77.付与魔術6
誤字報告有り難うございます
ネイちゃんの料理から一夜明け、撤収準備をしています。簡易テントや小物を収納して出発です。もう帰りは心配していません。何時もの通り師匠とカンナさんの無双で帰れるはずです。
「ふぅ~。今回は大物とは出くわさずに済んで良かったな~」
え? 大物? なんですかそれ?
「ん~? バーバリアンベアとかはぐれワイバーンとかも時々出る地域なんだよ。結構警戒してたんだぞ」
そんなの出る地域を連れ回してたんですか。私達が来るのなんて10年、20年の単位で先の話じゃないですか。
ちょいちょい出て来ていた魔物も結構強かったと思うんだけど、もっと上も出るのでしたか。豆の採取じゃ割に合わない訳ですね。
帰り道ではそんな話などしながらも採取&狩猟をしつつ無事街に帰還をしたのでした。当然冒険者ギルドでの清算を終え、待ってました。分け前の分配です。
「タエとネイの分は完熟サヤ3枚とオニヤンマの薄翅2対に銀貨5枚だ。どちらも上位素材だぞ」
……今回は少ないぞ? 上目遣いでかわいく師匠の事を見詰めてみます。横でネイちゃんもカンナさんを見詰めてるよ。なにげにカンナさんは即行で視線を逸らしてました。
「言っておくが、上位素材だって十分な報酬なんだぞ。今回はお前達じゃ行けない地域だし、役に立っていないだろう?」
む~。そう言われると今回は付いて行っただけだね。仕方ないか。またぼろ儲けかと思ってたのに残念。銀貨だってお小遣いには十分だしね。
納得して視線をネイちゃんに合わせて笑い合った。今回貰った素材は全部付与魔術で使いきっちゃう予定だから銀貨5枚か。3日で50000リンだと思えばぼろ儲けだもんね。
「ネイちゃん、お小遣いなにに使おうか? 楽しみだね」
「うん!」
翌日には付与魔術をしてネイちゃんは一生懸命に、私も一生懸命抵抗して付与魔術を完成させました。照準と飛斬は無事私達の装備に付与されたのでした。
「よし。お前達の装備も完成したし、あとは回数を重ねて付与魔術を自分のものにして行くぞ」
上位素材を使うとどうなるのかって一応言っておくと装備についたスキルのレベルも上がる様になるんだよ。今回の素材だとレベル3くらいまでは上がる予定です。
下位素材だとレベルそのものが上がらないか上がっても2までとかだよ。ものに付けたスキルは10までなんて上がらないんだ。最高級の素材を使ってもレベル5くらいまでだよ。
ものに定着した魔術のレベルが上がるのは凄い事なんだよ。ものが経験値を蓄えるってことなんだから。使い込めば使い込むほど強くなる武器なんだ。すごい!
「そら、来たぞ。集中しなさい」
おっと。お客さんだ。既に師匠が冒険者ギルドで格安でスキルを付与すると言う事は宣伝しているからね。素体は一般品、上位触媒と通常触媒の2通り。それぞれ値段が違うんだよ。難易度も違うからね。
弟子が付与することも公表されているから素体は一般品なんだよ。希少武器やらを持ち込まれて失敗したら弁償出来ないからね。ふふふ。そうです失敗したら素材も触媒もダメになっちゃいます。緊張する~。
「い、いらっしゃいませ~。本日はどのようなご用件ですか?」
「このミスリルの剣に飛斬を! 上位触媒で頼む」
……おい。ミスリルの剣は希少武器だよ。そんなの弁償出来るかって言うの。
「はい。一般付与依頼ですね。今、師匠の手が離せないので1年くらいお時間がかかりますがよろしいですか?」
ははは。言っちゃた。金額も言ってやろうかな? 師匠の付与はそんなに安くないぞって。
「なっ! 格安の方で頼みたいのだが」
まあ、なんて都合のいいお客さん。それなら……。
「はい。承りました。ミスリルの剣の保証はなしで成功率30%位です。30000リンとなっております。お客さん、私達頑張りますね!」
「お、お前達がやるのか! 無理に決まってるだろう。もっと上位の弟子に頼む」
「尊師の弟子は私達だけですよ? これでも初弟子なんですよ。えっへん」
「……一応聞くが付与魔術はやった事あるんだよな?」
「もちろんです。自分達の装備は全部やりました。失敗しても師匠が変わりを用意してくれるので安心でした」
「……くっ。考えさせえくれ。虎の子なんだ。すまん」
そうだろうとも。ミスリルの剣なんて初めてみたもん。そう言って最初のお客さんは帰って行きました。
無茶を言うお客さんは最初の一人だけだったよ。その後は一般品でも最高水準の鋼製の武器でした。これって50000リンとかするやつだ~。
「鋼の剣ですね。う、承りました。触媒はどちらをお望みですか?」
「そうだな。今回2本用意出来たんだ。両方頼む。どちらかが成功してくれればいいからな。触媒でも成功率は変わるんだろう?」
「はい。やっぱり上位触媒は扱いが難しいです。こちらにどうぞ。付与過程をご覧になりますよね?」
「そうだな。俺達も初めての経験だからな。見学させてもらえるか?」
お客さんの前で付与するのは緊張します。ネイちゃんと1本ずつそれぞれ付与しました。結果は! ジャカジャカジャン。成功です。2人とも成功しちゃいました。
お客さんは喜んでいましたよ。前衛2人で使うんだって。良かったね。その後成功したり、失敗したりを繰り返して今回のキャンペーンは終了しました。
結果の収支は、-78000リンでした~。自腹だよ。解せぬ。