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炭焼き小屋

私は黙ったまま怪我をした女性に歩み寄った。

足は折れているのかもしれない?

彼女は私の姿を見て一瞬驚きはしたが、今は大人しくしている。

私は枝と布で足を固定した。

専門的知識など無い私に出来ることなどこの程度だ。

「おぶっていくので乗ってください」

彼女に背を向けて乗るように促すと、片足で何とか私の背に乗った。

「家に行くには、どちらに行けば良いですか?」

私の問いかけに彼女は黙ったまま手で方向を指し示した。

それから一時間程度、途中で休憩を挟みながら進んだ。

そして山の中にある小さな小屋にたどり着いた。

「ありがとう」

ようやく彼女は口を開いた。

以前は鬼で今回は天狗だと言われた。

私の容姿の事もあり、彼女はどこか未知の世界へ連れて行かれるのではないかと怖かったのかもしれない。

私がそんなことを考えていると、横手からパキッと音がした。

そこには大きな男が手に斧を持って立っていた。

私は咄嗟にレイピアの柄に手をかける。

「きゃっ!」

背中にいた彼女が片方の足の支えを失ったことでバランスを崩した。

私と男の視線が交差し場に沈黙が流れる。

「天狗様、大丈夫だぞ。この人はキュウベイさん言って、おらの夫だ。ほらキュウベイさも斧なんか持ってたら天狗様に失礼だんべ。天狗様は怪我をしたおらをここまで運んでくれただ」

男はスッと横に動き斧を小屋に立てかけると私の方へ来て頭を下げた。

無口な男だが敵意は感じられない。

私はレイピアの柄から手を放した。

「天狗様、下ろして」

私は彼女を慎重に目の前の男へと渡した。

事情を説明する彼女と無表情で彼女の頭をなでる男

良かった、この人は自分の帰るべき場所に帰って来られたんだね。

何かに安心した瞬間、私の意識は闇へと溶けた。



チクチクする。

目を開けるとそこは知らない天井だった。

横には先ほどの彼女がござの上に眠っている。

「天狗様、気分はどうだ」

少し離れたところから男の声が聞こえた。

「わたくしは天狗ではないわ、ルゥー・・・」

まだぼんやりしていたため、つい名乗ってしまいそうになったが、途中でハッとして言葉を止めた。

「うぬが誰かは知らない。俺にとってうぬは、サヨコを助けてくれた人、ただそれだけだ」

男は私の側まで来て椀とさじを置いた。

「食うか?」

お腹は減っている。

「ありがとう」

寺の食事よりも粗末な粥だったが、その味はとても美味しいような気がした。



あれから三日が経ったが、未だに私は彼らの家に厄介になっている。

行き先も無いし、外は怖い。

人里離れた山奥にあるこの小屋は居心地が良かった。

藁の毛布だけはまだ慣れないけれど・・・

それと私もただ厄介になっている訳ではない。

まだろくに歩けないサヨコに変わって少しだけ手伝いをしている。

朝食を食べている途中でサヨコがキュウベイに話しかけた。

「まだあいくは難し、あんたおぶって麓までつれてって」

いまいち意味はわかっていないが、どこかへ出かけるのだろうか?

どうやら二人は麓の村で米の脱穀等を手伝って食べ物を分けてもらうらしい。

米!私はこの言葉に敏感に反応したが分けてもらうのは麦とか日持ちする野菜だそうだ。

居候の身で贅沢な事はいえない。

私は上を向いて彼らを見送った。

最近どうも情緒が不安定だ。

さて、泣いていてもお米は食べられない。

何かを得るためにはそれに見合った対価を必要とする。

私は千歯こぎを作る材料を探す為に外に出た。

この世界ではまだ米の脱穀を箸状の農具で行っているらしい。

船の時にも思ったが、どうやら日本と倭国では色々の物の開発時期に差があるようだ。

これなら足踏み式精米機とかもいけるかも。

目指せ優雅な白米ライフ!

それから試行錯誤を繰り返して、ついに私は千歯こぎちゃんを完成させた。

この画期的な農具とお米を交換してもらうのだ!

が、当然私は追われている身、村には行けないので千歯こぎちゃんは二人に託した。

ああ天の神々よ、私に白銀の祝福を!

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