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輝石姫と破滅の運命  作者: 行雲流水
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軍部の英雄、東部戦線の英雄が急遽二日も休みをとれたのには理由があった。

無論、輝石姫との婚約騒動の鎮静の為大人しくさせたいというのもあったが、それ以上の理由が差し迫っていた。

アウローラ王国から北海を挟んだ島国、工業連合王国アルビオンの使節がもう間もなくやってくる。 四十年前の北部守護戦争以来、講和条約を締結しているがその条約の更新の為にアルビオンの第一王子ジョージと侯爵夫人であるダイアナが友好使節として訪れるのだ。

ヴィクトルには彼ら要人の警護が任されており、それはアウローラ王国にとって非常に重要な役目であるため、英気を養う意味で休暇が認められていたのだ。

北部守護戦争は今の東部戦線とは違い、かなり根深い問題を抱えた戦争だった。 元々はアウローラ王国の一地方領主であったアルビオン公が突如として独立を宣言。 そして彼は農地に適さないアルビオンだけでは国民の生活が成り立たないとして、本来の主国であるアウローラ王国北部へと進軍を開始したのだ。

当初、アウローラ王国は絶対的な勝利を確信していたが、アルビオンの軍事力は想定よりもはるかに高かった。 彼らは兵数の不利を兵器で補うべく、当時普及しはじめていた小銃を主力に置いてきたのだ。 これにより百年以上前から培われてきたアウローラ王国の隊列歩兵の戦術は一挙に瓦解し、多数の死傷者を出すことになった。

そこに現れたのがボンベルメール辺境伯であった。 彼はどこで情報を入手したか敵の中枢を的確に見つけ出し、最短のルートで襲撃をかけた。 戦力の差を戦術により巻き返したのだ。

アルビオン側は複数回にわたって作戦本部を強襲されたことにより士気は低迷、末端の兵士たちには逃亡者が出始めるまでに瓦解した。

そこまで来たならばアルビオンを撃滅せよ、との声もアウローラ王国中央では強く上がったが、現場を指揮していた英雄ボンベルメール辺境伯はそれを良しとしなかった。

アルビオンの工業力を損なわせ、貧しい土地に追いやったとなれば彼らは間違いなくアウローラ王国に恨みを抱く。 次に彼らが立ち上がる時、英雄は生きているか。 そう説いて講和条約締結への動きを作ったのだ。

結果として講和条約調印がなされたことでボンベルメール辺境伯はアウローラ王国のみならず、アルビオン工業連合王国にとっても平和の英雄として讃えられる存在になった。

彼の領地、ボンベルメールがアルビオンと面しているアウローラ王国北部にあることも重なり、ボンベルメール領はアルビオンからの工業製品の輸入も多く、牧歌的なアウローラ王国全体から見れば少々風変りな街並みになっているという。

そして、四十年の月日が流れた今、戦争当時生まれていなかった若者たちが軍人となり、政治家となり、王族や貴族として成人した今、改めてこの和平を内外に知らしめるために条約更新の使節がアルビオン側からくることになったのだ。

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