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42.金欠

誤字脱字報告有り難うございます。

ブクマ・評価も有り難うございます。

 講習もまだ半ばなのにとうとうこの日がやってきてしまいました。


「ネイちゃん。重大な発表が有ります。とうとうお金が無くなってしまいました」


 がーん。と言う感じでネイちゃんが固まりました。宿屋のお金はまとめて払ってあるのであと10日は大丈夫です。問題は今日からの食事です。


「……お肉なし?」


「はい。それどころか食事もなしです」


 またも予想の斜め上をいったのでしょうか。ががーん。と言う感じでネイちゃんが固まりました。


「でも心配ご無用です。まだ奥の手が有ります。村でおばぁに習った傷薬の軟膏と湿布薬の知識が私にはありますから」


「……おお。タエ、大スキ!」


 そうだろ、そうだろ。今まで溜め込んでた薬草の粉末、それも特級になっちゃったからそのまま売るのはちょっと怖い。状況次第ですけどいざとなれば売ります。ご飯大事ですから。


 まあ、隠し財産もあるけど食い扶持は自分たちで稼ぐと決めていますので頑張りましょう。ちょっとずつですが隠し財産も減ってきているのが心許無いです。


 まずは軟膏から作って行きましょう。まずは粉末にして置いた傷薬用の薬草を規定量を水に溶きペースト状にします。油、蜜蝋と合わせて練ります。混錬機が有れば楽なのですが、この世界ではないようです。


 なので乳鉢で混ぜて行きます。均質になるまで混ぜ続け、ねりねり、ねりねりします。ここが一番きついです。ひたすら混ぜ続けるだけなので。


 と言う事でネイちゃんと交代です。その間に湿布薬も作ってしまいましょう。今日こそは高品質を目指してやります。


 2人でひたすら混ぜ続けました。ネイちゃんもがんばってくれましたよ。お肉が掛っているので必死でしたね。


 出来ました! 高品質の軟膏と温湿布、冷湿布それぞれ2瓶ずつです。湿布薬が瓶と聞いておやっと思いましたか? ふふふ。使う時に布に塗ってから使うので普通は瓶入りなんですよ。


「さあ、出来ました。これを売ってお金に換えればご飯が食べられるよ。ネイちゃん」


 キラキラした目を私に向けてくれるネイちゃん。素直でかわいいです。まあ、でもちょっと気になることも有ります。特級の粉末を使ったのに2段落ちですよ。どう言う事でしょう?


 その事を考えるとじっとりと嫌な汗が出てしまいます。ちなみに最高品質や特級の軟膏などの薬は元の粉末薬草以上の物は出来ません。


 つまり特級軟膏などは特級粉末でしか作れないのです。特級粉末が市場に出回る事はほぼありません。なので特級軟膏を作れる薬師はその製法を隠匿しているのです。


 私の場合黒の助言ちゃんがバラしてしまいましたから不純物、粒度、均質さ、及び元の薬草の効能に気を付ければ作る事が出来てしまいました。


 粒度と均質さ及び薬効はおばぁに散々仕込まれたので問題ないし、不純物も生活魔法を覚えてから問題なしです。


 ではなぜ、2段落ちしてしまったのでしょうか。そうです。配合割り合いです。こればっかりはおばぁも知らないでしょうし、地道に探るしかないようです。まあ、実はその方が良いかもしれません。


 秘匿技術である特級粉末を作れる事がバレるとよくない事が起きそうなので、地道に努力して出来ましたと言う方向性に持って行きたいですね。


 高品質なら80リン~100リンくらいで売れるでしょうから2、3日は食い繋げるでしょう。あれ? 2人だと無理かな? 3食で……400リンくらい? お肉を諦めれば……それはない!


 1日半でした。明日も作らないといけません。



     ◇     ◇     ◇



 と言う事でやってきました。冒険者ギルドです。サッサと売り払ってご飯を食べようと思います。


「軟膏と湿布薬かい? う~ん。うちでは扱えないんだよ。それは薬師ギルドの管轄でね。ポーションなら扱えるんだけどね。薬師ギルドに行ってごらん」


 なんて事を買い取りカウンターで言われてしまいました。予想外です。でもまだ薬師ギルドが有ります。そっちで買い取ってくれることを期待しましょう。


 薬師ギルドは冒険者ギルドからやや離れた商業区の近くに有ります。傍には錬金術師ギルドも有ります。錬金術師ギルドの下部組織なので当たり前です。


 魔力が低かったり、引退した錬金術師が薬師をします。薬師なら知識さえあれば誰でもなれるので結構な数の人がいますね。修業は厳しいですけど必ずなれますから。


 薬師ギルドは冒険者ギルドと違い落ち着いた雰囲気の清潔感あふれるちょっと薬品臭い建物です。一般人でも入り易くムキムキマッチョな恐い人がいないのが良いです。


「すいません。これ買い取ってもらえますか?」


 銀ぶち眼鏡を掛けたおじさんに話しかけてみました。眼鏡をくいっと持ち上げて私達を見つめます。


「ギルド会員証をご提示ください」


「……」


 そんなもの持っていません。会員にならないとダメなのでしょうか?


「会員になるにはどうしたらいいのですか?」


「錬金術師の紹介状または薬師のお師匠さんの終了証明書と入会金が有ればなれます」


「……」


 どちらも有りません。特にお金。どうしましょう?


「……見れば高品質の軟膏と湿布薬ですね。そこそこの腕をお持ち。お師匠様に終了証明書を頂いてきなさい」


「師匠は流行り病で亡くなってしまいました」


「おや、それは残念な事をしましたね。では別のお師匠を探しなさい。ちなみにどなたがお師匠さんでしたか?」


「村に居たおばぁです。名前を知りません。東に有る限界村です」


「……ん? あの村には薬師はいなかった筈です。はて?」


「おばぁは元錬金術師だったと聞いています」


「……ああ、サレナ導師ですか。はい、はい。分かりました。サレナ導師は亡くなられたのですか。惜しい方を亡くしましたね。と言う事は錬金術師の弟子ですか」


 さてどうしましょう。困った事になってきました。

以下の様な物も書いています。

 異世界農業物語~異世界で農業始めましたーhttps://ncode.syosetu.com/n0558dz/

 異世界転生苦労譚~異世界だって甘くない~https://ncode.syosetu.com/n3637fl/

 エルフ賢者の子育て日記https://ncode.syosetu.com/n5068fk/

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