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108.錬金術師見習い13

 ゴブリンどもは腐っても魔物です。獣よりも頑丈です。急所を捉えないと一撃必殺とはいきません。さらにこれだけ群れると興奮状態なのか全然怯まず闇雲に突き進んできます。


 まあ、リトルボアのように動きが早くないので接近するまでに飛漸も交えての攻撃で何とかなります。ゴブリンどもと戦闘を開始して、数匹を仕留めたとき、ドゴン~と大きな音がしたと思ったらキラーベアが飛んできました。


 キラーベアはそのままゴブリンを押し潰し、ゴロゴロと転がって私たちの横で止まりました。


「「……」」


「な、何が起きたのかな?」


「……かな?」


 思わずネイちゃんと2人で固まってしまいました。キラーベアと言ったらバーバリアンベアほどではありませんが難敵です。私達2人掛かりで何とか倒せるかな~というくらいの敵です。


 ドゴ~ン。また音がしました。続けざまに音が鳴り響き、次ぎ次ぎと魔獣が降ってきます。ワイルドファング、ビッグホーン、ジャガノート、ビッグディアなんかもいます。


 やっと街から鐘の音が響き渡り、緊急事態を知らせています。西門が閉まり街壁の上に衛兵たちが並びました。全員弓を構えているのが遠くに見えます。


 西門の脇にある通用門から冒険者が次々と駆け出してこちらに向かって走り寄ってきますが、ここまで来るのにもう少しかかりそうです。


 いまだに森の中から凄まじい音が鳴り魔物が降り注いできます。何かに怯えたかのような、森から逃げ出してきたリトルボアを魔法で仕留めながら唖然と見つめています。


「音、止んだね」


「……うん」


 藪を掻き分け、この蹂躙をしたものが姿を現します。多分私達ではどうにもならないヤツだと思いますが、何がしたかったのでしょう? 何が気に障ったのでしょう? あの時のような殺気は振り撒いていませんが、ヤツがもう直ぐ現れて私達も蹂躙されるのでしょう。


 師匠~、カンナさ~ん。助けてくださ~い。心の中で声にならない叫びを叫んでみても冒険者たちが到着する前に私たちが蹂躙されるのは確実でしょう。


 そしてとうとうその時が来ました。


「ん? 今日はずいぶん獲物がいると思ったが、タエたちも狩か?」


「「カンナさ~ん」」


 思わずその場でへたり込んでしまいました。腰が抜けた。


 暫くして街から大勢の冒険者、せいぜいCランクが数人とDランク、Eランクが多数です。Bランク以上は現在この街に居ません。


 普通Cランク1人で殲滅できる量でも強さでもない気はしますが、カンナさんに掛かればこんなものです。倒した魔物の処理を到着した冒険者たちに任せカンナさんが事後報告に冒険者ギルドに向かいます。


 私たちは元々持っていた獲物を担いでカンナさんの後ろをついていきます。もちろんトレインしたことなどおくびにも出しません。英雄ですよ。街に向かう魔物の足止めをして、殲滅に寄与した英雄様ですよ。


 あっはっは~。ひゃっほい。災い転じて福となす。


 冒険者ギルドに到着したらすぐにギルマスに呼ばれたのはカンナさん。もちろん私たちはシレっと売却カウンターに並びます。


 むんずと首根っこを掴まれカンナさんに連行される私達。あれ~? バレてる? ギルマスの部屋に入ってどっかりとソファーに腰を下ろしたカンナさん。


「カンナか。どうなった?」


「ああ、一応殲滅しておいた。こいつらが足止めしてたから、後ろから楽に殲滅出来たさ」


「そうか。ご苦労だったなカンナ。ちびちゃんたちも頑張ってくれたな」


「そ、そうでもないですよ? おほほほ」


「……うふふふ」


(ダラダラ。冷汗が止まりません)


「で、何があったんだ。カンナ」


「ん~。まあ、いつものやつが起こりかけてたところに鉢合わせしちゃった感じか?」


「大海嘯か……。やや規模が小さかったようだが、今回は楽に済んで良かった。おっつけサリーも来るだろうが、もう終わっちまったな。カイゲルたちがいないときで焦ったが終わりよければまあいい」


「「「……」」」


「報酬だが今回は、緊急事態召集前に片が付いちまったから、少し遅くなるぞ。獲物は街の取り分でその分報酬で出すことになる」


「ああ、他の冒険者にあとは任せてきたから、そっちから聞いてくれ」


「あとはお前Bランクな。チビちゃんたちは、Dランク決定だが年齢制限に引っかかってるんだよな。ん~特例処理にちょいと時間がかかる。そうだな、サリーもついでに上げとくか」


「いや、今回は昇級は見送ってくれ。規模も小さかったし、普通に狩っただけとそんなに変わらん」


「しかしな~、街としてもBランクが欲しいんだよ。お前ら実力だけなら俺とそう変わらんだろう? Aでもおかしくないぞ」


「ギルマス。ちゃんと功績残してるやつらを上げた方がいい。あたしやサリーは気まぐれだ。いつもちゃんと対処するわけじゃない」


 お話の途中だったけど、ドアがノックされた。入ってきたのは完全武装の師匠です。たら~り。


「カンナ。済んだのか?」


「ああ、チビちゃんたちが壁になってくれたんで、後ろから殲滅出来た」


「タエとネイがか?」


 ギロリと私たちを一瞥して私たちが抱えている獲物を確認する。少し考えたようだけど、また視線をギルマスとカンナさんに向けた。


「そうか。緊急呼び出しだったが、何事もなくてよかった。帰るぞ、タエ、ネイ」


 びっしっと直立不動で立ち上がって帰る準備をする。荷物を抱えようとした所でギルマスから声がかかる。


「まあ、そう慌てんな。サリー。今、報酬の話をしていたところだ」


「いつも通りだろう? 何か問題があるのか?」


「功績があるんでな。お前らパーティーとして一括りにしてランクアップにしようと思ってる」


「待て! 私は何もしていない。却下だ」


「お弟子ちゃんたちが頑張ったんだ。お師匠さんも頑張ったろう?」


「弟子の功績を横取りなどするものか!」


「もちろんお弟子ちゃんたちも特例でランクアップさせちゃるし、お前たちもさせてやるよ」


「だから要らんと言っているだろうが!」


「そうはいかない。Bランクが欲しいんだよ。出来たらAランクがな! 街のやつらも安心できるんだよ。Aランクがいれば」


 この後うだうだやり取りがあったけど師匠はとカンナさんは逃げ切りました。旅に出るので帰ってきてからとかなんとか。

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