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17.旅立ち5

 応急処置を済ませて、お馬さんに無理をさせないくらいゆっくりと野営地に向かう。夕方に着いた野営地には先客がいてちょっと大きめの商隊さんでした。


 お兄さんを馬車から降ろして休ませる。ここまでずっと怪我をおして操縦を続けていたの。野営の準備は任せて貰って少し寝かせておく。


「悪いわね。色々手伝わせて。直ぐに御飯の用意するからあと少し手伝って。お馬さんを馬車から外してお水をあげて。それから薪を集めておいてほしいの」


 子供は口から涎を垂らしながらコクコクと頷いて、私の云い付け通りにしてくれている。私はそこらへんの枝を加工して即席の矢を作る。晩御飯の獲物を取りに行くためよ。


 即席の矢が完成したらそのまま弓を背負って獲物に向かってまっしぐら。直ぐに矢を射るけど微妙に曲がるから梃子摺っちゃった。一応さっきの子供の様子から3羽の一角ウサギお仕留めておいた。一応ね。


 血抜きと内臓の処理を手早く済ませると野営地に戻る。野営地に戻ったら既に焚火まで焚かれていた。どうやって火を付けたのかしら? 火打ち石は渡してなかったよね? お兄さんが渡したのかしら?


 多少の疑問はあったけど、スルーして一角ウサギを捌いて行く。食い入る様に私の手元を見詰める子供。どうにもやり難い。


「あなたこれ解体できる? そう。ならお願い出来る?」


 傍で見詰められてるよりも手伝わせた方がいいかと思い、一角ウサギの解体をお願いした。既に湯が沸いていたので、野草と根菜のスープを作った。今日は前脚のお肉を全部、3羽分入れてしまいました。もも肉とアバラ肉は焙り焼きにする。


 最後にパンをいつも通り処理して完成です。


「おまたせ。はい、スープよ。お肉たっぷりにしてあげるね。熱いから気を付けて飲んでね」


 びっくり眼で変な雄叫びをあげたけど凄い勢いで飲みだした。


「フォ~~!」


 次にもも肉を骨から外して、スライスしてハーブ塩を振り掛けた物をパンに挟んで渡す。既にスープは飲み干していたよ。


「スープはお代り要る?」


 凄い勢いでコクコク頷いているけどパンを食べるのはやめない。マグカップを受け取ってまた一杯に注いであげるとパンとスープを交互に食べだした。


 さて、今度はお兄さんね。大丈夫かな。今は栄養を付けておかないとお肉が盛り上がって治癒するから必要な養分を取らないといけないんだっけかな?


「お兄さん。晩御飯出来たから起きてちょうだい。栄養とらないと足が治らないから」


「う~ん。ああ、悪かったね。全部任せてしまって。ああ、すこぶる体調が良くなったよ。流石は特級だね。ご飯だっけ? 頂くよ。モリモリ食べるからね」


 そう言って本当にモリモリ食べ始めちゃった。でもこれで一応何とかなったかな? あ、いけない。忙しくてこの子の名前すら聞いて無かった。


「ねえ。あなた名前はなんていうの?」


「……ネイ%$#&$%#&%$%$#%&%$%$」


「な、なんて言ったのか、最初のネイしか分からなかったよ。ごめん。ネイちゃんでいい?」


 子供は食事の手を止めないでコクコクと頷いてくれた。さて、私も食べよう。私も晩御飯を食べているときに。


「もし。少しよろしいか?」


 隣で野営をしていた商隊から2人の人物が訪ねて来た。まあ、見た感じ商隊主と護衛隊長ってところかしら。どうして私に話しかけるのかしらと思ってマークお兄さんを見たら食事も早々に終えて横になっていた。


「……なんでしょう?」


 釈然としないまましょうがなく答えた。どうやら異常な怪我をしているマークお兄さんを見て情報交換をしたいらしい。でも私達って欲しい情報って無いのよね。もう次の日には街だもの。


「情報を交換しないか?」


「う~ん。欲しい情報って無い気がします」


「「……」」


「そう言われてしまうとこちらとしても言い様がないんだが、じゃあ、情報料を払おう」


 商隊主が苦笑いをしながらも提案して来る。まだちょっと小馬鹿にした感じがあるけどいいでしょう。確かに小娘だから小馬鹿にされても仕方ない。


「ネイちゃん、パンはもっと食べる?」


「ヒホォ~~」


 またしても奇声をあげながらコクコク頷くのでちょっと顔が引きつりながらだけどまたパンを作ってあげる。


 え? 2人は放ったらかしでいいのかって? だってこちらから話す事なんて無いものどうしろって言うのよ。


「どうだろう? 銀貨を出そうじゃないか」


 うーん。結構な情報を持ってるから銀貨じゃ割に合わない気がするわ。銀貨程度で出せる情報と言ったら……。


「熊に襲われたわ。結構大きい熊ね。この先に行くなら十分注意が必要よ」


 小首をかしげてかわいらしくさもまだありますよと言う感じに言ってみた。


「! 銀貨じゃ不満だったかな……」


「そうですね~。理由は2つあります。1つ、この話でそちら側に明らかな利益が生じること。2つ、そちらの命にかかわること。以上によって金貨以下では大した情報は話せません」


 2人ともはっきりと理由を言われ金額までの提示にはびっくりしたみたい。うん。金貨って相当な額だからね。でも私が拾った指輪だって1つ角金貨ぐらいの価値があるんだよ。


「俺は今回、護衛任務を引き受けた冒険者のカイゲルと言う。本当に命の危険があるのかい?」


「さすが冒険者ですね。お金を出さずに情報だけ引き出そうとするとは……銀貨を出したら証拠も見せますよ?」


「あ~~。うん。すまん。そう言うつもりではなかったのだが、これで証拠を見せてくれ」


「いえ。いえ。無意識にやってるから凄いなって。命の危険の証拠ですか……そこの商人さんの足なんですけど一撃受けただけでああなりました。証拠になりませんか?」


「一撃と言ったか……ズボンの裾が随分ズタボロだが一撃でか」


「あ、あの私は利益の証拠と言うものが見たい。これでいいかい?」


 ポケットから指輪を3個取り出して見せる事にした。


「小娘が持っているには不釣り合いの指輪ですよね? もちろん拾いました」


「……うーん。確かに。指のサイズも合っていない。価値としては角金貨くらいか?」


 2人とも何かぶつぶつ言い出しちゃった。

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