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輝石姫と破滅の運命  作者: 行雲流水
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番外編 レイ中尉の不幸な休暇

 久しぶりの休暇を得て、レイ・シュラント中尉は溜め息をつきながら実家のある領地へ戻る汽車に乗りこんでいた。

狭いコンパートメントに土産物がたくさんと数日間実家に泊まるのに必要な身の回りのものが少々といったところの荷物を詰め込み、窓から遠ざかっていく王都の景色を眺めていた。

レイは実家は好きだ。 父は地方貴族らしい素朴で実直な男で尊敬ができるし、そんな父と自分を含む家族を支えてくれる母の事は愛情をもって慕っている。 だが、姉と年ごろになる妹のことが少しばかり苦手だった。

思えば子供のころから姉はおしゃれが好きで、このリボンの色が嫌だのドレスの袖は膨らんでないとだめだのと喚いていたが、去年の年末に家族で過ごした時には妹までもそんな風になっていた。

年末に妹から王都の地図を土産に頼まれた時はどういう風の吹き回しかと思っていたが、地図に書かれている有名なブティックやロマンス小説に出てきた通りを指でなぞってはうっとりしている様はレイには理解ができない生き物にしか見えなかった。

いつ前線に向かわされるか、いつ戦場で死ぬか、そんな明日をも知れぬ軍人の身であれば家族をもっと大切にすべきなのはわかっているのだが、姉と妹のあの様子を前にするとどうしても、「おお我が愛すべき家族よ」といったテンションにはなれないのだ。

今回は実家に帰る前に服屋によって帽子を二人分見繕ってきたが、正直な話、レイ中尉の俸給はそんなに高くない。 軍から支給される服や靴はあれども細かなものは持ち出しとして自腹を切る必要がある。 生活に困るようなことはないが、ドレスを買って帰るような甲斐性は一介の尉官にはなかった。

去年マフラーを買ってきたときに至っては、「せっかく王都のお土産なのに季節もの……」と土産物にケチまでつけられた。

どうにも女というのは理解ができない。 大体服なんて着れればそれでいいし、機能性がともなっていれば言うことなしだろう。 場への敬意を示すために礼服という分野があることはレイ中尉も納得しているが、それにしても一日に何度もドレスを着替えるだの、昼用と夜用でドレスの形が違うだの、ファッションの分野は分かりづら過ぎた。

「大体、あの輝石姫だって訳が分からない……なんで一々、ドレスを毎回変える必要があるんだよ。 どう考えたって勿体ないだけだろう……思い出したら腹が立ってきた! なんなんだ、一度着たドレスは二度と着ないって、呪いでもかかってるのか!」

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