13.旅立ち
感想・ブクマ・誤字報告ありがとうございます。
昨日で序章みたいなところが終わったので通常更新に戻っております。
私は茫然と自分の家だった瓦礫を見詰めてる。畑を売って暫くした頃、一角ウサギを獲って早々に帰宅したんだけど、家が潰れていました。
誰かがやったのか、自然と壊れたのかは分かりません。村長が来て何事だ! とか言って村民に事情を聴いたり後片付けを指示したりしてる。
ここで私は決断しなければいけないと思う。これで疫病神が決定してしまった私は村に居ても碌な事にはならないと思う。
幸い採取と狩猟で生計を立てようとしているところだったので、冒険者の道が開けた。確かギルドの登録は10歳から、12歳までは見習いまでにしかなれないけど今の私にはちょうどいい。
「タエ。お前うちに来ないか? 住む所も無くなってどうも出来んだろう」
村長さんが私にそう言って声を掛けてくれたけど、既に決断していた私は首を横に振った。
「採取と狩猟で生計を立てるなら冒険者ギルドに登録しようと思っていました。ちょうどいい機会なので街に出て見ようと思います」
「……そうか。冒険者登録が済んだら戻ってきてもいいんだからな。その事は忘れるんじゃないぞ」
「ありがとうございます。つきましては家財道具一式と土地を売り払ってしまおうと思います」
採取と狩猟に必要な物と旅に必要な物、それに今まで貯めていたお金をもって残りは村長さんに売ってしまった。角銀貨1枚で。
ちょうど都合が良い事に行商のおじさんも村に来ていたので街まで連れて行ってくれるよう頼んだ。
「ねぇ。おじさん。街まで乗せて行ってくれない? お金なら払うから」
「……おじさんじゃないよ。僕はまだ20代なんだよ。せめてお兄さんと呼んでほしい。そうだな小銀貨3枚で連れて行ってあげる」
「道中の食事も付きならそれでいいわ。お料理なら私がしてあげる。お兄さん。私、タエよ」
「僕はマークだ。料理が出来るのはうれしいな。それにしても大荷物だね」
「旅は初めてなの。必要な物が分からなかったから思いつくものをみんなお父さんの背嚢に詰めて来たわ。前賃として小銀貨1枚、街に着いたら残りの2枚を払うわ。それでいい?」
「ああ、構わないよ。荷物は適当に荷車に入れなさい。出発はこの村での商売が一段落したらすぐに出るよ。時は金なりってね。しがない行商の身ではゆっくりする暇もなくてね」
暫く荷車で待っていると商売も終わったのかマークが戻って来た。
「もう終わり?」
「うん。終わり。君はもういいの?」
「疫病神の出発なんて誰も見送りになんて来ないわよ」
ちょっとびっくりしたような顔をしたマークだったけど何も言わずに出発してくれた。マークの荷馬車は幌付きで雨でも荷物が濡れる事はない。
もちろん私は初めての旅なので外の景色が見られるように馭者席の横にちょこんと座ってる。もちろんワクワクしてるよ。なにしろ初めて、村の外に行くんだもの。
見るものすべてが輝いて見える筈だわ。そう思っていたのよ。でも違ったの村の周辺と何ら変わり映えしない森とか山、野原が広がっているだけ。
馬車はガタゴトと揺れてお尻が痛いだけ。あっという間に飽きて来ちゃった。そうなると話相手はマークお兄さんだけ。
「ねぇねぇ。マークお兄さん。やっぱり旅は危険なの?」
「ん? そうだね。盗賊や山賊なんかも出るし魔物や魔獣もでるからね。でも心配しなくてもいいよ。この辺は辺境過ぎて盗賊や山賊はあまり出ないから」
「その代わり魔物や魔獣はたくさん出るんじゃないの?」
「出る事は出るけど、一角ウサギとか尾白狐くらいだよ」
「ふ~ん。あっ! ちょっと止めて。早く早く」
びっくり眼のマークお兄さんだったけど、一応馬車を止めてくれた。すかさず飛び降りてダーと走って行く私を見ている。
「おい、おい。どうしたんだい? 何か忘れ物でもしたのかい?」
「ふふふ。違うわよ。これこれ」
そう言ってたった今、採取した15夜草の花を見せる。これなかなか咲いているところを見かけない希少な花で結構お高い。この花がポーションの材料になるのだ。Bランクの素材ですよ。
「へぇ~。良く見つけたね。買い取ろうか?」
「ふふん。流石は行商さんね。このまま持って行けば全部私の儲けなんだけどいいわ。売ってあげる。道中また止めるかもしれないからちゃんと止まってね」
「ありゃ。見透かされてたか。分かったよ。お互いの利益のためにゆっくりと行こうじゃないか」
くっくっくっ。素材を見付けながらの道中なら退屈する事はないよね。それに旅費も稼げるし言う事なしよ。マークお兄さんも移動中に貴重な素材を仕入れられるから万々歳よね。
もちろんタグ設定していた私エライ。Bランク以上に設定して馬車に揺られていたんだもの。
その後もちょこちょこ素材を見つけては馬車を止めてを繰り返した。普段よりも遅くにやっと野営地に着いたのは仕方ない。
「ふぅ~。やっと着いた。タエちゃんが馬車を止めてばかりいるから大分遅くなっちゃたよ」
「でもこれで稼げるでしょ? 臨時収入じゃない?」
「まあね。感謝しているよ。僕は薪を集めて来るから焚火の準備をお願い」
「了解よ。お馬さんにもお水をあげとくわ」
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