お見合い
案内された部屋には六人のイケメン男性と少し離れた場所に年配の男性が椅子に座っていた。
おそらくお見合い相手はこちらの六人だろう。
結構年上みたいだけれど顔は良いな。
「ようこそおいで下さりました」
六人の男は立ち上がりその中央の男は渡辺道隆と名乗りが挨拶と他の五人の名前の紹介を行った。
双方の紹介が終わってもお互い立ったままだ。
誰も椅子をひいてくれないし男たちもなにも言わない。
おい、これどうすれば良いのこれ?
相変わらず倭国の対応は謎だらけだ。
しびれを切らした私は自分で椅子をひいて席に着いた。
それを見た男たちは次々と座り始めた。
え、私がお座り下さいとか言うべきだったのこれ?
そしてしばし沈黙が流れた。
黙っていないで何か話してよ。
それと離れた位置にいる人は仲人ではないの?
何とかしてよこの状況!
”何とかなるさ”などと考えた、少し前の自分に文句を言いたい。
くそっ、もうこうなったらやけだ。
「あなた方がわたくしのお見合い相手と言うことで間違いございませんか?」
「はい」
代表者の渡辺殿が端的に答える。
表情は取り繕ってはいるが、このやる気のなさはいったいなんだろうか。
まあ良い、私が指名すれば相手がどう思おうが結婚せざるえないし、同盟が継続する限りはそれなりの配慮はしてもらえる。
同盟が破棄になれば離縁して国に帰れば良いだけだ。
「わたくしはハルデブランド王国の第一王女です。個人で所有する財産は金貨千枚で領地の所有権等はありません」
渡辺殿以外の顔が金貨千枚の部分で明らかに色めき立った。
あからさますぎてひいてしまうわ。
あと騙すつもりはありませんけれど金貨は小判よりかなり軽いから同じに考えたらいけないわよ。
「では、わたくしから見て左の小松様から現在の地位や役職、収入と財産を教えて下さい」
私のこの言葉に男たちの表情が変化した。
先にこちらが地位と財産を開示したのだから、候補者たちに同じ内容を聞いても良いはずだ。
なぜか沈黙が流れる。
「小松様、どうかなさいましたか?」
私は指名したにもかかわらず、黙ったままの小松様に早くしろと促した。
「分かった、拙者は常陸府中藩家老、小松秀忠が三男、小松源三郎、収入は一人扶持です。あとルーラリー様が結婚した者は分家として独立できると思うので、俸禄は最低でも三十俵二人扶持は間違いないと思われます」
地位については分かったが収入については未知の言葉で理解できない。
俵はお米を藁でくるんでいる物のことであることは分かるが、この世界での価値が不明だし、人扶持?に至っては全く分からない。
それにこれは年収か月収か、はたまた別の基準であるかもわからない。
「桐田時貞が次男、桐田源次郎だ。他は小松殿と同じだ」
拙い、このままでは意味が分からないまま紹介が進んでしまう。
「お待ちください!」
私は口を開こうとしていた三人目の河合殿を手で制した。
「収入の部分で三十俵二人扶持と言うのがどの程度の価値があるものなのか理解できません。どなたかそれについてご説明願えませんか?」
「分からぬのに収入について問うたのか?あきれてものも言えぬ」
私の問いかけに河合殿が不快な表情を隠そうともせずにそう言った。
外国人に対して配慮が足りていないのはそちらではないか!
流石に我慢できず口を開こうとした瞬間、代表者の渡辺殿が河合殿を叱責し私に謝罪の言葉を述べた。
河合殿は渡辺殿に叱責されてそっぽを向いて黙っている。
個人的には怒りが収まらないが、おそらく最高位である渡辺殿が謝罪しているのだからここは穏便に済ませた方がよいだろう。
私が謝罪を受け入れると渡辺殿は疑問点について説明してくれた。
そして河合殿を飛ばして残りの方からの紹介も終わった。
単純に言うと代表者である渡辺殿だけが二百石の旗本を継承する予定で、それ以外の五人は今は一日大体米を五合もらって親族の家で厄介になっており、私と結婚すれば最低でも十五両くらい、贅沢しなければ生きてはいける程度の年収と平成日本のウサギ小屋より小さな家がもらえるそうだ。
つまり、現状の彼らはニートだ。
別に本人たちが”働いたら負けでござる”みたいなことをいっている訳ではなく、倭国では長男以外は別に珍しいことではないそうだ。
彼らと結婚したら私はニートの妻、それはチョット遠慮したいな。
これはもう渡辺様しか選択肢がないよね。
「渡辺様、渡辺様には好いている女性などはいらっしゃらないのかしら?」
無理矢理でも結婚できるといっても流石に本気でそんなことはしたくない。
仮面夫婦ならよいが、いびられたりネチネチ文句を言われるのは困る。
私の問いかけに和田様はとんでもない答えを返した。
「妻はおりますがルーラリー様が望まれた場合は離縁することになっております」
アウト!
冗談ではないよ、そんなこと出来る訳無いじゃない。
それでこの人やる気の欠片もなかったのね。
誠実そうな人だけど妻帯者はないわ・・・
それに、よく考えれば渡辺様しかまともなお相手がいないのを、結婚相手を選べるとは言わないはず。
危うく騙されるところだった。
「神のご加護でまたご縁がございましたらお会いすることもあるかもしれません。今日はありがとうございました」
私は一礼してお断りの言葉を継げる。
神のご加護、父である王や将軍様から何か言われない限りもう会う気はない。
私は立ち上がってずっと傍観していた仲人と思われる人の元へ向かった。
この人が誰かは分からないが、服の家紋がかの有名な葵のご紋なので王族相当の対応をした方がよいだろう。
「お初にお目にかかります。わたくしはハルデブランド王国の第一王女、ルゥールァリーと申します」
「ワシは水戸藩藩主、徳川定継である」
この白髪交じりの人が今の江戸城では一番えらい人か。
この人も席を勧めてはくれなかったので勝手に座ったがそれで怒った様子はなかった。
もしかしてこれが普通なのかな?
まあそれはさておき
「お相手は見目の良い方ばかりですが、わたくしには合わないようです。今回はご縁がなかったということで、ご了承ください」
「見目の良い者を得る選ったのだが、気に入った者はおりませなんだか。ならばどのような者がお好みですかな。参考の為にお聞かせ願おう」
それ、先ほどの人たちを選定する前に聞いてほしかった。
「極端に醜悪でなければ見た目は特に気にしていません。わたくしは同盟を強固な物とするために倭国にまいりました。ですので明らかに家格が釣り合わぬ者や貧しい者とは結婚できません。倭国が祖国を含む五カ国連合同盟を侮辱しているととられるからです。ハルデブランド王国の王位継承権第四位の地位に見合った家格と財力の者をお願いします。あとこれは個人的な希望ですが、雪に閉ざされない地方の海辺に住んでいる方が良いです。それと、既に結婚や婚約者がいる者を無理に別れさせたりはしてほしくはありません」
色々条件を述べたが雪が無く海が近い場所を希望した以外は、普通は倭国側が考慮して当然のことだからわがままを言っている訳では無いはずだ。
「そうか・・・では嫁ぎ先を選定する為の参考に問うが、ワシは将軍家に次ぐ家格であり水戸藩は雪深くもなく海に面している。それに妻とは既に死別している。これは先ほどの条件を満たしていると考えるがどうか?」
(最悪の場合はワシがこの者と結婚して藩主の座を降りれば、長男を将軍に次男に水戸藩を継がせる道が残せる)
「・・・」
「どの部分が問題か。後妻は嫌かな、それとも容姿か?」
あのね、もっと気にすべき部分があるのじゃないかな。
「しかし、ルーラリー姫と家格や年回りを合わせると後妻でなければ候補はかなり厳しくなる。それとも倭国でワシの容姿は醜悪と呼ばれるものではないのだが、そちらとこちらでは美醜の感覚が違うのかな?」
え、なんで徳川様と年回りが合っていると思われてるの?
いったい何の冗談、このプリップリの肌の美少女があなたみたいな白髪交じりのおじさんと・・・
それとも日本人は若く見えると言うのが前世の常識だったけれど、倭国の人ってみんな老け顔?
いや他の倭国人を見た感じではそれはあり得ない。
ではまさか・・・
「失礼ですが徳川様はおいくつなのでしょうか?」
まさかとは思うが西洋人は日本人に比べて年上にみられるし、私はその中でも身長やそれ以外も成長が早かった。
私は自分の予想が間違っていることを期待しつつ問いかける。
「ルーラリー姫とさほど変わらぬ。ワシは四十五歳で姫とは一回りも離れてはおらぬ。それとも姫は年下でないとダメかな?」
はっはっは
「わたくしはまだ十六です!!!」
私の必死の訴えにその場にいた全員が引きつった笑みで硬直した。
くすん、チョットくらい泣いても良いよね・・・




