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106.錬金術師見習い11

 準備を整えて帰還に向け、出発というところで現在地が分かりません。凄いのに追いかけられてここまで逃げて来たからね。正直遭難中なのです。


「一応聞くけど、ここがどこだかなんてネイちゃん分かる?」


「……ここが何処かは分からいけど、元の場所には戻れる」


 おお。凄いぞ。森の賢者と呼ばれる種族だけはある。方向感覚はばっちりだね。ちなみに私は分からない。雨がザーザー降っている上に闇雲に逃げて来たから既に位置は把握できていない。


「……でも問題があると思う。ヤツのところに戻るってことだもん」


 そうです。ヤツ。昨日追い掛け回されたヤツです。あれは戦っちゃダメな相手です。絶対瞬殺されます。折角逃げ切ったのにまたヤツの所に戻るのは愚策と言うほかないでしょう。


 さてどうしようかな。地面はぬかるんで……どころか水没してるので機敏には動けません。分かってるよ。もともと機敏には動けないよ! もっと動けないってことだよ。


 昨日逃げるので夢中だったから気にせずジャブジャブやって逃げて来たけど、水の中に何がいるか分からないからパニクってない状態、冷静になったら結構怖い。


 特に蛇が問題だと思う。先ずは毒のある奴。いきなりガブってされるとそのままあの世行きです。次に大きな奴、いきなり巻き付かれて丸呑みとかも怖いです。


 …………チン。よく考えたら私には黒の助言ちゃんがいるんだった。見えなくてもタグは見えるんでした。何も怖くないね。ジャブジャブ行こう。


「問題はヤツなんだけど、私の索敵能力とヤツの索敵能力どっちが上だと思う?」


「……ヤツ」


 躊躇なく、間髪入れず断言されたよ。ネイちゃんにも助言ちゃんズのことは教えていない(誰にも教える気はないけど)ので仕方ないっちゃー仕方ないんだけど、がっくり。


「い、一応視界が効くこと限定だけど結構遠くまで索敵出来るんだよ?」


「……ヤツ」


 くっ。まるで信用がない。ならば仕方ない証明して見せよう。黒の助言ちゃんの力を! タグオープン。敵限定。


〈解。……レベル。……不足〉


 あれ? 敵限定出来ない? もっと絞り込んでタグ付けしないとダメか~。結構困る。魔物限定だと猛獣とか蛇が怖いし、猛獣限定だと魔物が怖い。


 いやもっと大まかにすればいいかな? 生物限定とか。……多すぎるって。視界がタグで埋め尽くされちゃったよ。くっ。目眩がする。一気に情報が流れ込んできた。脳が爆発しそう。


 止め、止め。死んでしまうわっ! どうしよう? 証明できなかった……。仕方ないから対象を次々に入れ替えながら、危険回避をしようと決める。結局慎重にゆっくり進んでいくことになった。


 先頭はネイちゃんだ。私じゃ道が分からないから当然なんだけど、索敵と言うかタグ付け確認は私が行っているから本当は逆の方がいいんだよね。


「ネイちゃん。私が先頭でもいいよ? 後ろからどっち方向か言ってくれればいいし」


「……その方が面倒だし、声はあまり出さない方がいいと思う」


 確かに! 黒の助言ちゃんを隠してるから言い訳しづらいな~。まあ、いいか。どうやって危険回避をしようかな?


「ネイちゃん。前方になんか居るよ。右から迂回しよう」


「……なんで分かる?」


「気配?」


「……感じないけど。タエは分かるの?」


「う~ん。多分だけどそこそこ強いのが1匹かな? でも狼系だと斥候の可能性があるから回避しようかな~って感じ」


「……なら確かめるためにも直進。居たら瞬殺すればいい」


 むむむ。どうも信用がない気がする。どこで失った! 何を言ってもネイちゃんは、確認してからと強行突破と言うばかりなので、仕方なし直進してみると案の定居た。


「ほら。居たでしょ? ナイトウルフだよ。1匹なら何とかなるけど、応援を呼ばれたら逃げるしかないよ?」


「……む~。あいつ等纏まると強い。あ、見つかった」


 やや離れた位置の藪の中で隠ぺいを駆使して確認していたんだけど、隠ぺいが不十分だったようで、あっさりバレました。


 アオーン~~~~~。


 ヤバヤバ~。いきなり仲間呼んだよ! 遠吠え状態で隙だらけのナイトウルフにネイちゃんが仕掛ける。弓を取り出して矢を次々に放ち始めるのを横目に私は藪から飛び出した。


 私の目の前でナイトウルフに次々に矢が突き立っていく。私は一気に間合いを詰め、抜刀。体ごとぶつかる様に突きを繰り出し止めを刺す。


 ネイちゃんの矢だけ回収して、あとは放置して逃げるつもりだったんだけど、ネイちゃんがアイテムボックスを発動してナイトウルフを収納してしまった。


「ネイちゃん!」


「……勿体ない。毛皮高く売れる。牙と魔石もそこそこ」


 ネイちゃんにもしっかりと勿体ない精神が育ってくれてうれしいよ。でも今は……。アイテムボックスに収納したため代わりに出てきた糸をネイちゃんが担ぎ、その他の素材を私に押し付ける。


 ここまでそこそこの素材やお肉を持ち帰っているんだよね。私のアイテムボックスには枝肉(猪と熊)が入っているし、毛皮とか薬草とかはそれぞれ分担していたんだけど、それら全部を私が持つことになった。


 ここまでに枝肉消失事件があった為かなり消費したとは言え、その他の素材も結構ある。持てないことはないけどかさばってしまうんだよね。


 ここで揉めても時間ばかり食うので魔力による身体強化をして一気に担ぎ上げながら一目散に逃げ始める。

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