表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輝石姫と破滅の運命  作者: 行雲流水
87/105

35

「僕はこの婚約に反対ですね。 土台、あの女を養ってくなんて不可能ですよ。 それに、閣下と性格があうとも思いません」

ヴィクトルの部屋にジェシーがいることは知っていただけにレイ中尉は特に遠慮なく告げていたが、ヴィクトルと二人きりになっていたということに少しばかり苛立っていた。

「閣下にはもっと慎ましいご令嬢が似合います」

「慎ましいご令嬢は軍人に嫁いだら卒倒するようなことしかないと思いますよ」

ジェシーはレイ中尉を見ながら、ソファに腰を下ろしてハンドバッグを膝の上にのせていた。

「私の母さんも子供のころはじゃじゃ馬だったって言いますし、女性はちょっとやんちゃなくらいが魅力的なんですよ」

「じゃじゃ馬どころか暴れ馬だろう、あの女は」

レイ中尉はそう言いながら今後の友好使節団の旅程をヴィクトルと確認していた。 明日、最後の中継地点を抜ければいよいよ王都につく。 そこで和平の調印を済ませれば使節団はしばらく王都にとどまった後に再度ボンベルメール領からアルビオンへと変える手はずになっている。

「ジョージ王子はどうしている」

ヴィクトルは簡素に尋ねたが、レイ中尉の方はやはり婚約者に粉をかける男が気になるのか、と眉を下げた。

「特に何も。 ボンベルメール辺境伯とは親しくなれたと喜んでおられましたが、目立って何かをするでもなく。 ロスタン嬢とも馬車の中や宴席以外ではそこまで親しく接していませんよ……というよりも」

考え込むようにして言葉を止めたレイ中尉にヴィクトルは目線を上げた。

 レイ中尉は基本的にはっきりと物を言う方だ。 平民のヴィクトルに対しても見下すどころか心酔しており本心で接してくることが多い。 貴族階級の文化に馴染みが薄いヴィクトルにとってはレイ中尉は副官であると同時によきアドバイザーでもあった。

その彼が何か言いよどんでいるのは珍しかった。

「レガリア侯爵夫人の方がロスタン嬢にべったりで王子が割って入る余地がないんですよ」

「夫人はロスタン嬢の叔母だっただろう。 つもる話もあるのではないか」

「それは変ですよ」

不意に二人の会話にジェシーが入り込んだ。

「いま、真面目な話をしてるんだが」

レイ中尉が横やりを中尉するように窘めたが、ジェシーはそれで止まらず、言葉をつづけた。

「ロスタン伯爵家はアルビオン側の親戚とはほとんど交流がなかったですよ。 むしろ、伯爵はアルビオンを避けてるようでしたから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ