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76.付与魔術5

ブクマ・評価・感想・誤字報告有り難うございます。

 数回に渡って豆の回収を敢行していますが、依頼は結構な要求みたいです。仕方がないのでそろそろサヤの回収をしながらと言う事になりました。


「サヤを回収する。自分達の装備の素材だ。タエ、ネイやってみなさい」


 ……どうもおかしい。なぜ私達にやらせようとする? さっきの件が有るので疑り深くなってるだけかな~。まあ、やるんだけどさ。


 そろりそろりと近づいて、なにも起こらない。まあ、鉄砲豆は飛んできてるけどもう気にならないよ。先端が割れて豆を吐き出しつくしたサヤの根元にナイフを入れ、切り落とす。


 ドンと音がなって豆が私の腹を打ちつける。なっ! 結構な衝撃。ドン。あ、隣でネイちゃんも食らったよ。後に向かてひっくり返る。またも大爆笑。やられた。まだ洗礼は終わってなかったらしい。


「痛った~。もう。師匠もカンナさんもいい加減にして下さい」


「だ、だって。きゃはは。洗礼だもん。し、仕方ないじゃんよ。ぐふ」


「ああ、すまん。くふふ。見事だったぞ。綺麗にひっくり返ったな。くふふはははっは」


 これ結構悔しいです。見事に引っかかるのもそうですが、自動反射的な植物にやられるんですよ。


「ああ、おかしかった。最後っ屁ならぬ最後豆だ。そこは必ずレッドだから回収するように。さあ、カンナ、私達もやるぞ」


 師匠達もお腹で受け止めてレッドビーンズを回収しながらサヤを回収します。ひっくり返らない様にちゃんと踏ん張るんだよ。


 レッドビーンズを飛ばして来たサヤは緑色じゃなくて赤紫色でした。こっちの方がよい素材だそうです。もちろんこっちの素材を使って付与するよ。師匠も否とは言うまい。


 そうそう、この森、風穴の森って書くんだけど、私は『ふうけつ』と読んでいたんだ。本当は『かざあな』って読むそうです。全身穴だらけになるからだって。


 この風穴の森に多少踏み込んで豆とサヤを回収しまくっています。最近ここに来る冒険者が少ないのか豆が流通してないそうです。


 1回は撃たれ過ぎて豆で溺れそうになっちゃったよ。森に踏み込んだら四方八方から撃たれまくりで豆が凄い勢いで溜まっちゃってさ。


 レッドもそこそこ混じってるから痛いのなんの。痣になるほどじゃないんだけど、それもこの柔らかシールドのお陰なんだけどね。


 柔らかシールドがあればここはぼろ儲けなんじゃないかな。ここまで来れればだけどね。中級以上の冒険者だとそれほどでもないのかな?


 結構な量の豆を回収したのでそろそろ終わりです。まだまだ豆の森は広がっていますが、キリがないからね。


 風穴の森をあとにして、またも森で1泊です。帰りは若干東寄りに回って素材を採取しながら帰ります。マジックバッグを借りて来ているのでいっぱいまで回収しないと勿体ないですもんね。


 この辺まで来るにはCランク以上だそうです。さらに奥の山の裾とか山自体まで行くにはもっと高ランクじゃないと危ないそうです。


「師匠達でも危ないんですか?」


「そうだな。裾までは行った事は有るが、山は難しいかもな。ワイバーンの巣とかもあるらしいからな」


 おお、捕まえてワイバーンライダーとかカッコいいかも。赤い個体とかの上位種が良いです。無理ですけど。


 今日の夕飯はネイちゃんが作るようです。腕捲りして気合十分です。なにを作るのかと見ていますけど、大き目の鍋にバータを引いてぶつ切りにしたお肉を入れながら炒めています。


 そこに野菜もぶつ切りでどんどん投入して行きます。程良く炒めたら、カンナさんが持ち込んだ赤ワインを投入して水も入れる様です。


 そのままグツグツ煮込んだら終わりらしいですけど、こっそり灰汁だけは取り除いてしまいましょう。味付けは塩胡椒のみ。焦げ付かないようネイちゃんはずーっとかき回しています。


 師匠とカンナさんが微妙な顔をして見ていますけど、そこそこ美味しいと思いますよ。たぶん。結構な時間煮込み続けましたが、ごった煮の完成です。


 パンとごった煮を全員に配膳して頂きます。


「「……」」


 私もネイちゃんもじーっと2人を見守ります。さあ、ネイちゃん渾身の作です。食べてみて下さい。さあ、さあ。


 2人の沈黙が長いです。どちらから食べるか牽制している様ですが、最終的にどうせ食べるのです。サッサと覚悟を決めればいいのに。


「さあ、カンナ。ネイが作ってくれたんだ。食べてみろ」


「師匠のお前がまず食べて感想を言ってやらなきゃいけないと思うぞ」


 くくく。カンナさんの切り返しに追い詰められましたね。師匠。そうですよね。師匠がいかないと弟子が折角作ったのですから。大丈夫ですよ。見た目はあれですが、美味しいはずです。


 赤い汁に肉やら野菜の塊が浮いているのは、食欲を微妙に削ぎますがちゃんと煮込んでいますから喰えますよ。


 覚悟を決めた師匠がスプーンを持ちます。そしてゆっくりと赤い煮汁を掬い取り、口に運んでいき、パクリ。


「おお、普通だ。変な味もしない。ちょっとワインが強いかなと言うくらいだ」


「へぇ~。どれ。じゃあ、あたしも。……うん。食える。見た目と違って、全然いける」


 結構酷い感想でしたが、ネイちゃんは満足なようです。良かった灰汁を取っておいて。なら私もと一口食べてみます。


「うん。ネイちゃんも上手だね。おいしいよ。この料理はどこで覚えたのかな?」


「……つかまった後、他につかまった人、やってた」


 ……あ、これ聞いちゃいけないやつだった。まずい、ご、誤魔化さねば。え~と、この世界あんまり料理が美味しくない中でこの出来なら料理上手の部類だから褒め殺す?


「おいしいね。良く出来たね。上手だよ。師匠もカンナさんも出来ないんだからもうお嫁さんになれるよ」


 にっこりとネイちゃんは笑ってくれている。うん、あんまり気にしてない様だよ。師匠達から『くっ』とか『んぐ』とか聞こえたけどまあ、大丈夫だろう。2日目の野営はこうして暮れていった。

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