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「相変わらずね、オーレリア。 貴方だってもう十七になるのだから、結婚相手を選ぶ頃でしょうに。 それでは中々縁談もまとまらないんではなくて」
「もちろん、結婚するつもりはございます。 ロスタン伯爵家は私しか子供がおりませんもの、女の爵位継承が認められていない以上は婿養子を取る他ございませんわ」
「それなら貴族の次男なら丁度いいでしょうね」
「そうですわねえ……確かに貴族の次男、三男も、財産がないでしょうし私と結婚して伯爵領と財産を得るのは利益が多いでしょうと思いますわ」
言外に、あの醜い豚と結婚するのが似合いだと言われているのは理解していたが、オーレリアは口元を緩めて自分の口元に手をやっていた。
「ですけれど……それは父が決めることですもの。 愛する父の命令なら私、どのような方との婚礼であってもよろこんで従いますわ」
自分の結婚の決定権は父にある、と言ってオーレリアが微笑んでしまえば、それ以上オーレリア本人にどこの誰がお似合いだといっても無意味なものだった。
マルゴー王女は軽く唇をつぐむと不愉快そうな口元を扇で隠して目を反らした。
やっと自分の話題が終わったと息を細く吐いてオーレリアがふと視線を右にやるとシャーリーはもはやベンチに座っているのも気まずかったのか、ベンチの端からおりて東屋の入り口近くで俯いて立ちつくしていた。
王宮主催の茶会から一週間ほど、王都中央近くにあるロスタン伯爵邸は賑わいに満ちていた。 まだ夜も開ける前から使用人たちが何度も出入りを繰り返し、玄関の門扉も庭も丁寧に掃除をされていた。
この屋敷の主、ロスタン伯爵のたった一人の愛娘……輝石姫とあだ名されるオーレリアの十七歳の誕生祝いの日だった。
そして、午前七時を回った頃に宝石商の馬車が止まった。 オーレリアもこの日ばかりは早くに起きており、既に身支度を整え、朝用のグレーのドレスを着て応接室で待っていた。
父のロスタン伯爵は愛娘の輝くばかりの成長を喜び頬を紅潮させながら、老いた執事から馬車がついたとの報せを受け、応接室へ通すように命じていた。
しかし、続いたのは玄関からの大きな物音だった。 組み合うかのような音、屋敷に踏み込む長靴の高らかな足音。 招かれざる客が来たということだけははっきりと理解できる異常にオーレリアは目を見開いてソファから立ち上がった。