55.お師匠様7
最近投稿時間がズレて申し訳ありません。
「まったく油断も隙も無いな。お前達ものこのこ付いて行っちゃいかん」
「え~、でも師匠の顔を立てて行ったんですよ?」
「まあ、空気を読んで行ってくれた事はうれしいが、もっと酷い事をされてたかもしれないんだぞ。例えば拷問して聞き出すとか、薬漬けにして聞き出すとかそんな事されたら嫌だろう?」
「いやですけど、ずっと家の中に閉じこもっても居られませんよ?」
「そうだな。早く実力を付けて何でも跳ね返せるようにしないとな」
「は~い」
「よし。この件はお終いだ。参事会も叩いておいたからもう大丈夫だろう。さて、今日は普通のお仕事だ。稼がないとご飯が食べられないからな」
それは大変です。ここにくるきっかけもご飯問題でした。金欠は苦しいですもんね。
「ポーションを作る。お前達にはまだ教えて無いから素材の加工までを手伝ってもらうぞ」
とうとうポーション作りですか。うん。そこが一番の稼ぎどころですもんね。いっぱい作りましょう。当然ズキ草の粉末が必要です。(特級ですけど)蒸留水と魔石の粉末から抽出した反応薬もですね。そうそう、15夜草の花のしずくもです。
今日は上級ポーションまでなので簡単です。下級ポーションが200本、低級ポーション100本、標準ポーション100本、中級ポーション10本です。
下級ポーションは私達の練習用で勝手に出来るのでいいでしょう。要は失敗作です。失敗作ですけど多少は効能が有るものですよ? 本当のクズポーションは捨てますから。
低級ポーションは標準ポーションを薄めて作ります。そして一人前の錬金術師が作るのが標準ポーションです。これが作れないと一人前になれません。登竜門的な製品ですね。
中級ポーションからはコツが要ります。各種配合や粒度、品質も影響してきます。それら全体を加味してバランスよく作らないといけません。
上級ポーション、高級ポーション、最高級ポーション、特級ポーションとなるに従ってどんどんシビアになります。今回は中級までですから特級の粉末を使えば問題ないでしょう。
井戸から水を汲んで蒸留器に入れます。魔力を注ぐと蒸留が始まるのでそのまま魔力を注ぎ続けましょう。これはネイちゃんにお願いしてます。
次は魔石の粉末を蒸留水で煮詰めます。撹拌棒に魔力を通しながらゆっくりかき回します。徐々に魔石の粉末が魔力に代わって蒸留水に溶け込んで行きます。完全に溶け込むと反応薬の完成です。
ここからは師匠の出番です。蒸留水を魔法で覆いながらズキ草の粉末を投入します。粉末が溶けないうちに反応薬を垂らして全体を魔力でなじませていきます。
そのまま魔力を込めて徐々に全体を一つにしていき、最後に15夜草の花の雫を1滴入れるとピカッとひかって完成です。
「……高級ポーションになってしまったな」
「「……」」
配合が良過ぎたのでしょう。もう少し適当にやらないと中級ポーションは難しいでしょう。まさか中級ポーションで苦労する事になるとは!
ズキ草の粉末を市販品に変えたらあっさり解決しました。ちょっと焦りましたよ。もちろん私とネイちゃんも練習で作ってみましたよ。下級ポーションを量産しましたとも。
魔力を込めながら一つにするのが難しいのです。焦ると器具を取り落としたりして粉末が無くなっちゃったりします。そうするとクズポーションになるので捨てるしか有りません。
低級ポーション恐るべし。なかなか出来ませんでした。標準? ははは、どうやったらできるのでしょう。特級の粉末をこっそり使ってやってみましたがクズポーションになりました。クスン。
「ああ、すまん。杖の使い方を教えていなかったな。それだと難易度が上がってしまうんだ。私は中級を作るために敢えて杖を使わなかったんだ」
オーマイゴッド。ガッデム。もっと早く気付いて下さい師匠。苦労しちゃいましたよ。魔力の制御が甘いんだから。道理で難しいと思いましたよ。
「使い方はそう難しくない。手でやっていたのを杖を使って魔力を注ぐだけだ。魔力の制御が楽になるぞ」
どれ特級使って見ちゃおうかな。ふふーん。おお大分楽になりましたよ。これなら……ヤバイ。杖が金と銀、さらに黒い光の乱舞を奏で始めちゃった。ああ、頭の中で助言ちゃん達が舞い踊りだした~。
これ気まぐれに神様が手伝ってる感じ? もう私、何もしてません。勝手に進行して行きます。涙目で師匠を振り返ると唖然と見つめていました。
……出来ちゃいました。特級ポーション。
(解。……特級。……ポーション。……完了。)
(告。……特級。……ポーション。……完了。)
(宣。……特級。……ポーション。……完了。)
得意げに助言ちゃん達が告げてます。
「し、師匠。杖が勝手にやりました。気まぐれ神様発動しちゃいましたよ」
「ああ、見てたから分かるぞ。杖が勝手に動いてたな。タエ、特級粉末使ったな?」
「てへ。どうせ失敗するから標準ポーションくらい作れるかなーって」
何事も無いかのようにネイちゃんが杖を使って標準ポーションを量産していました。
「仕方ない。死蔵するぞ。その内私が作れるようになればいいだけだ。一応聞くがもう1度作れたりしないよな?」
「さあ? なにせ気まぐれですから神様は」
杖もまた変化したようです。金と銀の紋様が絡み合った模様になりそこを黒い筋が走っています。カッコいいけど、これ目立ち過ぎじゃないかな。