表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冷たい春

作者: 神崎 月桂

 冬が終わって、だんだんと暖かくなってきました。


 春です。春は千代ちゃんが大好きな季節です。


 けれど、千代ちゃんは困った顔をしていました。


 千代ちゃんは、冬の間に新しい友達ができました。


 雪が降った日におかあさんと作ったゆきだるまさんです。


 千代ちゃんはゆきだるまさんに大好きな春を見てもらいたいと思いました。


 けれど、ゆきだるまさんは暖かいのが苦手だからと、今は冷凍庫の中にいます。


 千代ちゃんはおかあさんに、ゆきだるまさんを冷凍庫から出しちゃだめだよと言われていました。


 どうしよう、どうしよう。千代ちゃんは考えました。


 千代ちゃんが外を見ると、桜の花びらがひらひらと落ちていました。


 それを見て千代ちゃんは思いつきました。


 千代ちゃんはお気に入りのカバンを持って、お外に出かけました。


 まず、お外に落ちていた桜の花をたくさん集めました。


 次に、公園に咲いていたタンポポをたくさん集めました。


 それから、河原に生えていたつくしもたくさん集めました。


 カバンいっぱいの春を集めた千代ちゃんは、お家に帰っておかあさんに言いました。


「おかあさん、おてがみをいれるふくろちょうだい」


 おかあさんは聞きました。


「袋だけでいいの? お手紙を書く紙はいらないの?」


 千代ちゃんは首を横に振りました。


「ゆきだるまさんに、はるをおとどけするの!」


 そう言って自慢気にカバンの中身を見せました。カバンの中は春の草花でいっぱいです。


「ゆきだるまさんは、あたたかいのがにがてだから、おてがみのふくろにいれて、ひやしておとどけするの! つめたいはるをおとどけするの!」


 それを聞いておかあさんは少し驚いて、そして笑って言いました。


「それならかわいいピンクのお花のふくろがいいかしら」


 そう言っておかあさんはピンク色の花柄の封筒を千代ちゃんにあげました。


 千代ちゃんは喜んで、鉛筆で封筒に「ゆきだるまさんへ つめたいはるのおとどけです ちよより」と覚えたてのひらがなで書きました。


 そうして拾ってきたたくさんの春を封筒の中に入れてあげて、セロハンテープで閉じました。


「おかあさん! ひやして!」


 千代ちゃんは封筒をおかあさんに渡して、冷蔵庫の中に入れてもらいました。


 千代ちゃんは冷たい春をゆきだるまさんに見せたくてたまりません。


 何度も何度も「もうひえた?」とお母さんに尋ねました。


 そうして一時間が経って、


「そろそろ冷えたんじゃないかな?」


 おかあさんがそう言って、冷蔵庫から封筒を取り出しました。


「うん、冷えてる。ほら、千代。ゆきだるまさんに届けてきてあげて」


 そう言っておかあさんは冷凍庫を開けてくれました。


 千代ちゃんは冷凍庫を覗き込みます。


 そしてそこには、小さなゆきだるまさんがいました。


「ゆきだるまさん、ゆきだるまさん、つめたいはるのおとどけです!」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ