夢?
「これは、たぶん夢だな……」
旗を掲げたコンクリートの建物が砂漠の砂に埋もれた場所で自分以外の人間の女と一緒だ。その女は、きっと、僕の彼女だ。
崩れた建物の中で、ボロボロだがコートなどを纏って2人並んで手を繋いで寄り添い暖をとっている。
砂漠の夜は寒い。ucに気づかれないようにするためだとすると理にかなっている。
「なんで夢だと思うの?」
ぼそりと呟いた言葉を彼女はにこにこと聞いてくる。
「関係無い」
彼女の言葉を一言でぴしゃりと終わらせようとする。
(こんな言い方……相変わらずクズだなぁ)
自分の言葉を考え直して自虐していたところで彼女の顔を見ると、ムッとしていた。
「君はなんでそう私を頼ってくれないのかな?」
久しぶりに見た気がする。整った顔立ちに肩まで伸びた茶色の髪の毛、かわいいというよりかは美しい感じの顔だ。
彼女に見惚れてしまっていた、僕は慌てて開けたままだった口を閉じた。
しかし、彼女は僕のことなど気にせず説教をしている。
「いつも私は、君を心配しているんだよ?こんな世界になって君は何もかも背負おうとしているし、私と一緒に行動するようになってから全て自分でなんとかしようと考えるよね?」
たしかにその通りだ、もし彼女を頼って失ってしまったらと考えると頼ることも出来ない。
泣きそうで消え入りそうな声で彼女は言う。
「私だって君の役に立ちたいよ……」
悲しそうな雰囲気から一転ハキハキとした口調に変わる。
「こんな世界だからこそ助け合わなければいけないんだと思うし、私は君を助けたい」
「そんなこと言われても僕は君を失いたくない1人になりたくないんだよ……」
僕も泣きそうだった。こんな我儘生まれて初めて言った気がする。
あまりの恥ずかしさや不甲斐なさで俯いてしまう。
「私は死なないよ?君を1人になんかさせない、約束するよ」
急に抱きしめられた、ふわりと彼女の匂いに包まれる。彼女の匂いはとても落ち着く。
「私は君を助けるためならなんだって頑張るよ、頼りっぱなしじゃ嫌だからね……迷惑は掛けないからね?」
彼女は抱きしめていた体を離し僕と向き合う。
「でも、君が危なかったり助けてって願ったりしたら必ず助けるからね?」
彼女の微笑むその顔が美しくて返事も出来ない。
「さて、しんみりした話も嫌だしもう寝よっか?」
彼女は自分が作った空気に耐えられなくなったのかその場で横になって寝ようとする。
彼女の顔が赤かったのは見なかったことにしてあげよう。
「じゃあ、僕も寝ようかな。おやすみ」
彼女は返事を返してくれなかったが嫌な気分にはならない。
明日はもう少し彼女を頼って見ようかなと考えながら眠りに落ちていくのだった。
外でucに囲まれているだなんて知りもせずに。