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おまえもか!

あれから半年、毎日白米が食べられるので紀州藩下屋敷での生活に不満はない。

いや、遊び相手のアーニャと接待係の小笠原様のせいで怠惰な白米パラダイスを満喫している。

脚気にでもなったらどうしよう。

今度小笠原様に食事のことについて相談してみよう。

「将軍様が江戸にお戻りになったのですか?」

「はい、五カ国連合同盟の艦隊の助力もあり、先月ついに対馬を奪還いたしました。現在は水軍が常駐できる砦の建設を進めております。いくら大国であるモンゴーヌとはいえ、あれだけの被害を短期に回復させることは不可能でしょうから当分の間は戦は起こらないと思われます。それで、五カ国連合同盟の方々を招いて五日後に江戸城で戦勝記念の祝賀会を催すこととなりました」

うん、そこは分かったけど今私がやたらと派手な着物に着替えさせられてるのはなぜかな?

私的にはアーニャが作ってくれた新作の騎乗服が楽で良いんだけど・・・

「それに先立ちまして、将軍様がルー様に謝罪するためにこちらにいらっしゃいます。いえ、いらっしゃいました」

部屋の中にいる私には分からないが、縁側にいる小笠原様からは将軍様が到着したことが分かったのだろう。

そういえば少しだけ外が騒がしいような気がしていた。

またこの下屋敷で厄介になっているハルデブランドの大酒飲みたちが騒いでいるのかと思っていたが違ったようだ。

「よう小笠原、久しいな」

おそらく将軍様と思われる人物は気軽に小笠原様と世間話をし始めた。

将軍様ってもっと堅苦しいイメージだったけれど小笠原様と随分親しいみたい。

だがだ、私が着替えている部屋の前で話し込むのは止めてもらえないだろうか・・・



着替えを終えた私は小笠原様の案内で大広間にやって来た。

さて、状況はなんとなく理解した。

将軍様が来るので急にこんな服に着替えさせられたのだね。

それはまあ良いとしてだよ・・・

白髪でやや渋めの叔父様っぽい将軍様は、大広間の一段高くなっている場所で敷物の上にあぐらをかいて座っている。

そして、私は畳の上に椅子を用意して貰ってそれに座っていた。

ちなみに小笠原様は私の右後方で正座している。

気まずい・・・これは個人的な感想だけれど将軍様の座っている一段高い場所より、当然椅子に座っている私の方が高い位置にある。

まるで私が見下ろしているみたいだ。

「このたびはすまなかった」

なんと将軍様が頭を下げている。

もはや座っている位置がどうこうという話じゃない。

これはどうすれば良いの?私は小笠原様に助けを求めようと振り返った。

小笠原様は私に向かって土下座の姿勢だった。

はい終了です。

この部屋は人払いがされていて他の人は誰もいない。

将軍様は未だに頭を下げたままだ。

「うぁっ、止めてください、もう終わったことですし今はとても幸せだから、もうあの事は終わりにしてください」

私の言葉にようやく将軍様は頭を上げた。

「寛大な言葉に感謝するハルデブランドの姫よ。だが、事実の隠蔽にも協力してもらったのだ。流石になにもせぬ訳にもいかぬ。そなたの望みを申して見よ。ワシに可能であればかなえてやろう」

ここで断るのもかえって失礼だろうか。

まあそういう話であれば私の望みは決まっている。

「では、お言葉に甘えまして、わたくしが希望する条件の結婚相手をお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」

「ん、そのようなことで良いのか?そもそも結婚の相手はそれなりの条件を満たす者から選んで貰う予定だったのだが、まあそなたがそれで良いなら申してみよ」

「はい、今回の戦で大砲や五カ国連合同盟の艦隊の力はとても大きなものだったと聞いております。そのためわたくしが譜代や外様の大名に嫁げば倭国内にいらぬ混乱を招いてしまうやもしれません。この国の混乱を祖国は望みません。そのため御三家の方かその臣下の方が望ましいと考えますが、祖国は倭国の継承権に関わるつもりはありません。これが祖国とわたくしの望みです。そして、わたくし個人の望みは大きな船とそれなりの地位をお持ちで、優しく気遣いが出来る方を希望します。ですが江戸や水戸の方々とは色々ございましたのでご配慮をお願い致します」

ここでちらっと目線だけを右にずらす。

すると将軍様がにやりと笑った。

どうやら意味は通じたようだ。

こんな時のために彼に女性の影がないかを調べ、この壮大な建前を準備していたのだ。

私と将軍様が視線を合わせ意味深な笑みを浮かべていると、背後から思いもよらぬ声がかかった。

「では、当家でも問題ないのですね。我が小笠原家は水軍を保有しておりますし、私は紀州徳川家で叙勲もうけておりますので地位にも問題は無いと愚考します。優しさや気遣いについては自身がありませんが努力したいと考えています。どうでしょうか?」

どうでしょうかじゃない!!

とても混乱してあわあわしている私に将軍様は更に笑みを深くした。

「そうか、小笠原のところなら問題ないな。どうだハルデブランドの姫よ、人柄等はワシが保証するぞ」

もうこれは”はい”しか答えが無いじゃない。

まあ、元々そのつもりだったのだけど・・・

「このお話、謹んでお受けしたいと存じます」

「うむ、小笠原、ハルデブランドの姫は倭国の風習などに疎い部分があると思うが支えてやってくれ」

「はっ!御意に。この小笠原宗孝、ルーラリー様と比べればようやく三十になったばかりの若輩者ではありますが、誠心誠意お支えする所存です」

ブルータスよ、お前もか!

「わたくしはまだ十八です!!」


~~本編・終~~

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