100.錬金術師見習い5
お久しぶりです。感想などいろいろありがとうございます。ちゃんと読んでますよ。
こんがりと焼けてきたお肉、もう少しなのでその間にパンにザワザワクラウトを乗せてお肉を挟む準備でもと思って目を離したところ振り向いたら無くなってました。お肉。
「……」
うん。ネイちゃん、お腹減ってたんだよね。しょうがない。そんなことくらいじゃお姉さんだから怒らないよ! 枝肉はまだまだあるからね。
無言のまま下味をつけ、もう一度お肉を焼き直します。突然ビクンとネイちゃんが反応しました。
「……タエ! ずるい! お肉食べた!」
なんと! ネイちゃんが私を糾弾してきましたよ。なぜ? 独り占めしたネイちゃんに私がと思わなくもありませんでしたが、そこはきっと照れ隠しでしょう。しかたない。私がお姉さんになって……。
「ごめんごめん。もう一度焼くから。お肉ならいっぱいあるから勘弁してよ」
ぶ~~。ほっぺたを膨らませるネイちゃんのなんてかわいいこと。もう一回見たいなとか思ってしまいました。ん~~? ふと気づくと先ほどパンにザワザワクラウトを挟んだはずなのに!
ただの白パンがコロンと置いてあります。あれ? 私やったつもりになってたのかな? ネイちゃんの分もないし、もう! ボケるのは早すぎるぞっと。
この後も数回同じ現象が生じました。さすがに鈍い私たちだっておかしいって思うよ。だってさっきから2人とも可愛らしくお腹がクゥ~って鳴ってるもん。
「ネイちゃん、周囲の警戒、お願い。最後のお肉は死守するよ!」
「……うん! ネイのお肉は守る」
いやいや、私のお肉も守って! と言う心の声を飲み込んで残り少なくなったスープとパンにも警戒をする。
「何かあるよ! さすがは森の中。不思議がいっぱいね。あんなにお肉あったのに最後だなんて」
私たち2人はお肉を囲んで全開バリバリに警戒を発動中です。今までここまで真剣になったことはありません。ネイちゃんもフゥ~フゥ~言いながら威嚇し続けます。
そうです。もう私たちのお腹は限界なのです。ここまで追い詰められたのはリトルボア戦以来でしょうか?
「よし! 焼けたよ。お肉を挟んでこれで……。さっさと食べちゃおう。食べちゃえばもう無くならないよ!」
やっとです。やっと、お昼ご飯にありつけました。もぐもぐ。もう何人たりとも私たちのお肉を奪わせません。今回のお肉死守戦で警戒やら索敵の経験値を大量獲得した気がします。
今は食後のお茶を楽しんでいるところです。急いで食べたので味を楽しむ余裕もありませんでしたがお腹は膨れました。えへへ。
「はあ~、何とか死守できたね。何だったんだろうね?」
「……タエが食べちゃったと思った」
うん。それはお互い様だから一応許してあげるよ。それにしても難敵でした。私たちの警戒網を抜けてお肉を掻っ攫うとは。食後のお茶まで持っていかれましたからね。ぷんぷん。
◇ ◇ ◇
よし。肉の配布終わりっと。さあ焼け! 今焼け! すぐに焼け! チッ。あいつら全然警戒がなってないな。帰ったら特訓してやっかな~。
シュン。お肉ゲット~。ついでにパンも。まあ代わりを置いてきたから大丈夫だろう。いただきまーす。おお、いい焼き加減じゃん。
さて次々っと。まだ警戒してねえのか。ぷふ~。お互いで食べちゃったと思ってるよ。馬鹿なのか? バカなんだろうな~。まあ、可愛いっちゃ可愛いけどよ。お次も頂くよ。
「ふぅ~。食った食った。相変わらず野営でいいもん食ってんな。おっ! まだ警戒してる。ふふふ。もう取らないよ。それはお前たちの分だからな」
◇ ◇ ◇
何やかやとお昼にありましたが、目的地そばの藪に潜んでいます。先ほどのことは忘れましょう。今は集中です。
目の前には極彩色のヌラヌラとした芋虫風の何かがいます。非常ーに気持ち悪いです。その大きさも私たちと変わらないくらいです。
「……ねえ。タエ。あれに突っ込むの?」
「……」
気持ちは痛いほどわかります。ウジャウジャといるあれの中に突っ込んで繭を奪取すると思うとかなり気が重いです。
周囲を確認したところモニュラは居ないようです。モニュラがいれば撤退の理由になったかもしれませんが、如何せん居ないのです。ヌルニュなら私たちでもなんとかなります。
「し、仕事ですよ。お肉のためには仕方ないよね?」
「……くっ。仕方ないと思う」
え~と。そうだ冒険者ギルドで調べてきたヌルニュの特徴を伝えとかないと。きっとネイちゃんも不安だよね?
「一応調べてきたんだよ。ヌルニュのヌラヌラは特に害はなくてそれどころか美容にいいらしいよ。やや匂いがあるから高くは売れないらしいけど庶民の美容薬に使われてるって。採取してく?」
「……お安いならしない」
「だよね。それから怒らせると威嚇で角が生えるらしいよ。それもすごく臭いって」
「……ヌルニュって人気無い?」
「まあ、うん。でも冒険者にはそこそこ人気あるよ。動きは遅いし狩り易いみたいよ。一応一戦しておく?」
「……くっ。したく無いけど、したく無いけど。するんでしょ?」
「えっと 一応経験のためにやっといた方がいいかなって思うんだよね。嫌だけどさ」
確認のため、私とネイちゃんは一当てすることにしました。