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16.旅立ち4

誤字報告、ブクマ、評価有り難うございます。

 お兄さんを馬車に引き摺り込んだ子供が私の傍にやって来た。ガタガタ震えているけど問答無用で手綱を渡した。


「目一杯逃げて! すぐお兄さんと替わって貰うからそれまで保たせて」


 操車をまるっと投げて、馬車から後を見ると四つ手熊がもの凄い速さで追いかけて来ている。見た感じだと馬車より早い。


「追いつかれるよ。目いっぱい飛ばして頂戴」


 私からの指示でお馬さんに鞭を入れる。操車なんてしてなくてただ単にお馬さん任せで突っ走ってる感じだ。


 四つ手熊を見ない様に足元に横たわるお兄さんに意識を集中する。お兄さんの足はボロ雑巾のようになっていて手の施しようがない。傷口の上の方を縛って止血だけをしてお兄さんを平手打ちで起こす。


「お兄さん、お兄さん、起きて」


 ばしばしと叩いて無理やりにでも起こす。だって緊急事態なんだもの。激しく揺れる馬車の中でお兄さんが息も絶え絶えに何とか意識を取り戻した。


「緊急事態はまだ続いてるの。四つ手熊に追い掛けられてるから馬車の操縦をして頂戴。このままだと横転してしまうわ」


 事態の深刻さを認識したお兄さんが、もう使い物にならなくなった足を引き摺りながら馬車の前方に向かう。


 ここで今まで意識しない様にしていた四つ手熊を見た。!!! もう直ぐそこまで迫っている四つ手熊と目が合ってビクッとなってしまった。


 おおきい! あまりの迫力に私は委縮してしまいそうになるけど、ワイルドファング戦がいい経験になっていたのか直ぐに行動に移せた。


 直ぐ様弓を構えて……え~と熊って鼻面が急所だっけ? 何か日本にいた頃、時たま熊に襲われたけど生き延びたって言う事がニュースになってたことがあるような無いような……。確か鼻面を殴ったとか聞いた気がする。


 違う生き物だっけ? もう分かんないや取り敢えずいっちゃえ。思い切り弓を引き搾って、熊の鼻目掛けて至近距離から射掛けた。


 ビシって音が鳴って直撃したけど少し嫌そうにして速度が落ちたくらいでまた追いかけて来る。私の足もガタガタ震えてるけど、銀の助言ちゃんに従い連続で矢を放ち続ける。


 大したダメージを与えていないと思うけど、四つ手熊が嫌がり徐々に距離が開く。ついさっきまでは手が届くんじゃないかって思うくらいの距離でした。


「お兄さん、馬車はもっと飛ばせないの?」


「……ハァハァ、もう限界以上に飛ばしてるよ。これ以上出すと横転しかねないんだ」


「……どうしよう。熊の方が速いし、もう直ぐそこにいるよ」


 気が付けば矢も最後の一本だ。……本当にどうしよう。欲をかかずにあの時素通りしておけばよかった。今更言っても始まらないけど、妹の件と言いどうして私は判断を誤るんだろう。


 銀の助言ちゃんが何かゼスチャーをしてる。なんかその大きいのを踏ん張る様にして弓を構えてる感じ?


 なんかよく分からないけど今まで間違ったことは教えてくれてないからやってみようかな。私は足をがにまたに開いて大きい方をする時みたいに全身に力を込めて弓を引き絞る。


 銀の助言ちゃんがもっともっと見たいなことやってるからもう本当に出ちゃうんじゃないかって言うくらい踏ん張った。


 私の体がほんのり輝いてこれまでで最高の威力が出た矢を放てた。


「告。……気。……闘法。……レベル1。……習得」


 なんか気闘法とか言うの習得しちゃった。こんなに簡単に習得できていいんだろうか? 私の放った矢はかすかに光の尾を引きながら熊の鼻目掛けて吸い込まれる様に命中した。


 これは偶然だけど、どうやら鼻の穴に見事にジャックポットしたみたい。四つ手熊が明らかに悲鳴の咆哮をあげてその場で蹲って鼻をかきむしっている。


「お兄さん、今よ! 全力で逃げて」


 遠くに諦めた四つ手熊が引き返して行くのが見える。助かった~~。今回だけは死んじゃうかと思った。はっ! こんなことやってる場合じゃない。お兄さんの怪我を見ないと。


「お、お兄さん。四つ手熊も諦めたみたい。引き返して行ったよ。早くどこかに止めてけがの手当てをしないと」


「……ハァハァ。ま、まだだよ。まだ熊のテリトリーの中なんだ。ここを抜けるまでは休めないよ。ちきしょう。ハァハァ。……馭者席の後ろ、隅の方に僕の虎の子のポーションが入ってるから取ってくれないか」


 お兄さんに言われた辺りを探すと確かにポーションが見つかった。でもこれって……。


「お兄さんこれじゃあ……。」


「ハァハァ。……分かってる。こんなことならケチらないで中級ポーションを買っておけばよかった」


 そう。お兄さんの虎の子は下級ポーションだったんだ。これじゃあ、止血くらいにしかならないよ。私から下級ポーションを受け取って半分を傷口に掛け半分を飲み干した。


 さっきまで滴っていた血が止まったので一応の効果は出ているようだけど……。その後しばらく走ってここまで来ればテリトリーから外れただろう位置で一旦馬車を止めた。


 お馬さんを休ませないといけないし、何しろお兄さんの怪我の応急処置をしないといけない。お馬さんの世話を同乗した子供に頼んでお兄さんを路肩に横たえる。


 ズボンの裾を切って改めて傷口を確認してみると。酷いものだった。3本の獣爪によってお兄さんの脹脛から踵までの足の肉はズタズタに切り裂かれてる。骨も数か所で折れていて原形をとどめていない。


「お、お兄さん。この足……」


「ああ、こりゃ酷い。たった一撃受けただけだけどこのざまか。それも掠ったみたいな感じでだよ。もう切り落とすしかないな~。欲をかいた罰が当たったのかもしれないね」


 乾いた笑いを漏らすお兄さん。しょうがないか。治るかどうか分からないけど私もとっておきを出そう。


「お兄さん。あのね。私もとっておきがあるの。村の薬師のおばぁが作った特級軟膏。これ一つしかないからお高いけど買う?」


「!!! と、特級! か、買った! 金貨5枚出す」


「ううん。これただで貰ったし今回の件は私もいけなかったし治るか分からないから、角金貨5枚でいい。流石に無償では提供できないから……」


 足の傷を洗って軟膏を布に塗り、お兄さんの足にきつく巻きつける。傷口同士がくっつく様にしてさらに包帯でぐるぐる巻きにして添え木で固定していった。 

以下の様な物も書いてます。よろしければみて下さい。

 異世界農業物語~異世界で農業始めましたーhttps://ncode.syosetu.com/n0558dz/

 異世界転生苦労譚~異世界だって甘くない~https://ncode.syosetu.com/n3637fl/

 エルフ賢者の子育て日記―https://ncode.syosetu.com/n5068fk/

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