85.ランクアップ試験2
誤字報告有り難うございます。
武器屋の女将さんに身長を測定して貰って、暫く待っているとまたもや余り素材の皮を引っ張り出して来てジョキジョキと鋏を入れ出しました。
見た目は茶色の普通の皮に見えるけどいい素材なのかな? ネイちゃんとは違う素材みたいだね。私の方がちょっと翠がかっている。
「何の皮なんです? 女将さん」
「ん? ああ、こっちの子のはワイルドファングであんたの方はランドラゴンだよ。大した違いはないんだけどランドラゴンの方がちょっと硬くて強めかね~」
なるほどー。あれかー。着心地としてはゴワゴワしてそうだけど、鞣してあるからそれ程でもないかな?
丸く切り抜いて中心を抜き取る。そこにフードを取り付けて縁取りして行く。上から被る構造だね。首元には紐が通されて内側にポケットをたくさんつけてる。
外側には左右にポケット、前は斬り込みが入っていて合わせてある。いざ戦闘になった時にポンチョを跳ね除けて小太刀が抜ける様になっているんだ。背中側は少し膨らんでいて背負い袋が背負えるようになってる。
「こんなもんでどうよ。蝋は塗って無いからな。お師匠さんに撥水加工して貰ってくれ。色も付けるんだろ?」
「「うん」」
早速ポンチョを着こんで師匠の所に向かって帰りました。工房に着いたら染色は師匠がやってくれるけど撥水は自分でやれって。錬金術大全2巻だそうです。げ~。
染色は難しく、錬金術大全5巻だそうです。やってみるかとのことでしたが、丁重にお断りしました。
もちろん色は私が紅、ネイちゃんは蒼。もう少し明るめの色が良かったけど、森じゃあ、目立つから暗めにしたんだって。でも中身は白だよ? 目立ち過ぎかな?
翌朝、新調したポンチョを着て冒険者ギルドへ向かいます。大通りをテクテク、テクテク、ネイちゃんと手を繋いで新調したポンチョを翻して歩いて行きました。
今日も小雨がパラつく中、ランクアップ試験を受けるために……なんてことは考えてません。新調したポンチョが嬉し過ぎです。スキップをしてしまいそうですよ。
「「おはようございます」」
最近は大分慣れてきました。師匠やらカンナさんと出入りするようになって有象無象の冒険者が近寄ってこなくなったのでもう恐く有りません。
まあ、天敵は余裕で近寄ってきますが朝は忙しいのか滅多に遭遇しませんからへっちゃらです。
「あら! かわいい。また新調したのね。雨だものね」
クルッと回ってみせます。もちろんネイちゃんも真似っこです。ニコニコ笑ってお見せしますよ。
「じゃあ、今日はランクアップ試験ね。試験官はこちらの冒険者さんにお願いしてあるから、ロブ、テリー、ダン、ニックよ。Eランク冒険者の皆さんです」
「よろしく。リーダーのロブだ。基本手出しはしないからね。安全が確保できない場合のみ手出しをする。その場合試験は不合格になるから注意して」
「「はーい」」
「それにしてもこんなに小さくて2人だけでいいんですか? ウェンディーさん」
「ふふ。凄腕よ~。あんた達ももさもさしてると次は立場が逆転してるかもね」
「おいおい。マジか~。ウェンディーさんも冗談キツイな~。ははは」
「あら? 信じてないの。一応2人ともスペルユーザーよ」
「え? だって弓とか剣? 持ってるし……杖も持ってるのか……こりゃ冗談じゃないな」
いざ出陣。
ネイちゃんと仲良く手を繋いでランランラン。足取りも軽く冒険者ギルドを後にしました。その後を少し距離を置いて4人の冒険者達が追ってきます。
(コソ。ネイちゃん、今日はアイテムボックスは内緒だからね)
(……うん。魔法は?)
(魔法はありかな? 師匠がいるから使えても問題なし)
コソコソと打ち合わせです。西の森手前の草原では大した素材も無いのでスルーで、そのまま森に分け入ります。ドキドキ。良く考えたら単独での西の森侵入は初めてです。
まあ、一応後に保険はいますけどね。師匠やカンナさんに較べると安心感が段違いです。もちろん悪い方に。
一応森に入ったので警戒をしだしました。ネイちゃんと交互に魔力を飛ばして周辺を警戒します。最近ではようやく慣れて来ました。調子が良ければ10メルはいけます。
普通でも5メルですから。成長しました。1メルに較べれば格段の進歩ですよね?
「ネイちゃん。右前方になんかいる。敵性体1を確認」
「……迎撃態勢に入る」
ネイちゃんが木の陰に隠れ弓を構えます。私はそのまま囮になります。この辺の連携もバッチリです。
「敵性体確認。一角ハウンドだよ。ヘッド決めてね」
「……了解」
小太刀の柄に手を添えて待ち受けます。藪から一気に私目掛けて踊りかかって来ますが、小太刀を抜くことも無く空中でネイちゃんの弓に仕留められてしまいました。
手早く解体し、素材を確保して残りは放置です。
「……あ、15夜草発見」
おお、これポーションの材料ですよ。お高いのです。微量しか使いませんが師匠が喜びます。花が咲いているものを採取していきます。え? 試験? そんなの関係ありません。今日の稼ぎですから。
こういうのをちゃんと師匠に渡すからご飯とふかふかベッドが得られるのですよ。最近私達が枕にしている事に気付かれている様子です。さり気無く横にズラされます。でも寝てしまえば師匠は豪快なので気付きません。私達も気付きませんけど。