよろしく」

「ああ、わかった。ロディオ様、じゃなかった、ロディオも時間が空いたらいつでも来てくれよな!」


 ステアはしばらく旧都トライベッカで、皇太子として過ごすそうだ。今までの様な自由な暮らしは望めないらしい。


「俺たち3人でトライベッカに遊びに行くからな!」

「ロディオ様、フォーなんとかの活動はだめですよ!」


 フミが俺の腕を掴んで膨れている。


「元気でなー!」


 俺たちは、涙ながらにステアを見送り、近衛騎士団団長の後釜としては、ボアを指名した。



「ええーっ! 俺なんかダメですよ」

「いや、人は立場によってつくられるもんだ」


 今回のステアの退団に伴い、我がユファインの騎士団は大規模なリストラ。即ち組織の再構築を行った。


 騎士団は、直接攻撃と間接攻撃という分け方で、サラの第1騎士団と、セリアの第2騎士団とに統合された。別動隊として、風魔法による木材の伐採部隊と、火魔法による製塩部隊はそのまま置くが、人員を大幅に増やした。


 今までは、その忠誠心と武勇で選ばれていた近衛騎士団は、土木工事を得意とする職能集団へと変わった。領主の俺が土木工事ばかりしている以上、周囲の騎士も一緒に作業できる者たちの方がふさわしい。


 しかし、サラからは「これでは、騎士の本分である主を守る力が足りません」などと言われ、グランからも「いくら何でも土木業者の様です」などと渋い顔をされた。


 俺は仕方なく、領主直属の戦力として、新たに『竜騎士団』も創設した。団長にはエリを指名。こちらはボアと違い、最初からやる気満々である。『竜木』の切り出しと植林作業は、サーラ商会と後輩の騎士団員たちに任せる事にした。



「お館様」


 緊張した顔で俺の前にひざまずくエリ。何でも俺に奏上したいことがあるらしい。


「この者は、私の妹のミュウといいます。まだ魔法学院の学生なのですが、我がユファイン騎士団に入りたいと熱望しております。もし許されるなら、学校を休学し騎士団に入れて頂きたく思うのですが」


 エリも妹からせがまれていたのだろう。大陸の各国が安定し、政情が落ち着いているせいで、世界的に兵力は余り気味である。しかし、こんな時こそ積極的に人材を集めるべきだろう。


 そう。今や大陸は、騎士団志望者にとって就職氷河期が来ようとしているのだ。


「分かった。とにかくミュウの力を見てみよう。騎士団本部の演習場に来るように」



「はじめまして、よろしくお願いします」


 ミュウはショートカットで小柄できりりとした眉と目元の美人さん。というか美少女。いかんせん幼児体型のため、この世界の美人基準からは大きく外れているが……。ただし俺の基準ではストライクですよ!


 い、いや審査の基準はそうじゃなくて彼女の能力だった。


「できれば、エリの跡を継げるほどの力を持った者が欲しい。ミュウはどれくらい魔法が使えるんだ?」

「はい。風魔法だけですが上級まで使えます」

「ほう!」


 もしそうなら、すぐにでもエリに代わって森林伐採部隊で働いてもらいたい。


 ミュウの魔法を見てみたが、ウインドカッターの精度や切れ味は、姉と遜色ないものだった。俺は嬉しくて、その場で採用を決めたのだった。


「ひやっ!」

「へぇっ!」


 その場で採用を告げた俺に、びっくりするエリと、呆然とするミュウ。


 しばらく騎士団の生活と仕事に慣れてもらってから、伐採部隊に配属することにしよう。


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― 新着の感想 ―
[一言] こ、これは……騎士団に就職できなかった者に刺されるんじゃ(ォィ
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