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輝石姫と破滅の運命  作者: 行雲流水
52/105

5

レイが表情をこわばらせているのを見ながら、アナベルは悲鳴をあげてドレスを抱きしめた。

「あの輝石姫が着てたドレス! そんな素敵なものを私に……ああ、すっごい……こんなにシンプルなのに可愛いドレス、初めて見たわ!」

確かにドレスは胸元に切り替えしがあるだけでフリルやレースの少ない簡素なドレスだったが、その反面柔らかな木綿の生地で綺麗なドレープを描くドレスは優雅で清楚な印象を与えるものだった。

そして、妹のアシュリーは開いた箱の中身を見てまた甲高い声を上げた。

「輝石姫が選んだ香水セット……! これ、雑誌でみたけど、すごく高かったやつ!」

包みに含まれていたカードには「未来のレディへ」という書き添えまでされていてアシュリーは鼻の頭を真っ赤にし、感動のあまりに泣きそうな顔をしていた。

もはや、姉と妹の頭の中にはレイがブティックで買ってきた帽子など微塵も残らず、ただ国一番の美女、アウローラ王国のファッションリーダーであるオーレリアからの贈り物というとんでもない宝物に彼女たちは完全に浮かれていた。

呆然と立ち尽くすレイの肩を父がそっと叩いてくるのが尚の事むなしかった。


「なんなんだ一体……」

家族での夕食を終えた後部屋に戻るとレイは溜め息をついた。

オーレリアとは確かに多少の面識はあったがお互いにいい印象を与えたとは言い難い関係であったし、何よりもオーレリアがヴィクトルの手を踏んだことでレイからの印象は最悪を下回っているほどだ。

だというのに贈り物をわざわざレイの家族に贈ってきた理由が分からなかった。

「そういえば、手紙があったな……」

一体何が書かれているのか、と溜め息をつきながらペーパーナイフで封を切ると、レイは内容を読んでいった。


――中尉殿へ

この度は私の巻き込まれた事件での助力を心より感謝いたします。

聞いたところ、貴方はソレイユ大佐の腹心の部下であると伺いました。

 あんな無粋極まる男の下にいてまともな感性が保てているとは思えません。

ご家族のうち、妙齢の女性にがっかりするような贈り物を渡しかねないと考え、無用かとは思いましたが心ばかりの品を贈らせていただきました。

恩に感じる必要はありません。 貴方からの恩などなんの価値もございません。

それでは、これからもますますのご活躍を祈り。

――ロスタン伯爵名代 オーレリア


「あ、の……クソ女――!」

絶叫を上げながら手紙を真っ二つに引き裂くとレイは地団駄を踏んだ。

こうして、レイ中尉の休暇は散々なうちに終わり、姉と妹からは「今度は輝石姫を招待して」という無茶に過ぎるリクエストをもらい、戦場以上に気疲れをして王都へと戻ることとなるのであった。

これにて番外編完結です。

レイ中尉、私は中々に好きなキャラクターなのでこれからの話にもちょくちょく出てくるかと思いますが、どうかよろしくお願いします。

感想、レビュー等、心からお待ちしております。

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