別れ
「ザッ……ザッ……ザッ……」
僕はそんな足音を聴いた。
(なんで……足音がしているんだ?)
横向きに寝ている状態から視線だけを動かして確認する。
そこにはucがいた。
(は?……なんでucがいるんだよ……やばいやばいやばい……これは非常に不味い……)
視線を元に戻すと彼女がこちらを見ていた。不安そうな顔だ。
(どうしよう……私たちこのまま殺されちゃうのかな?)
そんなことは絶対にさせない。
「生物2体発見……目標ノ破壊マタハ捕獲実行シマスカ?マスター」
ucβがαを引き連れている……10体以上はいる。こんなの生存確率ほぼ0%じゃねえか……
ucβがucГに指示を仰いでいる間解決策を必死に考える。だが、良い方法など一切見つからない。
(考えろ考えろ考えろ考えろっ)
その時ふと手を握られた。彼女が僕の手を握っていた。彼女と触れていると落ち着くし勇気が湧いてくる。彼女の顔を見てみると覚悟を決めたような顔をしていた。
「マスターハ人間ニナルコトヲオ望ミダ痛覚機能を調ベルタメニ生キタママノ被検体ガ必要ダ」
こいつら僕達をなぶった上で調べあげた上で殺す気か……
しかし、これはチャンスだ生きたままの被検体が必要だから殺すことはないだろう……
「ココデ解析ヲ行ウ」
え……
「男ノ痛覚ヲ知ラベル、右前腕ノ破壊ヲ欲求スル」
「「「了解」」」
バキッ
「……ぅぅうああああああああああああああああぁぁぁ……ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
自分の前腕が折れてあらぬ方向を向いている。自分の腕の状況を見て尚更痛みを自覚する。
「ああああああああぁぁぁ……」
全身の毛穴から汗がじっとりと吹き出て涙が浮かんでくる。口から涎が垂れるのも構わず酸素を求めて喘いでしまう。
「はぁはぁ……あぁああ………はぁはぁ」
彼女の顔を見ると今にも泣きだしそうだ、そんな彼女を見ると安心させようと無理して微笑みかけてしまう。
僕は大きく深呼吸をして打開策を実行しようと思ったとき……
彼女が動いた……
僕を抱えて建物の外に放り投げた。僕は放り投げられてる時ちらりと見えてしまった。
彼女の体にグレネードや爆薬が仕込まれているのを……
「あぁ……」
僕は情けない声を出してしまう。彼女はこっちを見て覚悟を決めたようなあの目で、
僕を見て笑った……
「いきてっ!」
爆音が鳴り響いた。
爆風でまだ飛ばされる。爆心地からかなりの距離を飛ばされた。でも僕はずっと見ていた。彼女のことを。
「うあああああああああああああああああああああああああああああ」
サラサラの砂に体が投げ出されてもそんなことは気にせず泣き叫んだ。耳鳴りが止まらない、周りの音が聞こえない。
彼女はucとともにどこかへ消えた。