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輝石姫と破滅の運命  作者: 行雲流水
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どうすれば処刑を回避できるのか。 あの肩を断ち割られた時の苦痛も顔を潰された時の激痛ももう二度と味わいたくはない。 何よりも不愉快なのはあの男に、ヴィクトル・ソレイユに情けをかけられるように殺されたことだ。 こんな直前では今更逮捕を止めることは到底できない。 ならばどうにかして処刑だけでも食い止めなくてはならない。

オーレリアはそう決意すると着込んだドレスのポケットにペーパーナイフを隠し持って、父のいる応接室へと向かった。

朝の支度と軽食を終えて時刻は六時五十分ほど。 記憶がたしかならばもうすぐ宝石商の馬車が訪れて執事が玄関に向かわされる。

そう思っていると丁度遠くから馬車の通る音が聞こえた。 ソファに腰を下ろしたままオーレリアは考えていた。

父の穏やかな笑顔を見て談笑しながら、頭の中ではどうすればヴィクトルを倒せるのかを考える。 正直な話、正面から望んだのでは意味がないし、今オーレリアの手にあるのはペーパーナイフでしかない。 東方戦線で不敗を謳われたヴィクトルを殺すなら狙うは首筋だろうが、そんな狭い場所を狙っても避けられそうだ。 第一相手は軍人なのだから女のオーレリアでは太刀打ちできるはずもなく、まして泣き落としや色仕掛けなどオーレリアの気性からして最初から選択肢に入っていなかった。

だから、オーレリアは奇襲をかけることにした。 前は自分が不意を打たれる形だったが、父にヴィクトルの意識が向いている間にペーパーナイフで刺す。 致命傷にはならないかもしれないがそうすれば少なくとも、ヴィクトルに情けをかけて殺されるなどという屈辱は回避できるはずだ。 それでも、父が処刑されることが回避できないのが口惜しくて堪らないが、今のオーレリアにはそれしか取れる方法がなかった。

そして、寸分たがわずに駆け込んでくる長靴の音にオーレリアは息を飲んだ。 執事が立ち上がるを見てからオーレリアは父の側へと近寄った。 父がオーレリアが怯えているのかと肩を抱こうとしたが、オーレリアはそれを手で制した。

そして、中へと入ってきたヴィクトルが自分と父とを見、部下に捕縛を命じるその瞬間だった。

「ヴィクトル・ソレイユゥゥゥ!」

怨嗟のこもった声と共に弾けるようにオーレリアは飛び出し、ドレスのポケットに入れていたペーパーナイフをヴィクトルの腹目掛けて突き出した。

だが、その手はヴィクトルの右手によって容易くひねりあげられ、そのままオーレリアは引き寄せられ、背後に腕をねじられた。

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