69.ご注文
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師匠の元に弟子入りしてから毎日忙しい日々を過ごしています。リトルボアのリベンジか錬金術か魔法かどれを優先するべきか悩んでいる今日この頃です。
一応教官にリトルボア対策を相談に行ったんだけど、教官曰くリトルボアは真っ直ぐにしか突進して来ないので慌てずにちゃんと避ける事。すれ違いざまに攻撃をして1体ずつ確実に仕留めて数を減らして行くこと。
だそうです。じゃあ、ど突き回されてからの対処は? と聞いたところ沈黙が返ってきました。きっとど突き回された事が無いんだね。
避けられないし、すれ違いざまに空ぶるしその対処法に異議ありです。ど突き回され始めると立つこともままならないんだよ。
そんなある日、師匠の所に魔道具製作の注文が入りました。簡単な魔道具ですが数が多いです。普段なら受けないか知人に回すそうですが、そうです。弟子の練習用です。受けちゃいました。
発光の魔道具です。光る部分だけですね。その後ランタンとかスタンドとか色々なものに加工されます。建築屋さんの在庫が尽きそうなんだとかで100個程依頼が有りました。
「ではおさらいだ。発光器に必要な素材はなんだ?」
「光虫です」
「……発光石」
おおっと。意見が分かれたよ。どっちが合ってるんだ!
「どちらも正解だ。では今ならどちらを使うべきだ?」
「「……」」
知らないよ~。どっちでもいいんじゃないかな。使いやすい方でとは言えないので沈黙が正解でしょう。
「……では素材の特徴を考えてみようか。光虫は明るい強い光を短時間で放つ。一方発光石は淡い光を比較的長い間発する。どちらも処理である程度の時間・強さに調整できるが色合いだけは変えられないんだ」
へぇ~。素材で違いが有るんだ。ん? 値段も違うのかな? どこで獲れるんだっけ? そうだどっちも洞窟の様な暗い場所だ。
「なので受注の際にどちらか聞いておく必要がある。今回の場合50個ずつにしてほしいそうだ。受注の際にちゃんと確認するんだぞ」
「「は~い」」
「採取・捕獲場所は北の洞窟が良いだろう。質の良いものが獲れる。北はまだお前達では難しいから私も付いて行く。カンナ行くぞ」
うん。カンナさんはもう居候状態で居着いちゃいました。一応仕事もしてるし、家賃や食費なんかも入れてくれるし食材も獲って来てくれますし、遊んでくれます。意外に便利?
「……あいよ」
北に行く前にもちろん冒険者ギルドに寄ります。行くからにはいくつか依頼を熟す方が効率的ですからね。ついでに食材もゲットしてきます。
「あら。また来たの。最近頑張るじゃない。やっぱお弟子ちゃん達のお陰かしら。いい傾向よね」
「……ウェンディー。北の洞窟に採取に行く。適当な依頼をくれ。マジックバッグも借りて行く。食肉も獲る予定だ。今回は泊りになる可能性もある」
ん? 泊り? 野営するの? なんで? ん~、数を揃えるためかな? 1回で必ず全部とれるとは限らないもんね。
「はいはい。洞窟だと……そうねぇ~。ああ、ミミズ。ミミズ獲って来て。良かった良かった。誰も行ってくれないから困ってたのよ」
「え~、あたしは嫌だっていってるじゃんか~。あいつら気持ち悪いんだって」
「問題ない。凍らせてしまえばいい」
あとは鉱石なんかも頼まれました。一旦戻ってマジックバッグに野営道具などを入れて出発です。今回は野営まで視野に入れてなので余裕があります。
なので道すがら採取や狩りも行いながら目的地に向かいます。問題は効果が無くても魔法を撃たされることかな。実践訓練ですね。
効かないと分かっていても悔しいものが有ります。私のファイヤーアローを食らっても平然としているビッグホーンとか。ビッグホーンはヤギの魔獣です。その名の通り大きな角が特徴で角が高く売れます。
時折外しますが……すいません。良く外れますが、時折くいっと曲がって当たることもある不思議。ネイちゃんが喜んでいるのでオーケーです。
そんな事をしながら、昼ごろには洞窟に到着しました。うん。何の変哲もない鍾乳洞ですね。洞窟の前でお昼ご飯にします。今回は荷物になるので魔道コンロなどは持ち込んでません。
普通に焚火で食事を作ります。生活魔法が大活躍です。パン以外は狩猟&採取です。お肉は道すがら狩りましたし、野草や山菜も採取してきました。
簡単な食事を済ませていざ突入です。先頭がカンナさん、索敵&壁でその後ろに私とネイちゃん最後尾が師匠です。私とネイちゃんは明りの魔法を使ってカンナさんの先を照らします。
光源は必ず複数用意するのが基本です。もちろん師匠も明かりの魔法を使っています。カンナさんはランタンを腰にぶら下げています。
《照らし出せ、未知なる道を! ライト!》
持続時間が短いのは魔力制御が甘いせいだそうです。くっ。意外とキツイです。ラノベなんかでよくこんなの発光させ続けられますよね。フォトンを生み出し続けるんですよ? 魔力を食い続けます。
チラッと後ろを振り返れば、涼しい顔で師匠は発光させ続けてます。まだ1回しか唱えて無いですよね? どう言う魔力制御してるんですか!
暫く無言で進んでいると天井から光が差し込む場所に出ました。
「よし。ここに罠を仕掛けるぞ。タエ、やってみなさい」
光虫捕獲用の罠です。光虫は夜になると月光の元に集まってきますので、囮の光と籠を設置すれば自然と捕獲できます。
折りたたみ式の籠を展開して、中心に月光を模した人工魔石を置きます。人工魔石にはライトの呪文が刻んであるので魔力が尽きるまで発光し続けます。
あれ? これでよくないかな? なんて思います。実はこれでもいいんだよね。ただお高いだけです。錬金術師でも無ければこんな使い方はしません。
光虫が集まりそうな所に罠を仕掛けて行き、奥に進んで行きます。いくつか別れ道もありましたが、大きな本道を進んで行きます。
そして到着したのが、発光石の採掘場所です。