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白米天狗

むかしむかし、この山には炭焼きの夫婦が住んでおった。

ある日、女は山の実りを収穫するために林の中を歩いていたが、油断から崖下に転落し足を怪我してしまう。

そんな時、天から優しい女の声がした。

「大丈夫ですか?」

女は痛みをこらえて周囲を見たが声の主を見つけることは出来なかった。

「誰かおるの?お願い助けて!」

女が叫ぶと、見たことも無い服を着た金の髪に青い瞳の女性が空から舞い降りた。

「天狗様?」

女は息をのみ固まってしまったが、女天狗様はそんなことは気にせず、手早く手当てを済ませると女を家まで送ってくれた。

女と女の夫は何度も何度もお礼を述べて、自分たちにお返しできることはないかと女天狗様に問いかけた。

女天狗様はニコリと微笑むとこう言った。

「わたくしの住んでいた紫のお山はどっち?」

女天狗様は空を散歩していて帰り道がわからなくなってしまったそうだ。

二人には女天狗様のお住まいはわからない。

仕方が無いので仲間の天狗様が迎えに来るまで女天狗様を家においてあげることにした。

それから女天狗様は日中は自由奔放に周囲の山々を飛び回り、時に山の幸を、時に荒々しい獣を捕らえては炭焼き夫婦に差し出した。

そして夜は干し草の布団にくるまって穏やかな笑みを浮かべて眠っていた。

そんなある日、炭焼き夫婦が麓の村へ稲の脱穀を手伝うために出かけることになった。

女天狗様はそれをいつものように笑顔で見送った。

二人はなにか違和感を抱いたが、急がないと村での手伝いに遅れてしまう。

二人は顔を見合わせたものの女天狗様に手を振って村への道を下った。

そして夕方に麓の村から手伝いの駄賃として雑穀を分けて貰って炭焼き小屋に帰ってきた。

「やっと帰ってきたのね」

そこには女天狗様と今朝はなかった見慣れぬ道具が置いてあった。

なんだろう、二人は家の前に置いてある、見慣れぬ道具に首を傾げる。

すると女天狗様はとても楽しそうにこの道具を説明し始めた。

その道具は木枠にとげのような竹が固定されており、まるで武器であるかのようにも見えたが、女天狗様の説明ではお米を脱穀するための道具だそうだ。

どうやら女天狗様はこっそり二人の後を付いてきて、空から脱穀の様子を眺めていたらしい。

そしてなぜ少しずつ棒で挟んで脱穀とやらをしているのかと首を傾げたそうだ。

それから山に帰って作ったのがこの道具で、これを使えば驚くほど早く脱穀が出来るらしい。

二人は半信半疑ながらも翌日の手伝いの時にそれを麓の村に持って行った。

村人も女天狗様が作った道具だと言っても面妖な道具だとしか言わなかったが、実際に使ってみるとその道具の効果は絶大だった。

二人は麓の村人に大変感謝され、お礼にお米を貰った。

家に帰った二人は女天狗様にそのことを話し、お礼に貰ったお米を炊いて夕食に出した。

女天狗様は見たことがない食べ物だと首をひねっていた。

そして、お米を一口食べた瞬間に瞳を輝かせて残りをあっと言う間に食べてしまった。

「この白銀のごとく美しく柔らかい食べ物はなんじゃ?」

女天狗様は満面の笑みを浮かべながらそう言った。

それから数日後、貰ったお米が無くなりそうになった時

「今度はこれをお米と交換してくるのじゃ!」

その後もお米がなくなりそうになるたびに女天狗様は新たな知恵を二人に授け、その代わりに手に入れたお米を嬉しそうに三人で食べていたそうだ。

そして一年と少し過ぎた頃・・・

「二人とも、世話になったの」

二人が麓の村から帰ってくると女天狗様の隣には黒髪の天狗様と栗毛の女天狗様が立っていた。

どうやらお山からお迎えが来たらしい。

女天狗様はたまに遊びに来ることを約束して紫のお山に帰っていった。

その後、二人と村人たちは山の麓に小さな社を建て天狗様を祭った。

今でも桜の咲く頃にお米をお供えすると、どこからともなく女天狗様が現れてお知恵を授けてくれるそうな。


めでたしめでたし

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