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死んだ世界に生きる  作者: 尼朽
7/7

 僕は、見つけた旗の下をただひたすら掘った。砂漠の砂は手で掘っても砂が戻ってくるから効率は悪い。


 ucの存在すら気にせず掘り続けた。


 巡回警備のucは一日置きに同じ経路を巡回すると聞いたことがある。


 同じucを8回くらい見た気がする。


 8回も同じucを見たとき建物の入口を掘り出せた。


 建物の中は砂が多少入っていたが前と大して変わらない。


「前と変わらない……?前ってなんのことだよ……」


 分からない。気にするな。


 周りを見ると色々なものが散乱していた。ほとんどがucの残骸だ。壁を見ると焼け焦げた跡があった。


 彼女が弾け飛ぶ光景がフラッシュバックした。思い出した。断片的にだが思い出した、でも、その前のことも後のことも分からない。


 バラバラの骨を見つけた。これが、今見た断片的な記憶の、女性の骨だろうか。涙が浮かんでくるがそれ以上の感情は特にない。


 僕は、彼女の骨を集めた。僕が弔ってあげるために。


 骨を集めて見ると明らかに骨が多いことに気がついた。


 二人分の骨だと思う。


 彼女のバラバラの骨と原型を残した骨がある。その原型を残した骨は比較的綺麗だった。最後の時の状態が分かるくらいには。


「この骨格は男かな?」


 他にも注意深く見ていると右前腕が折れていた。


「あ……」


 見覚えがある。今の右腕を触ってみても異常はないが痛みを感じる気がする。


「まさか……僕の…………ほね……?」


 理解するまで時間がかかったし、理解したくなかった。脳が理解することを拒絶している。


「じゃあ……今の僕はなんだ?」


 骨のことも気にせず外に出て、ucの前に姿を現す。しかし、ucは僕のことを認知しない。見つけてくれない。


「ぼく……は……最初から……死んでいた?」


 自分は死んでいると自覚してみるとucのことを触れない。


「は……はは……」


 僕は、なにかを探していた。きっと見つかって、世界がなにか意味あるものになると考えていた。


 でもそれは、彼女を探していたのではなく自分を探していたのかもしれない。


 僕は、これから……どうしたらいいんだろうか。


 生物のいない世界で、なにをすればいいのか。


「ああああああああぁぁぁ……」


 気が狂いそうだ。


「僕がっ……なにをしたって言うんだよぉぉっ」


 涙が溢れる。


「助けてくれぇぇぇぇぇ」


 泣き叫ぶ。この世のもの全てが僕を無視する。


「ああああああああぁぁぁたすけてたすけてたすけてたすけてぇぇたすけてええぇぇぇ……たす……け………て……」


 なにも考えたくない。


「僕は……もう……死んでいるから……楽になることも………出来ないのか……」


 こんな世界なんて滅んでしまえばいいのに。


「だれかぁ………たすけてぇぇ…………ぼくを…………」


 


 


 


 


 










 


 


 








 殺してくれ……(助けてくれ)

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