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前線からの連絡と水戸藩の対策会議(水戸藩藩主Side)

時は少しさかのぼり数日前

戦場にいる将軍様から江戸城の留守を預かる水戸様へ、戦況を連絡するための使者がやって来た。

「紀州様配下の小笠原水軍の支援を受け、尾張様率いる軍が壱岐島への上陸に成功、これを奪還しました。水軍も優勢であり敵の補給は困難、あとは九州に上陸しているモンゴーヌ軍が飢えるのを待つばかりです。しかし、あれほど劣勢であった水軍がこうもあっさり優勢に転ずるとは、いやはや大砲の威力はすさまじいものがございますな」

それを満面の笑みで告げる尾張の家臣のなんと忌ま忌ましいことか。

だが先年将軍様が奪還に失敗した壱岐島を、尾張の城主とその息子が直接指揮をして達成した功績は大きい。

それに大砲によって水軍が優勢に立ったのであれば、短期で交渉をまとめ異国より大砲を持ち帰った紀州の小笠原の功績も高く評価されるだろう。

「そうか」

ワシはただそれだけを口にした。

尾張も紀州も戦う事しか能の無い筋肉馬鹿どものくせに、留守を預かる者の苦労を無視して戦場での武功を誇るか。

気に入らないがここでそれを口にしても仕方が無い。

「水戸様、我が主よりハルデブランドの姫に文を預かっております。出来れば直接お渡しして私からもお礼申し上げたいと思います。姫は今何処におられますか?」

「江戸城内では大奥の女どもが五月蠅いでのう。姫は江戸城の外におられるので文はワシが預かろう。そなたの思いは必ず伝えておこう」



使者が去った後、ワシは臣下の者たちを広間に集めた。

「前線から戦況についての連絡があった。おそらく二年以内にこの戦争は終わる」

水軍が優勢であれば、もはや勝敗は決している。

後は時間の問題だ。

モンゴーヌとの戦の終わりは、次期将軍を巡っての戦の始まりでもある。

「早すぎる。当初の計画では尾張と紀州の財政が疲弊した頃を見計らって、援軍を息子に指揮をさせて送り出し武功を上げる予定だった。だが現状で終戦すれば、戦争による武功を上げていない我々には目に見える形での功績がない」

「このままでは戦争が終わった後で奴らに異国の姫を押しつけられ、将軍候補から脱落させられるやもしれぬ」

「何か良い策はないか?」

全員が沈黙した。

前回、和田が述べた”異国の姫はこちらの風習を知らないだろうから、寺で仏教に興味を持たせて出家するように誘導する”という策は失敗した。

そもそも成功はしないだろうと思っていたので失敗したこと自体は問題なかった。

問題は和田が他家の者がいる場でその報告をしたことだ。

当然ワシは”勝手に何をしておるのか”と打ち据えて謹慎を命じた。

姫には贈り物を届け、その際にそれとなく状況を確認し問題があるようなら誤解を解くようにと命じた。

この件で担ぎ運ばれる和田を見た家臣たちが発言を躊躇するようになってしまた。

「父上、人は時に身分を捨てて見目の良い者を求める事があります。将軍家のご嫡男が外様大名の姫に懸想した事例も御座います。そこで江戸に残っている者の中から見目のよい者を選び、姫に勧めてみてはいかがでしょうか。失敗しても退屈を紛らわせるための話し相手を紹介しただけと申し開きすることができます。どうでしょうか?」

確かに家格が合ってなかろうが姫が望んだ相手であれば問題ない。

失敗しても特に損失は無いはず。

「うむ、その案を採用しよう。明後日また会議を行うので、おのおの適当な者をそれまでに見つけておくように」

ワシが家臣たちを見渡していると一人が問いかけてきた。

「見合い相手を探すのに見目がよい者は簡単なのですが、家格が高い家の当主や嫡男は戦場に出ている者が多く、残っているのは子供や成人直後の若い者か家格が低い者だけです。前者では姫とは年が離れすぎておりますし、後者では多少どころではなく家格が合いません。顔と家格ではどちらを優先すべきでしょうか?」

確かに家格の高い家の当主や嫡男は、ワシらのように留守を任された者以外は名誉のために出陣して九州か京都の守備についている。

「顔を優先とする」

姫が望んだのであれば地位は全く関係ない。

「ところで今姫はどこで何をしておるのか?」

そういえば尾張の文を預かっておった。

手紙の内容は感謝とご機嫌うかがいだけだったので渡しても特に問題ない。

それに姫に手紙を渡すか内容を口頭で伝えるかはしておかないと、後で尾張の奴が小うるさい。

沈黙が会議場を支配した。

「申し訳ございません。我らは今姫がどこにいるのかを存じ上げません。速やかに確認してご報告致します」

そういえばすべて和田に任せたままであったな。

「よい、森部に尾張からの手紙を預ける。姫に渡しておくように」

「御意」

これで良い。

「本日はこれで解散とする」


~~~~~


(???Side)

会議への出席が認められなかった。

あり得ないほどの侮辱だ。

水戸家のために長く仕えてきたのに、なぜ拙者だけがこんな目に遭わねばならぬ。

出家させる案自体は問題が無かった。

失敗したのはあの役立たずの住職のせいだ。

住職は姫を寺にやった翌日に泣きついてきたので叱責して追い返した。

結局半月以上もの間、”宿舎を占拠された”とか”勝手に周辺を散策している”など、ろくな報告がなかった。

進展がないとはいえ現状を水戸様に報告せねばと思い登城した。

そこであのような仕打ちを受けようとは・・・

叱責されるべきは役立たずの住職のはずだ。

それにこの案を採用したのも水戸様ではないか。

なぜすべての責任を拙者が取らねばならぬ。

このまま日陰者で終わるくらいなら・・・

拙者は屋敷を抜け出して江戸の町へと向かった。

これが成功すれば拙者の功績を誰もが認めざるえまい。

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