12.流行り病
遅くなりました。序章村娘編? がこれで終了です。
面白いなと思われたら、評価・ブクマなどして頂けたらなと思います。
大忙しだった秋も終わって、冬に入った。今年は土壁のお陰で隙間風が無い。ところがそう言う年に限って暖冬だよ。暖冬だけどやっぱりお外は寒いから土壁の効果はあると思う。
朝、身嗜みを整えるために共同の井戸に行くんだけど、くぅ~、寒いよ。おふとんに戻りたい。えへへ。うちのおふとん、変化しました。春からずっと獲り続けてる一角ウサギの毛皮。これを繋ぎ合せて使う様になったの。
流石は毛皮、すっごく暖かいよ。なめしはお母さんがやってくれてるんだ。縫うのもだけど……。まあ、10歳だから仕方ないよね?
今年のうちは大分変化したよ。妹は薬師に爆進中で稼ぎもそこそこ。私は薬師と猟師の2本柱で稼ぎまくり。お荷物の私と妹がいなくなったから畑仕事もお父さんとお母さんでサッサと終わらせてるみたい。
うちの畑は税金対策みたいなもの。お役人様に睨まれないようにいつも通り半分持ってかれてるの。それでも今年は小麦を売らなくても私達の稼ぎで冬支度が出来たから食料もばっちり。
ばっちり所か干し肉も充実してるんだよ。毎日お肉食べてるのに干し肉も貯まっていく。凄い!
最近では妹もお肉であまり喜ばなくなってきた。まったく贅沢覚えると直ぐに感謝の心を忘れちゃうんだから。ね。
そんな冬もそろそろ終わりと言う頃、妹が熱を出したの。大事を取って寝かせたままにして熱冷ましのお薬を私が調合して飲ませてたりしたんだけど、一向に良くならない。それどころか悪化してる様なんだよね。
近隣の家でも熱を出してる人が増えて来たから仕方なくおばぁの所に行って何の病気か、そのお薬について聞きに行ったんだけど……暗く寒いおばぁの家、暖も取って無くて凍えそうなくらい寒い室内。
こんもりと盛り上がってるおふとん。ピクリとも動かないんだ。なんか異様な気配がして……。
「お、おばぁ? 寝てるの? もう朝だよ」
全然返事が無いんだ。辺りを沈黙の静けさが支配している。怖くなった私はそのまま走って家に帰って来ちゃった。
あとでお父さんが様子を見に行ってくれたんだけど、それから村中が騒ぎになった。大人達が何やら色々やってて、家の中で妹と二人、ひっそりと息を殺して待っていたんだ。
熱を出してる妹に大丈夫だよ。大丈夫だよって言いながら膝を抱えてた。
最初の犠牲者はおばぁだったんだ。村唯一の薬師であるおばぁが死んで誰も薬を作れない中ゆっくりと病が進行して行った。
次に熱を出して倒れたのはお母さん。妹の看病を一番してたから。その段階で私は妹から遠ざけられた。そしてお父さんも倒れた頃、妹は静かに息を引き取って行きました。
そして春に一人ぼっちで家にいる私。ボーっと天井を眺めてたよ。小さな子供は抵抗力が無いから仕方ないってみんな言うんだ。だけどお父さんとお母さんも居ない。
でも去年の暮れから今年にかけての流行り病は多くの村人に被害が出た。薬師であるおばぁが最初に犠牲になってしまったのが痛かった。
妹はおばぁの所に行く回数が多かったから次に感染しちゃったんだ。妹には外に行ったら手洗いとうがいをするようにさせてたんだけど、ダメだったみたい。
おばぁが死んじゃったから皆薬を求めてうちに来るんだ。この地域特有の風土病らしいんだけどそんな病気の薬の作り方なんてまだ習って無い。
熱冷ましの薬を作って配るのが精いっぱい。村人の3割が亡くなった。うちは被害が大きかった所のひとつ。私を除いて全滅だったからね。
私が助かったのは銀の助言ちゃんのお陰だと思う。冬の頃から両手に力を入れて真っ赤になりながら何かに耐えてたの。
「タエ、邪魔するよ」
「……村長さん」
「……お前ん所の家族はおしい事をしたな。それでな……もう作付けの時期が迫ってるからこのまま放置する訳にも行かなくて来たんだよ」
「……なんでしょう?」
「お前が父親から引き継いだ畑なんだが、一人で作付とか出来るか?」
もちろん私にそんな事は出来ないから首を横に振った。村長さんはため息をひとつついて話しだした。
「お前税金とか分かるか? お役人様に納めてる奴だ。畑を持ってるとそれを納めなけりゃならないんだ。でもおまえ一人で畑は無理だろ? 結局借金して畑も無くなって身売りするしかなくなるんだ」
「……」
「だからな。先に畑を売ってしまえと言いに来たんだ。お前なら採取と狩猟で食い繋げる。無理して畑をやるこたぁない。小麦なら村の衆から少しずつ買わせてもらえば何とかなる。な。売ってしまいなさい」
何と無く村長が心配してくれて、言ってくれてるのが分かったから言う通りにした。角銀貨5枚でした。これが高いのか安いのか私には分からなかったけどこれでまた村から孤立した。
去年余計な事をしたり、急に稼ぎ出した私、遠巻きに見る村人。まだ村八分にはされてないけど、どうやら時間の問題らしい。
後ろ盾のなくなった私に冷たくなる村人達。迷信と言うほどではないけど狐憑きと言う噂が流れ始めてる。去年はちょっとはしゃぎ過ぎたね。その上で流行り病だもん。
私のせいになるよ。確証が無いからまだ何も言われないし、されないけど次に何かあったらもうダメだろうな。
こうして失意の中、私の11歳が始まった。
以下こんなのも書いています。ご興味があればぜひお読みください。
異世界農業物語~異世界で農業始めましたーhttps://ncode.syosetu.com/n0558dz/
異世界転生苦労譚~異世界だって甘くない~https://ncode.syosetu.com/n3637fl/
エルフ賢者の子育て日記―https://ncode.syosetu.com/n5068fk/