第1章 プロローグ ☆
プロローグ
その日、ユファイン王室は念願の跡継ぎ誕生に沸き立っていた。明日から国を挙げて連日のパーティーが行われる予定である。外国の来賓を招いた正式なものは後日となるが、国内の至る所でどんちゃん騒ぎがしばらく続く。街はお祭りムード一色。元々この国は、毎日が縁日みたいなものなのだが、この度は一際派手なものになりそうだ。
そんな中、執事見習いのモヒートはパーティーに飾る国旗を取りに王宮の宝物庫まで来ていた。何しろ年季が入っている建物なだけあって様々な物が雑然と置かれてある。ほこりにまみれつつしばらくごそごそ探していると、いかにもそれらしい丈夫なケースを発見! かなりの年代物である。
意外と早く見つかったようだ。早速テーブルの上に出し、留め具を外すと「カチッ」と小さな音がしてあっさり開いた。やけに分厚い布地が入っている。高級そうな素材なだけに慎重に広げてみた。
「なんじゃこりゃ~!」
紫紺の布地に火を噴く真っ赤なドラゴン。そして金の刺繍で『サラマンダー参上』の文字。あまりの趣味の悪さにびっくりして思わず叫んでしまった。
何でこんなものがここにあるのか不明だが、あの伝説のパーティーのものなのだろうか。いや、その前に冒険者が旗なんて持つか? 大体『サラマンダー』って広場に建っている古い銅像の人たちのことですかね?
がっかりして旗をケースに戻したとき、やけに豪華なつくりの分厚い本を発見。当時の貴族が書いた日記帳のようだ。何故か気になってページを開いてみる。
……最初はイタズラみたいな訳の分からない内容が続いていてがっかりするが、ページをパラパラとめくってみると聞いたことがある人の名前がいくつか出て来た。賢いことで有名なエルフの王様に、かの有名なバランタイン侯の名前も……。
「それにしても、最初の方はへったくそな字っすね。時間はあるから少しさぼってもいいっすよね」
もうすでに当初の目的も忘れ、もふもふ尻尾を振りながらモヒートはそのまま日記を読みふけってしまったのだった。




