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#2

「アルバイトを増やそうと思っているのですが、どうでしょうか?」

「えっ、私とチロル2人のお店に余所者をいれるつもりなの!? 酷いっ、私とは遊びだったなんて」

「――いえ、ここは私のお店でショコラさんもアルバイトなのですが」

「も~、そんな事は解ってるって。いいよ、最近はお客さんも増えてきて2人じゃきつくなってきたしね~」

「――では募集を出しておきます」

「オッケ~。いい子が来るといいね~」

「では、今日もキャットテイル開店です」

  

 私はお店の外側の扉にかけている看板をオープンにする為に出ようとすると、誰かがお店の中に入ってきました。

 

「おう、邪魔するよ」

「も~、ゲンさん開店前には入ってこないでっていつもいってるのに~」

「ガハハ、別にいいじゃね~か」

 

 ショコラさんが止めるのを制してお店に入ってきたのはゲンさんと言います。

 この人もお店の常連さんで普段は大工さんをしていて、いつもいっぱい注文をしてくれるお得意様です。

 

「――今日もお弁当ですか?」

「ああ、いつものミックスサンドを100人分頼むわ。昼にこの場所に届けてくれ」

 

 私はゲンさんからメモ用紙を受け取った。

 紙には住所と簡単な地図が書いてある。

 

「――了解しました。では、お昼にここに向かいます」

「おう、頼むわ。チロルちゃんの手作りサンド楽しみにしてるよ」

「あ、ちょっとゲンさん」

 

 ゲンさんは要件だけ伝えると、そのままお店から出ていってしまいました。

 このお店は簡単なお弁当の宅配もしていてそれを注文しに来る人も多いです。  

 

「まったく、あの人はいつも勝手なんだから」

「――そんな事よりショコラさん、急いでミックスサンドを作らないと」

「そうだね――って、またぁ」

 

 今度は違う常連さんがお店に入ってきました。

 しかも4人の団体さんです。

 

「も~。何でこの店の常連は時間前なのに勝手に入ってくるのよ~」

「ショコラさん。お店の事は私がやりますのでお弁当をお願いします」

「オッケ~。チロルちゃん」

  

 今日もいきなりてんやわんやです。

 けど、お客さんを待たせるわけにもいきませんから早く注文を取りに向かわないと。

 私はお水とオシボリを準備してお客さんの席へと向かっていった。 

 

「いらっしゃいませ~。ご注文をどうぞ」

「え~っと、今日は何にしよっかな~」

「朝食なんだし軽めのでよくない?」

「けど、朝食が一番大事って聞くよ~」

「決めた。あちしはモーニングセットとクリームソーダで」

「こっちは豚骨ラーメンとブレンドコーヒーね」

「あ、じゃあ私はステーキセット、ライス少なめ」

「お刺身セットとサイダーね」

「――かしこまりました、少々お待ち下さい」

 

 私は注文をメモしてから厨房へと向かっていく。

 

「――と、その前に」

 

 私は扉を開けて外の看板をひっくり返す。

 今度こそキャットテイルオープンです。

 ――私は店内に戻ってカウンターテーブルの反対に設置してあるコンロにフライパンを置いて火を付ける。

 店内の料理はカウンターの裏で、お弁当は奥で作るのがこのお店のスタイルです。

 お客さんからいろんな種類を注文されたけど、そこは大丈夫。

 なぜなら私は同時に10人分まで同時に料理を作れる特技を持っているのだ。

 私は4つのフライパンにそれぞれの注文の材料を投入して調理にかかる。

 

「――よし、できた」

 

 私はお客さんの待つテーブルに料理を運ぶ。

 両手に2個づつ持って一度に全員分持っていくことも出来るけど今は人も少ないし2つずつ持っていこっと。

 

「――お待たせしました」

「お~。きたきた」

「ここでモーニング食べると休日が始まるって感じだよね~」

「私達のは~?」

「――すぐお持ちするのでお待ちください」

 

 私が残りの料理を運び終わりカウンターに戻っていくと奥にある厨房のショコラさんから声をかけられた。

 

「お弁当、半分くらい終わったよ~」

「では残りは私も手伝います」

「うん、お願い~」

 

 早くショコラさんを手伝う為に奥へ行こう。

 

 ――と思ったらまた新しいお客さんがやってきました。

 

「邪魔するわよ」

 

 今度はお一人様の常連さん。

 ちょっと変わった人なのですが根はいい人です。

 私はお客さんの対応をするためにショコラさんに断りをいれる。

 

「――すみません。新しいお客さんです」

「こっちは大丈夫だから~」

「はい。そっちはお願いします」

 

 私はカウンターにお水とオシボリを置いた。

 この常連さんはいつもカウンターの一番右が定位置なのです。

 

「マスター。いつものを頼むわ」

 

 常連さんは椅子に座った後、足を組みながら左手をカウンターに乗せて右手の人差し指を私に向けながら注文をしました。

 

「えっと、トマトジュースとジャムトーストですね?」

「ええ。悪魔の生き血と血の石版を頼むわ」

「――あの。ウチにはそんな物は無いのですが。それに私はマスターじゃないです」

「だ~、こういうのは雰囲気が大事なの! はい。さっさと持ってくる」

「――はあ、わかりました」

 

 このお客さん。よく来てくれるのは嬉しいのですが、こういう所はちょっとだけ苦手です。

 なんでも異世界からやってきた元魔王様との事ですが、私にはよくわかりません。

 

「すみません。ちょっと外に行きます」

「オッケ~」

 

 私はショコラさんに声をかけて裏口からお店の外に出る。

 そこには野菜が何種類かなっていた。

 ――実は私のお店の裏にはちっちゃな菜園があるのです。

 へへっ、採れたて野菜のジュースはお客さんにかなりの評判なんですよ。

 私はちょうどいい大きさのトマトを1つちぎってお店に戻る。

 そしてそのままトマトをミキサーに入れてジュースは完成。

  

「――お待たせしました」

「ふん。意外と早かったじゃない。さあ今日の儀式の生贄をいただこうかしら」

「こちらトマトジュースと――」

「ちっが~う」

 

 ……えっと、なんでしたっけ?

 なんて言っていたのか忘れてしまいました。

 ――確か。

 

「……血と石版です」

「ふん、まあいいわ。次からはちゃんと覚えないよ」

「――こちらとしては、ちゃんと注文して欲しいのですが」

 

 最初に来たグループのお客さんがちょうど食事を終えて帰る所だったので会計と片付けを終えてからカウンターへと戻る。

 

「チロルちゃんお弁当出来たよ~」

「は~い」

 

 私は奥から聞こえた声に返事をしてショコラさんの所へと向かうと、そこには箱に詰められたサンドイッチが大量に置かれていた。

 

「どっちが持っていく?」

「――では、私が行ってきます」

「いいの?」

「はい。今から行けばお昼前には戻って来れると思いますし」

「オッケ~。じゃあお店は任せといて」

「ではショコラさんお願いします」

 

 私はお弁当を届ける為に自転車にお弁当を積んでいく。

 流石にちょっと積みすぎな気もしますが――――うん、なんとか行けそうです。

 私はゲンさんに渡されたメモ書きで目的地を確認してから自転車を走らせて行った。

 


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