43.薬師ギルド
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「さて困りましたね。物は良いように見受けられますが如何せん信用が有りません。物が薬なだけに信用がない物を買い取ってお客様に売る訳にもいかないのです」
「そ、そこをなんとか」
あれ~、村では普通に売ってたのに。……そかそか、おばぁの信用で売ってたのか。理解しました。
「お値段は安くなりますが、買い取る方法も無くは有りません。信用の有る薬師に保証して貰えばよろしい。もちろんお代をその薬師に支払う必要が有りますけどどういたしますか?」
「……どのくらいのお代を支払えばいいのでしょうか?」
「およそ半分です。つまり折半しなければいけないでしょう。それだけ信用は大事と言う事です」
半分! 50%! ちくせう。そんなに取るんですか! でもお金が必要です。ご飯のために。
「それでお願いします」
ガックリと肩を落としてそう言うしか仕方が有りませんでした。カラコロンと丁度そこに妙齢の女性が入って来ました。
「ああ、ちょうどよい所に。ギルマス」
「ん? どうした? 問題でも有ったか?」
「こちらのお嬢さん、サレナ導師のお弟子さんらしいのですが、お亡くなりになって卒業証明も無いままこちらを売りたいと」
妙齢の女性、もといギルマスさんでした。私達が作った軟膏をひょいっと手にとって見詰めています。
「うん。見習いが作ったとは思えん出来じゃないか。私が保証してやる。高品質で買い取ってやりなさい」
「よろしいのですか? ギルマス」
「ああ、いいよ。さてお嬢ちゃん。私は錬金術師のサリーだよ。サレナ導師の一番下の妹弟子だ。つまりお前さん達は私の姪弟子になるね」
「あわわ。初めまして。お、おば師匠?」
何と、私の頭をがっしりと掴んでギリギリと締めつけてきます。いたたたぁ~~。
「……次に言ったらその短い人生が終わると思いな。お姉さんだ!」
「あいたたた~。お、おねえさん師匠~。放して~」
じたばたと暴れる私をようよう放してくれました。おお~、頭が潰れるかと思いました。ネイちゃんの驚愕の視線を感じていますがそれどころでは有りません。
「ふん。付いてきなさい。サレナ導師には世話になった。仕方ない面倒を見ようじゃないか」
そうして連れ込まれたのはギルマスの部屋です。錬金術師が薬師ギルドのギルマスとはこれ如何に! と思わなくも有りませんが、余計な事はもちろん言いません。私は学習する生き物です。
「さて、そこに座りなさい。話を聞かせて貰おうか?」
そしてこれまでの事を話しました。今は冒険者をしている事までです。
「そうか。去年の流行り病か。それで冒険者だけじゃ食えないから薬を作って売りに来たと言う訳だな?」
「はい」
「習ったのは湿布薬までだな? まだ本当の見習いじゃないか。どうしたものか。……仕方ないか。これも縁か。よし。なら粉末を持っているな? 見せてみろ。次の段階に進めるか判断する」
ぎっく~。あれ~? どうしましょう。あれを見せても大丈夫かな? ああ~、なんか凄く睨んでますぅ~。出さないと言う選択肢が消えて行く~。
仕方なくおずおずとカバンから出しました。特級粉末です。
「!!! な! なんだと!? お、お前達で作ったのか? こ、これ特級じゃないか!」
またもやがっしりと私とネイちゃんの頭を掴んでギリギリと締めつけています。今度はネイちゃんも逃げられませんでした。
「があぁぁ~、は、放して~、お姉さん師匠~、割れます割れます、頭が~」
ネイちゃんも無言でじたばたしていますが、この万力で締め付ける様な力から逃れるすべが有りませんでした。
ようやく放して貰いましたが、私もネイちゃんも床をのた打ち回っておりますよ。何とか頭を割られずに済みましたが、ドゥードゥーにつつき回された方がまだましです。
「……さあ、聞こうか。どうやって作った? サレナ導師でも作れないはずだぞ。もちろん私にも作れない」
「えへへ。あ、あのですね? 偶然です。たまたま出来ちゃいまして……」
ああ、凄い目つきです。このままではまたアイアンクローが来そうです。でもこれバラしてもいいのか分かりません。
「……ふぅ~。そうそうバラせないか。よし。今日からお前達は私の弟子だ。錬金術師見習いとする。そしてその秘伝は一門だけの秘事とするから心配するな。これでいいだろ?」
「え~と。私達冒険者ですよ?」
「2足のわらじは私も一緒だ。Cランクの冒険者資格も持っている。問題ない」
「……では師匠改めてよろしくお願いします。 本当に偶然なんです。これ根っこごと粉末にしただけなんです」
「馬鹿を言うな。根っ子は薬効成分が薄くて薬にはならん。そんなことも教わっていないのか!」
「いえ、教わりました。けど、葉っぱと混ぜると劇的に上がるんです」
「……本当なのか? たったそれだけで?」
「はい。でも粒度とか色々均質に揃えないと特級まではいきません。最高品質とか止まりだったりもします。不純物を取り除くのも難しいですから魔法を使ってます」
「よかろう。物は試しだ。作ってみようじゃないか」
そう言っていつもの西の草原に連れて行かれました。せっせとまたズキ草を採取します。根っこごとです。お姉さん師匠は監視しているだけです。と、当然です。何も思う所は有りません。頭もズキズキしてません。
以下の様な物も書いています。
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