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輝石姫と破滅の運命  作者: 行雲流水
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ヴィクトルがそう判断した根拠のひとつは国家中枢の司法があまりにも腐敗しているということがあった。 いかに王族暗殺未遂とはいえ証拠ひとつで裁判も弁護人も手配せずに伯爵令嬢であるオーレリアが拘禁状態に長く置かれることは普通であればあり得ない。 彼らは単に王族が主張する罪を公表するための機関に成り下がっていたのだ。

 そして、ヴィクトルたちは現在、ある画家の工房に向かっていた。

その工房は錯視を利用した芸術、だまし絵を専門にしていた。 そこに実際にはないものが平面に描かれた陰影や強調された表現によってあるかのように見えるというものだ。

しかし、そこの画家をしても写真を目にすると首を傾げていた。

「絵だけで人間のように見せるということならば可能ですがね……こんな集団のいるところでひとつだけが絵、となるとうちの工房でも難しいでしょう」

そう告げて画家はペンキのしみついた手で自分の顎髭をさすっていた。

「ううん、この写真……確かに違和感はありますね。 なんだろうな、妙にこのお嬢さんだけがくっきりしてるし、それに光も変な方向から当たってるんですよ」

「変な方向とはどういうことだ」

ヴィクトルがそう尋ねると画家は王女たちの周りにいる令嬢たちの辺りをまず指で示した。

「こちらのお嬢さんたち、ほら、前髪の影やリボンの影が顔にかかってるでしょう。 てことは太陽がほとんど上の方にあって光は上の方から差し込んでるんです」

そして次に写真に写るオーレリアを指で示した。

「このお嬢さんだけ顔に影がほとんどかかってない。 これは正面側、つまりカメラの側から光が差し込んでて太陽が真上にない状態みたいなんですよ」

「太陽がふたつないとこんな写真は撮れないと?」

レイ中尉が詰め寄るようにすると画家はぱっと写真から手を離して自分の前に手のひらを出した。

「い、いえ、たとえばランプとか光源が近くにあったとか、ガラスが反射してたとかならこんな風になることは十分あり得ますよ」

「確かに殿下たちが茶会をしていた庭園ならば近くに板ガラスの温室などもあったでしょうね」

オーレリアは厚手のヴェールの下からその様子を眺めたまま静かに息をついた。 いくら自分にその日のアリバイがあり、その写真がいかにオーレリアらしくない姿であろうとも、はっきりと一緒にいる姿が映り込んでいるのならそれは「オーレリアが王女と会っていた」という証拠になるのだ。 その場にいなかったことを証明するためにはこの写真に矛盾がなくてはならない。

「……くっきりしている、と先ほど言っていたのは?」

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