62.お試し
「タエとネイも戻って来たからご飯にするか。ジュリのとこで良いだろ?」
「んあ? うん。最近あの姉妹の所の飯は美味いからな。いいぞ」
やっぱりジュリエッタさんの所に行くようです。他の所じゃ味が薄いですもんね。良い選択です。もちろん否やは有りませんとも。
またまた常連さんを押しのけて、席を確保です。結構気不味いですけど、直ぐに食べられるので気にしちゃダメです。
「おや、今日もお揃いかい? なににする? 昨日大量に肉が入荷したから選り取り見取りだよ。どうせあんたらだろ?」
「ああ、タエとネイの訓練がてら行って来たんだ」
「今日もカンナさんと行くんです。師匠もどうですか?」
「ん? うん、今日もか。装備の試しもあるから行ってみるか」
「だから痣だらけなのかい? スパルタ過ぎだろう。チビちゃん達は新装備だね。カッコいいよ」
えへへ。女将さんに褒められました。ネイちゃんも椅子に座りながら足をブランブランさせています。満更でもないのでしょう。
「そうだな~、ステーキ3種盛りにしようかな~。3人前で」
おおーい。カンナさんが凄いの頼みました。3種盛りです。牛猪鳥ですよ。美味しそうです。色々食べられます。決まりでしょう。
「はーい、はい。私もそれにします。子供サイズで」
「……ネイちゃんも」
師匠が苦笑しながらも全員同じものを頼みました。もちろん白いパンです。スープはあっさり目の野菜ゴロゴロスープを頼みました。これも一汁一菜でしょうか?
暫く待っていると来ました来ました。お肉は3種とも違う味付けです。な! カンナさんのはポンド肉が来ました。全部ポンドです。まとめて3人前来ました。
「おお~。ジュリー。分かってんじゃんよ~」
私達のはやや小ぶりですけど1種200グラです。全部で600です。結構多いですよね? 師匠のは大人サイズですから1つ300グラ? 400グラはありそうかな?
この世界の人は大食いです。と思って周りを見ましたが違いました。みんなびっくりしてます。他の人たちは私達と同じ位でした。するとこれが大人サイズ?
でもペロッと食べちゃうんですけどね。今日は落ち着いてナイフとフォークを使ってゆっくり食べますよ。はぐはぐ、美味いよ。ナイフとか面倒だよ。はぐはぐ。
結局がつがつ食べちゃいました。だって師匠達が早いんだもん。師匠は一応ナイフ使ってるんだけど一切れがデカイ。100グラくらいが一口ですよ。
「ジュリエッタさん。今度パンも作ってみようかなって思うんですけど、どうします? お母さん秘伝です」
「ほう。で、何が違うんだい?」
「バータを練り込んで、層になってるんですよ。美味しいですよ。もっちりじゃ無くてサクサクですよ」
「うんうん。その話乗った! いつ作る? うちの竈でやるかい? サリーの所で今夜だね。ちょいと抜け出して行くから。マリーも呼ぶけどいいね?」
「はい。お母さんの秘伝が食べられるようになったら素敵です」
「おいおい。ちょっと待ちなさい。私も食べた事無いぞ」
「あたしも今夜行くよ~。土産は何がよい~?」
「チズー、チズー乗せましょう。少し焙ってとろっと」
「――っ! それは私が持って行くから、カンナは飲み物持っといで」
「オッケー。見繕って行くよ~」
「よかろう。肉は今から狩りに行く。なにを合わせる?」
「そうさね。珍しいとこ行ってみようか? 西の森をちょいっと奥に行くとドラモドキ居るだろ? あれなんかどうだい? 最近入荷してないから久しぶりに行こうじゃないか」
「よし。それで行こう。味はドラゴンに近いから旨いぞ」
なんかテーブルの中央に顔を寄せ合って悪だくみしてる様です。ドラモドキってなんでしょう? ドラゴンじゃないのでしょうけど不穏な響きです。
えーと。私達Fランクですよ? まだ早そうな気がしますけど、大丈夫でしょうか。良く考えたら西の奥って言ってますよね?
新装備の試しに行くんですよね? がっつり戦闘に行くんじゃないですよ? 分かってるかな~師匠達。
悪だくみの間も食事は続けています。美味しいからね。やっぱ黒パンじゃないから美味しいよ。スープに浸けて食べるのも良いよね。パンで肉汁拭きながら食べるのも止められません。
食後のお茶もそこそこに冒険者ギルドにやって来ました。ズカズカと受付に向かいますよ。昨日と同じです。
「ウェンディー、マジックバッグ借りるぞ」
「あら? あんた達が2日続けて仕事するの? 珍しいじゃない。どう言う風の吹き回しかしら」
「いいから、それと適当な依頼も頼む。ドラモドキの所まで行って来る」
「え? お弟子ちゃん達も連れて行くのよね? 大丈夫なの?」
「ああ、心配無い。私が付いてる。カンナが斃すだろうからな。それより急いでくれ。ちょっと遠いからな」
んわぁ! 天敵も近寄ってきました。でも今日は師匠もカンナさんもいるので大丈夫です。一応カンナさんの陰に隠れますけど。
「おお、サリー、カンナ。昨日はご苦労だったな。久しぶりに肉の供給が落ち着いたぞ。今日も行ってくれるのか?」
「ええ、ギルマス。モドキでも狩ってくるつもりですよ」
「いいな。ここの所モドキも入荷してないから、この感じでサッサとランクを上げちまってくれよ」
「いやですよ。余計な仕事が来るじゃないですか。錬金術師の方が本業なんですから」
「チッ! まったく。良い腕してんだから頼むぜ」
「はいはい。また今度。ウェンディー出来たか? カンナ行くぞ。今日はモドキパーティーだ」