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第10章  第1話 独立



 予定通り、バランタイン領は独立して『アール公国』を名乗った。それに続き、我が領も『ユファイン公国』を名乗って独立を宣言。それと同時に、『アール公国』『ユファイン公国』『ハウスホールド王国』の3国同盟も公布された。


 街はお祭りムード一色。ウチは元々、毎日が縁日みたいなものなのだが、今日は特に大盤振る舞い。グランも目をつぶってくれている。


 そして今日は、全ての温泉を入湯無料にし、『一の湯』のオープンスペースでは、俺が密かに育てておいた職人さんたちによる、試食会を開催。シーバス産の魚を使った寿司やカルパッチョ、海ブドウに、モズクのてんぷらなどが、一皿100アールで振る舞われている。俺の大好物が、皆に受け入れられてうれしい限りである。


 お酒のブースでは、エールやワインに加え、ダブルウッド産のウイスキーをこれまた特別価格で試飲できるようにした。ドワーフとステアが、試行錯誤しながら作った銘酒が並ぶ。


 特にステアが中心となって完成させたシングルモルトは『近衛騎士団』と名付けられた。値段はやや高いが、薫り高く、それでいてまろやかな味わい。俺が今1番好きなウイスキーである。こんないい酒に関わることが出来て、ステアも本望だろう。そんなアール公国の皇太子は、満足そうに職人や部下の騎士たちと酒を酌み交わしている。幸せそうで、何よりだ。


 各ブースには、瞬く間に人があふれて、人数整理が必要となった。十分に対策をしていたつもりだが、こちらの想定を上回る人出である。大通りも人であふれ、露店がたくさん出店している。我がユファイン公国は、まさにお祭りムード一色だ。



 頃合いを見計らって、俺は、ギルド前の特設ステージの演台に立つ。レインに教えてもらった風魔法の応用で、俺の声は、まるでマイクで喋るかのように音量が増幅されている。


「この度、我々はユファイン公国として独立することとなった。まだまだ街は、ユファイン、ダブルウッド、シーバスに現在開発中のボウモアと、全て発展途上にある。この国を、皆が住みやすい国へより豊かに発展させるために、国民全員が力を貸して欲しい」


 俺の宣言に続いて国旗がお披露目された。大森林の緑をバックに、4つの街を表す4羽の鷲。その真ん中に、俺が冗談で、赤で♨マークを入れたものが、予想に反して皆に受けてしまい、正式な国旗になってしまった。いいのか、これで!


 提案した本人が、必死になって「いや、これはほんの冗談だから」と取り消そうとするも、「いやいや、さすがはロディオ様、素晴らしいデザインです」と周囲から大絶賛され、押し切られるように採用されてしまったのである。


 俺は、独立宣言に続いて3国の同盟とユファイン公国の国是を告げた。


「ブラック労働の完全撤廃と奴隷の廃止を目指し、国民全員がホワイトな環境の下、種族間の差別を無くしていくことが我が国の目標である」


 この宣言に、国民は大いに沸き立った。皆、口には出さずとも今まで多かれ少なかれ、大変な思いをしてきた人が多いのだと思う。


 ユファイン公国の刑法は、基本的にはそれまで使われていた共和国のものをそのまま使うが、俺は労働者を過剰に働かせ、国から指摘されても改めないような悪質な経営者は、永久国外追放に処するという条項を組み込むことにした。





 今回の独立に対して、アルカ共和国の他の貴族たちは大激怒。共和国からバランタイン領へ、制裁として兵が向けられることとなった。同盟を結んでいる、ユファインやハウスホールドも敵認定されている。俺としては正直、勘弁して欲しいが仕方がない。


 地理的に最初の攻撃目標とされるのは、アール公国の北に位置するトーチ。俺としては、戦に巻き込まれるのは嫌だが、バランタイン候には恩義もある。そして俺は、今回の戦いに関して、全く負ける気がしていない。


 アール公国の兵力は守備兵を含めて約7千人。軍のトップはレインだが、騎士団の団長で、実際の指揮を執るのは、ゴーザという壮年の騎士。何とコザさんの息子である。


 俺たちは、このような事態も考えられるとして、準備を整えていた。最前線のトーチには、元々の2千人の守備兵に加え、ゴーザ率いる4千人が入城。


 トライベッカには、レインが率いる近衛騎士団の精鋭千人が残るが、ユファインから、第1騎士団から第3騎士団まで約2千人を援軍として送った。『サラマンダー』が戦場に来てくれれば、皆、心強いだろう。なんだかんだ言って『サラマンダー』の実力は、広く知られているのだから。

 ハウスホールドからも千人の援軍がトライベッカに入城し、計4千人の兵力となった。


 ユファインの兵力は、ステアの近衛騎士団とエリとボアの小隊のみとなったが、そこはハープンさんの力で、ギルドより5百名の冒険者を臨時で雇い入れた。皆、ユファインの街が大好きな連中。自分たちの街を守る為ならばと、騎士団が担っていた仕事に従事してくれることとなった。当然、俺が報酬をはずんだのはいうまでもない。

 ハウスホールドからも、ウチに援軍を寄越そうかという打診もあったが、援軍に関しては丁重に断り、少人数の兵士に多数の軍旗を持ってきてもらうことだけにしたのだった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 激怒するくらいなら集客のための知恵を絞れって感じだよね(ォィ いや、転生者などが保有するチートが国家に波乱を巻き起こすのは世の常だとも思っていますけどね(ぁ
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