11
響く絶叫が処刑場に満ち、処刑台の上を血の海にしながらオーレリアは身をよじり悲鳴をあげていた。 もはや矜持などの意思が入り込む余地は無い。 オーレリアが人間である限り、限度を超えた苦痛は脳のあらゆる思考をせき止めて肉体を生かそうとする本能に突き動かされる。 壇上を転がるようにして崩れ落ちたオーレリアを再度助手たちが押さえ込もうとしたとき、壇上に駆け上がってくるものがいた。
「どけ!」
鋭い声が響くと同時にオーレリアの首へと鋭い一撃が振り下ろされた。 それは斧ではない、騎士の剣であった。 白い雷が落ちたかのような真っ直ぐな一撃は吸い込まれるかのようにオーレリアの首を断ち、噴き出した血と共に自分の胴体がもはや自分のものではなくなったのを見て、オーレリアの意識は完全に途絶えた。
「お嬢様、お目覚めくださいませ。 今日は支度がございますよ」
侍女頭の声がした。 彼女はオーレリアが子どもの頃から仕えてくれている使用人であり、オーレリアが直接話をする数少ない使用人でもある。 もう今となっては懐かしくさえ思える声に、彼女も死んでいたのだろうか、など考えながら目開いて、オーレリアは息を飲んだ。
天蓋付きのベッドの脇にたたずむ侍女頭、側付きの侍女たちが手に持っているドレス、そのどれもがはっきりと覚えているものだった。
一年前、幸福の絶頂からすべてを失ったあの日、オーレリアの誕生日の朝だった。 時刻は午前五時。 逮捕されたのは七時頃だったか。
「……何故?」
「何故って、お嬢様のお誕生日でございますから。 旦那様はもうお目覚めになられていますよ」
オーレリアが思わずつぶやいた言葉を侍女頭は寝ぼけたと思ったのか、穏やかな口調で告げ、顔を洗うための湯をポットから洗面器へと移していた。
オーレリアが体を起こすとすぐに侍女たちがガウンを着せて彼女が寒さを感じないようにさせ、足元にはスリッパが用意された。
そのどれもが十七歳の誕生日まで当たり前にされていたことだったが、オーレリアは自分の体の軽やかさにすら驚いていた。
独房に閉じ込められてから世話をしてくれる人間もおらず、一日にパン一つと野菜くずが入った薄い汁が一杯の食生活で弱った体はもっとやせ細っていて、動くたびに体のどこかがいたくなり、誰にも言わなかったが座り続けていたせいで太腿には床ずれさえ起きていたのだ。
時間が巻き戻ったのか? どうやって、それに何故こんな直前に戻ったのだ。 オーレリアは眉根をしかめていたが侍女頭に急かされて顔を洗い、身だしなみを整えられていった。 侍女たちに髪を結われている最中、オーレリアは必死に考えていた。