90.リトルボア対策3
誤字報告有り難うございます。
「私の脳内検討で4つ考えたけど、どれも難しいよ。このままだといつまでたってもリトルボアに虚仮にされたままです。ネイちゃんはなんかいい方法思いついた?」
「……魔法を鍛えるしかない。物理は無理そう。数年経って体が大きくなれば可能性はある」
数年か~。遠いな~。そのころなら魔法でバンバンいけそうだよ。短いリーチ、弱い力、鈍い動き、物理はもう少しかかるね。あくまで小太刀は万が一のためのサブだもんね。
! 弓は? 弓の連射……2連射までだよね。頑張れば3連射、そこで力尽きるよね。そして魔法に移行して2回は無理だよ。もう近くに居るイメージしかない。そしていつものパターンで蹂躙されるんだよね。
はぁ~魔術大全5巻の勉強しようかな。もう中級魔法なんだよね。難しいんだよ。小学生が高校受験するみたいなもんなんだよ。因数分解ってなんだよ。知ってるけどさ。女子高生なめんな~。
そうじゃなくって魔法の比喩だった。どうしたもんかな~。初級魔法を何回も使ってればレベル上がるかな~。レベル上がった事無いけどその方向で行こうかな。
「結論が出ました。ネイちゃん。初級魔法を鍛えましょう。それが一番近道です」
「……うむ。同意する」
それからはネイちゃんと2人で初級魔法をぶっ放していましたが、これが飽きるんだよね~。おんなじことの繰り返し。子供には難しいんだよ。脳が子供なんだよ知識が女子高生でも未発達なんだよ。実感したね。
「あ~、もうやだ~。つまんないよネイちゃん。何かして遊ぼうよ」
「……かなり激しく同意」
「お団子作る? 泥団子! つるつるピカピカになるんだよ。知ってる?」
「フォ~! 知らない。聞いた事無い! それやってみたい!」
「ふふふ。普通は時間がかかるんだけど、生活魔法を使えばきっと早く出来るよ」
草原の草を毟って回収して、地面を露出させる。そこに生活魔法の清水を唱えてグチャグチャにして準備完了です。
乾いた土とグチャグチャな土を混ぜ、ちょうどよい感じにした泥を捏ねて行く。程良い泥団子になった所で丸くなるように転がす。
「それでね。こうやってまるまるコロコロするんだよ。ちょっとベタベタの時はサラサラと乾いた土をまぶしてまたまるまるコロコロして完成です!」
「フォ~。まるまるコロコロ」
「本当は、ここから何日も乾かしてカッチカチにするんだけど、生活魔法での乾燥を使います。ここが一番難しいんだよ。壊れるのはいつだって乾燥中だからね」
「ふんふん」
私は生活魔法を使って自分で作った泥団子を一気に乾燥させました。
パカッ! 当然の様に割れた泥団子が残りましたよ。
「うわ~ん。失敗した~。割れちゃったよ~」
「……フォ~」
ネイちゃんが驚きの目で私の割れた泥団子を見詰めながら自分で作った泥団子を胸に抱え込んで隠します。いくら壊れちゃったからってネイちゃんの泥団子を取り上げたりしませんよ?
「う、うぅぅ。じゃあ、ネイちゃんのもやってみよう。うふふ」
にっこり笑いながらネイちゃんの胸にある泥団子を凝視してみます。もちろん軽いジョークですよ?
「ひぃ~。……こ、これはダメ。タエはもう一度作ればいい」
うん。もちろんだよ。普通は何日もかけて作るから割れた時のショックが計り知れない位大きいんだけど魔法を使えばちょちょいのちょいだからそんなにショックじゃない。でもここはお約束だよね?
「ど~れ~、か~して~ごら~ん~。お姉さんが~乾燥して~上げよう~」
「ひぃ~。だ、だめ。だめ。タ、タエ! 自分のにして!」
「あっはっは。冗談だよ。うふふ。やらないよ~。ネイちゃんは一気に乾燥させない様に注意してね。さてもう一回作るぞ」
「……ホゥ~。タエ! いじわる!」
「あはは。ごめん、ごめん。ゆっくり乾燥させてね。コネコネまるまるコロコロ」
ネイちゃんが私に背を向けて胸に抱え込んでいた泥団子をそっと地面に降ろす。ゆっくりと魔力を流して乾燥をかけている。うーん。魔力操作上手くなって来たな~としみじみ思います。
ん? 泥団子作りに集中していたので気付くのが遅れました。魔力感知の索敵に感ありです。
「ネイちゃん! 敵」
魔力操作に集中していたネイちゃんが私の声に反応して飛び退ります。グシャ。間一髪、一角ウサギのスタンピングを回避したネイちゃんでした。
「ああ~~~。……わ、私の~~」
もちろん戦闘には犠牲はつきものです。今回犠牲になったのは程良く乾燥が進んで来たネイちゃんの泥団子。もちろん作りかけの私の泥団子も地面に落ちてひしゃげてますよ。
涙目で潰れた自分の泥団子を指さして怒りを顕わにしてるのはネイちゃんです。怒りに震える手で呪文を……唱えません。いきなり短縮詠唱でぶっ放しました。
怒りで狙いが甘いのかなかなか当たりません。火、氷、雷と次々に初級魔法を放ちます。全て短縮詠唱です。凄いです。怒れる魔法優遇種族を垣間見ました。
全て初級魔法ですけどその属性は様々です。土、水、風、光、闇と続き無属性まで唱えました。石、岩、酸、鉄、溶岩、火炎旋風と思いもしない属性に複合属性まで唱え出しました。
「ね、ネイちゃん。ちょ、ちょっと落ち着こう。ね、ね!」
フ~、フ~言いながらももう属性が思いつかなかったのか元に戻って火からリピートし始めました。とうとうその時がきました。風でしょうか。周辺に破壊の限りを尽くした魔法の嵐の中やっと命中しました。