22.山分け
ブクマ、評価有り難うございます。
コンコン。お兄さんの部屋をノックすると中から返事がありまたよ。良かった起きてたみたい。ドアを開けて中に入るとまだベッドの上に上半身を起こしただけのお兄さんが居ました。
「どうですか? 体調の方は」
「うん。お陰さまで大分いいよ。痛みもあまりないし、熱も出てないみたいだ」
「一応施療院で見て貰った方が良いですよ?」
「ああ、そうするよ。今日は流石に休ませてもらうけどね」
世間話から入るのは大人の嗜みですよね? さあさあ、お楽しみの山分けタイムですよ。私だって結構いいもの持って来たんですからお兄さんの方はさぞ素敵な物をごっそりと持ってきてくれたに違いありません。
「そろそろ山分けの件、進めておきたいのですが……いいですか?」
「ああ、もちろんだよ。何やらそっちも箱の様なものを持ってきていたみたいだし気になるよね」
おっと。見られてましたか。抜け目ないですね~。流石は商人さんです。
「こっちから行きましょうかそれともそちらから?」
「じゃあ、お願い出来るかな」
「分かりました。まずは宝石の付いた指輪が3つです。銀の懐中時計、豪華な拵えのミスリルメッキのナイフ、お財布小金貨1枚入りです。そしてとっておきの隠し金庫未開封です」
「いやいやいや。凄いもの持って来たね。こりゃ困ったなそれに比べたら僕が見繕った方は霞んじゃいそうだよ。こっちはね絹の反物5反、異国の絨毯2枚、唐壺1個、胡椒の袋3袋、砂糖の壺2つだよ」
おお~。胡椒と砂糖はナイスです。欲しいですよ。
「お兄さんなら物の方が良いですよね? 売りさばき方次第ですから。指輪3つ、懐中時計、ミスリルメッキのナイフこの3点はお譲りします。締めて80000リンでどうです?」
「うん。いいね。懐中時計は自分で使ってもいいな」
「お楽しみの隠し金庫をご開帳します。じゃーん。おお~。小銅貨50枚、銅貨50枚、小銀貨20枚、角銀貨10枚、銀貨5枚、小金貨2枚、角金貨1枚です。お財布は小金貨1枚です」
小銭が多めなのはお釣り用かな? 辺境の村とかだとお釣りの補充も出来ないからね。おっと、その前に大きいお金もなかったよ。
「おお~、やり手だね~、かなり貯め込んでるじゃないか。え~と1362550リンだね」
「素早いです。商人さんはこれだから油断も隙もありません。お兄さんには小金貨5枚の貸しがありましたよね?」
「……あったね。すると僕の取り分は101275リンとそちらの品かな?」
「そうですね。で、で、そちらの山分けなんですけど胡椒と砂糖を希望します」
「そう来たか~。う~ん。釣り合うか~、仕方ない。全部持ってけー」
「いいんですか!? やった~。あ、あとこの金庫貰いますね。お兄さんは自分の有りますよね?」
「うん」
「それとネイちゃんなのですけど……」
この回答次第では今後のお兄さんとの付き合い方を変えないといけないと思います。
「ああ、奴隷は主人が死亡した場合、第1発見者の所有だよ。だからネイちゃんはタエちゃん所有だよ」
ほ。ここでネイちゃんも山分けとか言われたらどうしようかと思いました。きっとネイちゃんは高いですよね。
「ありがとうございます。私達は明日の朝に宿を出ますね。ここからだと冒険者ギルドまで遠いので別の宿を探します。じゃあ、お大事にしてください」
お兄さんが良い人で良かったです。ふふふ。サッサとこの宿を離れないと……多分ですけど、この金庫2重底じゃないかと疑ってます。
あの場では全部開帳したように見せましたが、金貨入ってなかったですよね? 隠し金庫を2重底ってどれだけ用心深いんでしょう。
部屋に戻って金庫をベッドの下に隠しておこうっと。大金だからね、一応ね。
「ネイちゃんパンツ見せて下さい」
ジト目で見つめられましたが、見せてくれました。違うんです! パンツを見たい訳じゃなくて万が一の事を考えてですね……。
「ここに金貨を入れておきます。万が一私と離れ離れになった時や私が死んじゃった時にこれで食い繋ぐんですよ。私が死んだ時は奴隷から解放されますから自分の力で生きていって下さいね」
ネイちゃんは瞳を大きく見開いて驚きを隠せない様です。なんで? って顔に書いてありますがそれは明日説明します。
「さて、そろそろ夕飯の時間ですね。下で食べようね。その後は大金も手に入った事ですし、お湯を貰って体を拭いちゃおうね。ふふふ」
やってきました街での晩餐です。お昼はちょっとがっかりだったので期待してますよ。
階下の食堂に降りてきました。客の入りは半分と言うところでしょうか? うーむ。この感じだと期待薄かな? 取り敢えず座りましょう。
入口から離れた隅っこに並んで座りました。奥にネイちゃんを押し込んで私がガードする形です。
「ネイちゃん、何食べようか? やっぱりお肉? お肉だよね?」
ネイちゃんは空気の読める娘でした。コクコクと激しく頷いて同意してくれたもん。
「女将さーん。こっち。こっちは山鳥の香草焼きと煮込みファンゴのスープ2人前。パンも白いの下さい。それと……このゾゾ茶? 美味しいですか?」
「そうだね。子供にはキツイかも知れないね。こっちのベリベリのジュースの方が美味しいと思うよ」
「じゃあ、食後にベリベリのジュース2つ下さい」
晩餐は奮発してみました。くぅ~。80リン。合わせて160リンですけど……明日から引きしめますよ。ええ。
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