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54.参事会

 師匠がお出かけした途端、錬金術師ギルドの参事会に呼び出されました。錬金術師じゃないので行く必要はないかなとも思いましたが、師匠の顔を立てて行く事にしました。


「お前達がサリーの弟子だな?」


 錬金術師ギルドに着くと直ぐに会議室の様な所に連れていかれてぐるりと周囲を参事会のメンバーに囲まれました。これは……随分威圧的です。


 そして横柄な態度で尊師であるサリー師匠を呼び捨てにして私達に確認してきました。まあ、大人しくしておきますけどムカっとしましたよ。


「はい。そうです」


「サリーに何を伝えたか話してみろ」


「? よく分かりません」


「分からない事が有るか! 特級の秘術のことだ」


 案の定です。私達から聞き出そうとしているのでしょう。そんなこと教える訳ないじゃないですか。馬鹿なのでしょうか?


「そんなこと知ってたら自分で作ってますよ」


「ではなんでサリーが作れたんだ!」


「だから知らないですよ。困った人ですね」


「なんだと! きさま、私を誰だと思っているんだ」


「だから知らないですって。子供を恫喝してるおじさんですか?」


「――っ!」


「まあ、まあ参事。落ち着いて下さい。子供相手です。最初から教えてくれるかな? サリー尊師とはどこで知り合ったんだい?」


「薬師ギルドです」


 まあ、最初の出会いから根掘り葉掘り色々聞いてきます。まあ、正直に答えますけど肝心な事は言いませんよ。


「そうするとサレナ導師に教わった軟膏を売ろうとしたんだね。その保証をしてくれたのがサリー尊師と。サレナ導師の妹弟子だったからそのまま弟子入りしたと言う事なんだね?」


「え~と。もう良いですか? さっきから同じことの繰り返しで疲れてきました。喉も乾きました。立っているので足も疲れてきました。もう嫌です」


「ああ、ごめんよ。じゃあ、そこの椅子に座って。今お茶を持って来て貰うからちょっと待ってね」


 ふぅ~。この人も子供だと思って嘗めてる様です。そろそろ終わりにしたいところですね。まあ、お茶とお茶菓子は頂きますが。


「じゃあ、もう一度いいかい? サリー尊師の家に着いてからはどうだったんだっけ?」


「そんな細かい事まで覚えてません。喉渇きました。お茶下さい。まだですか」


 やっとお茶が来ました。ぷはぁ~。もう一杯。


「おかわり~。凄く喉渇いたよ。ね、ネイちゃん」


 コクコクと頷いてくれます。まあ、参事の方々の顔が引きつっていますが気にしません。また係の人が戻って来てお茶を淹れて下さいました。


「も、もう良いかな? それで」


「お腹すきました。もうご飯の時間なので帰ります」


「ま、まだ。そうだ。食べ物も用意してあるんだよ。ちょっと待ってね」


 おお、結構頑張ります。ならここでもう少し我儘を言ってみましょう。


「ジュリエッタさんかマリーさんのお店の御飯が良いです。あそこが行きつけの店です。他の物じゃ食べれません」


 頬の辺りの筋肉がひくひくしてますがまだ堪えた様です。頑張りますね。暫く待つとジュリエッタさんが出前に来てくれました。くっくっく。計算通りです。


「はーい。お待ちどう様~。特製お昼セット13人前です。1食1000リンになります。ん? おや? 嬢ちゃんたちじゃないか。なんだい、どうしてこんな所に居るんだい? サリーは知っているのかい?」


「いいえ。師匠はお出かけ中なので知りません。急に呼び出されたのです」


「おや~? あれ~、参事会の方々、良いのかな? こんなことしちゃって。サリー怒らないかな~」


「ふん。宿屋の女将風情が私達に逆らうのか! 出前を置いてさっさと帰るんだな」


「あらあら、これでも婦人会の副会長なんだけど、大きく出たね~。全面対決ってことで良いのかい? 婦人会を敵に回そうってか、錬金術師ギルドは? ハン! 上等だよ。相手になってやろうじゃないか。商業ギルド、冒険者ギルドにも話は通させて貰うよ」


「い、いや待て。そう言うつもりではないんだ。何もギルド同士の抗争にまで発展させなくてもいいじゃないか。こちらの失言は訂正してお詫びする」


「詫びれば済むってもんじゃないだろう。婦人会の面子の問題だからね。きっちりと落し前は着けて貰うよ。サッサとお代を払いな。そうそう、参事会の皆さんの奥方も会員だからね」


 その時です。バンと扉が開かれました。ここで師匠の登場です。ちょっとワクワクしてきました。


「参事の方々、私の弟子を呼び出して何のつもりですか? 返答如何によっては王都本部へも報告させて貰いますよ」


「あ、い、いや。ただ親睦を深めようと思っただけじゃよ。な。皆の衆」


「ほう。私抜きで親睦をねぇ~。どうも今日の呼び出しはおかしいと思って引き返して来たのですが偶然ですかな?」


「そちらの件はわしらは知らん。無関係じゃ。おぬしもおれば一緒に招待したとも」


 我関せず、ネイちゃんとお昼ごはんを食べていましたが、ここで爆弾発言をぶっ込んでみましょう。


「師匠。なんか色々聞かれました。あのおじさんはサリーとか呼び捨てでしたよ」


 師匠にチクったので、もう後は御飯を食べるだけです。この後ジュリエッタさんと師匠に散々文句を言われてけちょんけちょんでした。


 結局、街中のギルドにお触れを回されて組合での話し合いにまで発展したそうです。婦人会が音頭をとって服飾ギルド、宿屋組合と商業ギルド、それに冒険者ギルド他多数のギルドが今回の横暴に対して一致団結したみたいです。今までの鬱憤も溜っていたようです。


 結果、錬金術師ギルドのギルド長、副ギルド長、参事の半数が更迭されてしまいました。一応更迭されましたが、資格剥奪まではされていない模様です。

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[一言] 惨事会だ……(震え)
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